きまぐれオレンジ★ロード
あの日にかえりたい

監督:望月智充


Kimagure Orange Road:I Want to Return to That Day

☆3人でいるのはふ・た・りよりも寂しい・・・。

 2月、春日恭介と鮎川まどかが二人で受験した大学の合格発表の日。
 二人で会場に向かう途中、恭介はある言葉を聞きつけた。「私の出るお芝居、見に来てくださいね!」
 それは去年の夏に、檜山ひかるが恭介に言った言葉と同じものだった。
 その言葉と共に、恭介の脳裏に去年の夏の光景が再び浮かび上がってきた。それは二度と戻らない夏の、そして苦い――まどかとひかると恭介たちの三角関係の終わりが来た夏の……

 夏――
 ひかるは芝居の特別公演のオーディションに応募することを決め、一方恭介とまどかは大学受験の受験勉強の最中。
 その間にもひかるは「恋人ぶり」を発揮してどんどん積極的になるし、まどかはその様子を見て恭介から離れて行こうとする。しかしある日、ひかるはまどかの恭介に対する気持ちに気付いてしまう。
 その頃、恭介はある決意を決めていた。
 それから三人の関係はだんだん揺れていき……

☆原作から離れた「オレンジ★ロード」

 最初に。かなり古いアニメ(1988年作品)ということもあって、見てない人もいるかと思いますが、ネタバレなしでは書けない内容になっているのでネタバレの存在についてはご容赦ください。

 劇場版「きまぐれオレンジ★ロード あの日にかえりたい」(以下、「あの日にかえりたい」とのみ表記)は、数多くある「原作物アニメ」、もしくは「原作物劇場アニメ」の中でも結構異端な内容となっています。
 多くの場合、たとえば「うる星やつら」の場合は劇場版=番外編的なものであったり、あるいは原作の内容(エピソード)を膨らませたものであったりするし、「めぞん一刻」の場合は「総集編」みたいな内容となっていたり・・・とこのパターンに含まれるものが大半なのですね。
 そして、基本的に登場人物たちの性格や話の基本的な流れ(立場)は原作やアニメシリーズ(アニメシリーズがある場合の話ね)に準することになります。これによって視聴者たちは原作(及びそれを元にしたアニメ)の雰囲気がまた味わえるのですね。もちろんどっちも「これが絶対にいい」というものではないし、どっちの手法をとっても出来の悪い物は出てくるものです。逆に「これは無理だろう」という原作と手法の組み合わせが実際にはかなりうまくいく事もあるし……
 ところが、この「あの日にかえりたい」は、ここに挙げたような手法を取っていません。
 簡単に言えば、原作の舞台、登場人物を流用していながらも、実際にはまったく異なった話の流れを見せる内容になっています。つまりこれは「オレンジロード」でありながら「オレンジロード」ではない、でもやっぱり「オレンジロード」として成立している……と全然簡単じゃないな。

☆「ラブコメ」とそうでないもの

 原作であるマンガ「きまぐれオレンジロード」は、ジャンルで言えばラブコメ。
 少々続き物の話もあるけど、基本的には一話完結の短編を連ねたスタイル(そういえば、最近はこの手のマンガ減ったなぁ……「ラブひな」とかぐらいしか思いつかないや)で、その為アニメ化もしやすかったのでしょうね(実際、TVシリーズ終了後も原作の中からエピソードを抜き出してOVAが作られているし)。
 その一話一話は基本的にコメディですが、時々(まどかとひかるとの三角関係は)「このままでいいの?」と恭介(と読者)をドキッとさせる話もあったりして、それがアクセントになっていました。

 でも基本的には三角関係――(もっとも、個人的には「三角関係」と言っても実際にはひかるだけが全然気付いてないんで、三角関係と呼ぶにはちょっと違うかな?という気がしますがそれは置いといて)まどか、恭介、ひかるの三人の仲がいいまま進行していく「生暖かさ」、もしくは「空気」が気持ちいい世界。
 それは三角関係もののラブコメでの常套手段であり、かつ王道でしょう(あくまでも一例だが)。

 原作では、三角関係を終わらせる為に、この空気を一応は破ろうとするものの、実際には割とあっさりハッピーエンド。
 その為、ひかるがまどかと恭介の微妙な関係に気付く描写など力は入っていたけど、どろどろした空気が出てくるのは一瞬(というのは言い過ぎだが、実際全体としては短い方だし救いも出てきている)。

 それでは「あの日にかえりたい」ではどうなのかというと――
 結構序盤の方で、まどかにも、恭介にも、そしてひかるにも「三角関係」の存在を意識して(させて)しまうし、それが原因でひかるは恭介を自分のそばに引き留めようとする。でも恭介はそのひかるを拒否(拒絶)しようとするし、実際する−−ひかるといるとまどかと一緒になれないから。まどかはまどかで、自分が恭介に好かれている事を知っているし、自分も恭介が好き。でもその事をひかるに知られるのが怖い――でも、ひかるに恭介をとられるのはもっと嫌。
 ここで現れてくる「空気」は、明らかに「ラブコメ」のそれではありません。かと言って「ラブストーリー」かというと、そうでもない。そこに楽園(パラダイス)はないのです。三人の前にあるのは、ただ「三角関係の破綻」という「事実」があるだけ。
 その為に、三角関係から外れてしまうひかるは悲惨な状況になるし、実際そうなるしかない。しかもこっちでは「救い」もほとんどなし(一応別の意味での「救い」はあるが、それは「舞台から降りる」という事実に他ならない)。
 恭介も、ひかるを拒絶しなければならない「痛み」を受けなければならないし、まどかもそのまま恭介を受け入れてはい恋人、という訳にはならない(「ひかるから恨まれる覚悟」という「痛み」を受けなければならない)。
 その「痛み」も、いわゆる恋愛物で扱われるような「痛み」ではなく、本当に心が引き裂かれるような「痛み」として描写されていて、なおかつ視聴者もその「痛み」を味わうことになる。というより、実際に味わうしかないんだけど……(「痛み」がメインになっているからね)

