一覧に戻る
第121話
シゴフミ

 2008年1月のことなので今からおよそ8年前のことになります。私は、テレビで放映されていたシゴフミというアニメを見ていました。
 シゴフミは、亡くなった人が生きている人に書いた手紙です。亡くなった人は生きている人の中からたった一人に対して手紙を出すことができます。シゴフミの話の中でも、亡くなった人が遺族や友達や娘のボーイフレンドや飼い猫に対して手紙を書き、各地区を担当する配達人がシゴフミを配達します。ただし、書いたシゴフミは必ず配達するわけではありません。シゴフミを配達すべきか、それともシゴフミを配達しないかは、実際にシゴフミを配達する配達人が判断します。
 シゴフミは、このようにシゴフミを配達するフミカを主人公に話が進められています。新年早々に取り上げる話題ではないかもしれませんが、この数年の間にお世話になった方を亡くしましたので、思い切って取り上げることにしました。

 ことばのコーナーに4年くらい前から掲載していますが、シゴフミの中で印象に残った言葉があります。それは、
 死は人を救わない。ただ消えるだけ。
です。
 第3話で、高校生の息子を飛び降り自殺で亡くした父親が学校に銃を持ち込んで教室に立て籠もります。父親は息子が自殺する理由が分からず、思いあまって息子が所属していたクラスに乗り込み、生徒を人質にして立て籠もりました。そんな時にフミカが自殺した高校生のシゴフミを持って現れます。シゴフミの宛先は実の父親ではなく、高校生の友達でした。シゴフミの宛先が自分ではなかったために、父親はますます理性を失いますが、フミカはシゴフミを亡くなった高校生の友達に手渡しました。シゴフミを読んでいる時に、警察の特殊部隊が乗り込んで狂乱状態の父親は取り押さえられて事件は一件落着になりました。
 騒ぎを逃れて校舎の屋上に行ったフミカが言ったセリフが「死は人を救わない。ただ消えるだけ。」です。

 死に対する考えは、人によってさまざまだと思います。宗教によっても様々です。一神教のキリスト教やイスラーム教は、来世があるだけでなく、世界の終末の時に復活すると考えられています。また、日本人に馴染みのある仏教には輪廻という考えがあって、人は亡くなると人道、畜生道、地獄道など6つの世界のいずれかに生まれ変わり、この生まれ変わりを解脱するまで繰り返すと考えられています。

 私が学習塾で教えている小学3年生の女の子は、自殺のニュースを見て「生きていれば色々できて人生を楽しむことができるのに。死んだら終わりだ。何で死ぬんだろう」と言っています。人生がこれからという9歳の女の子ならではの考えですね。私は、死は人を現世の苦痛から解放するかもしれないですが、死によって人は救われるとは思えません。そして消えるだけでもありません。私は、亡くなった人の思い出はできる限り忘れないようにしたいと思います。つまり、亡くなった人は私の中の思い出の中で生き続けるのです。
 ですから、亡くなった人が生きている間に思ったことで、私に生前に伝えていない思いがあるなら、それが私にとって辛い内容であっても、シゴフミによって知りたいとシゴフミを見ながら思ったものでした。

第120話← コメントを送る →第122話