 こういう雰囲気は、原作と同じ「空気」を期待して見た場合、かなり強烈なカウンターどころか劇薬も当然で、その結果「最悪のアニメだ」という評判も出てきてしまうのはわかります。
 しかし、実のところ「誰も(そう深くは)傷付かない」三角関係の終わり、というのは原作のマンガやTVシリーズ(あ、私はTVシリーズは未見です)で既に出ているのです。それに対して劇場版ではより「三角関係の終わり」をはっきりした形にした−−原作のセリフで言えば「1+1=3じゃ……ない」をより目に見える形にした。

 だけど、それだけにはっきりと、「きまぐれオレンジ★ロードは終わったんだ」と――そう思わせてくれたのも事実なんです。
 それは、「子供の恋愛ごっこ」から「大人」へと移り変わっていく過程の一幕なのでした。

 追記:TVシリーズをようやく全話見ました。それでわかったのですが、TVシリーズでは完全に決着が着いている訳ではなく、まだ三角関係のまま終わっています。

☆余談

 ……とまぁ私としては「大好き」なアニメなんだけど、見終わった後にかなりブルーになるのも事実なんだよな(苦笑)でも、逆にあの「痛み」がなかったらあまり好きにならなかったかも。
 ということで、明るい気分でいたい時や、カップルで見るのは止めておくが吉でしょう。いやマジで。特に後者なんてシャレにもならん(汗)
 でも中3〜高校生辺りの頃には見ておいて損はないんじゃないかなぁ。この年齢辺りにこれを見るとかなり衝撃だから(事実、私がそうだったし)。

 ところで、今(この記事は2002年1月に書かれています)から見ようという人は少ないと思いますが、一応情報を。
 元々ビデオとLDで出ていますが、LDは現在は中古以外での入手はほぼ不可能だと思います(というかLDは既に生産終了している)。ビデオはレンタル店に置いてあればいいけど、さすがに厳しいかなぁ?ビデオの新品での入手は……店頭での購入はまず不可能に近いでしょう。

 追加:調べてみたところ、現在でもビデオのみ通販で購入出来るようです(東宝のインターネット通販)。ただちょっと高めだけど、これは仕方ないです。
 DVDはなぜか現時点ではまだ出てません。DVDでも出して欲しいんだけどなぁ。ついでにTV、OVAシリーズもDVD化してください・・・というかLDはもうさすがに扱いにくいんですよ(涙)場所は食うしLDプレイヤーの動作は年々怪しくなってくるし(涙)

 ついでに6年経過してからなぜかいきなり続編として「新きまぐれオレンジロード そして、あの夏のはじまり」が、同名のノベルを原作として劇場版が出ています(こっちもなぜかDVDはまだ出てない)。私は見てませんが、こっちは無理して見なくてもいいと思われます。というよりキャラのイメージが変わりすぎ……(汗)いくら「あの日にかえりたい」の数年後の話とはいえ……
 こっちの方の原作は、集英社の「スーパーダッシュ文庫」で復活(加筆、修正が多いそうです)してるんで、こっちの方が安上がりかもしれません。

 また、基本的には原作物なので、原作のマンガの基本設定をある程度知っておいた方がより話がわかると思います。
 現在、新刊で入手可能なのは全10巻の文庫版ですが、最終巻の後半は最初に出た単行本から加筆修正が入っているので、拘る人には単行本の最終巻も古本で探して読み比べるとおもしろいかも(私は単行本の方が好き)。愛蔵版も昔出ていましたが、これは文庫版と内容的にはほぼ同一なので無理をして買わなくてもいいと思う(何より場所を食うしね)。
 ちなみに愛蔵版は全10、単行本(普及版)は全18。

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 久しぶりに見たけど、やっぱブルーになるわコレ・・・でも好きなんだよな(涙)
 あと当時のアニメ雑誌の投稿などを見た記憶では、やっぱり賛否両論が激しかったですね。特にひかるの扱いに関して。
 あと、細かい事ですが、実は途中で、原作/TVシリーズの流れの中では「絶対にあり得ない」物が出てきています。これが何を意味するかははっきりとした答えは出ていませんが・・・一種のパラレルワールド、もしくは暗に「これは原作/TVシリーズとは別物」と言っているのかも。
 あと、見る時は最後の最後、「完」が出るまで見ましょう。「完」の前にもちょっと話がありますので。

 単行本と文庫版(愛蔵版)の違いについては
http://www.bea.hi-ho.ne.jp/wakunami/kor/index.html
 に詳しく書かれています。

 英文の題は海外版ビデオの題名がこうなっているらしいので、それを書いてあります。ちなみに「新きまぐれ〜 そして、あの夏のはじまり」は「New Kimagure(略) Summer's Begining」です。ついでに、略語としては「KOR」が主流として使われているようです。


うしとら
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