新陰流の在処
about old arts
"Shinkage-Ryu"





新陰流の在処です。
忍者の剣術らしいです。
新陰流手裏剣術とかもあるというお話。
やったことはないですけどね。

大学に入ってから習いました。
指導者の先生(大学教員でもあります)が新陰流だったのです。
神伝流以外の流派にも興味があったので、幸運でしたね。
稽古の都合で神伝流を一時的に使わないようにしたのは寂しいですが。
まあ、これはこれでやっていて楽しい流派です。
ただし、下半身への負担が恐ろしい(笑)。
しゃがみから腰の上下動なしで走れって言われてできますか?
でもそれができないと不可能な技があるのです。


2005年5月現在、以下の12本を習っています。

順抜 向之刀 除身 開抜 胸之刀 横雲
引身 連足 下藤 打止 前後之敵 一刀両断



2006年2月、以下の3本を追加で習いました。

巻切 屏風返 折枯




じゅんぬき
順抜

座業。立って接近する敵に対し、立ちながら抜刀し位詰。相手の切り下ろしに対し合撃にて勝つ。

制定居合で言う一本目に相当する技だそうです。
合撃という特殊な切り方をするのですが、これがとにかく難しい。
もちろん組太刀でも滅多に実演しません。イメージの中でも成功させられないほどなので。
それ以前に、抜き打ちからして神伝流とは別種の難しさがあります。
抜刀直後に左手で柄を追いかけ、位詰め。しかも回転させるなと仰る。
……無理ですって。
幸いにも、僕の刀は身長に比して短いので、なんとかうまくいきます。
実は長身で居合をするのはいくつかデメリットがあるのですが、
順抜はアドバンテージを活かせる数少ない技です。


むこうのかたな
向之刀

座業。座った敵の攻撃動作に対し、後の先を制して位詰。相手の切り下ろしに対し合撃にて勝つ。

順抜、座りバージョン。
以上。……マジです。少なくとも見た目は。
腰は上がってもしゃがみくらいなので、異様に負担がかかる。
慣れないうちは袴の裾を踏んでしまう。
順抜より苦労しました。間違いなく。
足捌きに関して騒動が持ち上がった技でもあります(笑)。


よけみ
除身

座業。正面に座る敵の切り下ろしを、左に体捌きして躱すと同時に位詰。敵の追撃を、正面に戻って回避しつつ切る。

これも順抜系統の業です。体捌きはありますが、左足の踏み込みまでは同じ(向之刀も)。
要するに、左足の踏み込みのあと、立ち上がる立ち上がらない左に捌くかでどの業か決まるのです。
なお、それぞれ順抜、向之刀、除身です。もっとも、除身に関しては、
体捌きの関係上、踏み込みがやや左に寄るなど、注意しないとバレバレになりますが。
僕はなぜか上記の二本より除身のほうが得意で、特に位詰の部分ははほぼ確実に決められます。
ただ、正面に戻って切るときに失敗することもしばしば。大会で使うことはあまりないでしょうが、直さねば。


ひらきぬき
開抜

座業で抜きつけてくる敵の機先を制し体を沈めながら膝に抜きつけ。逃げる敵を追い込んで切る。

いろいろと負担の大きい業です。左足の爪先と右股関節と首と。全部痛めたことがあります(笑)。
この業、試合や演武会で相手が初発刀を抜いたときにタイミングを合わせられると、
非常に見栄えのする業になります。タイミングが合わなければ逆に気まずくなるでしょうけれど。
初動として低い姿勢で相手の脛(膝という説もある)に抜きつけるというものですが、
相手の抜きつけに対して交差法気味に体を沈められると、気持ち良いでしょうね。
試そうとは思いませんけど。だって失敗が怖いですし。


むねのかたな
胸之刀

座業。掴みかかってくる相手に対し抜刀し右脇に刃を当て、押し倒す。相手が向かってきたら袈裟切り。

体術的な側面が強い技です。というか、それができれば9割がた成功したも同然。
1ヶ月だけの合気道の経験から、ある程度は「らしく」抜くことができていると思います。
投げでも極めでもそうですが、いかにして腰を崩すかで決まるのでしょう。
この技は相手の脇下に刀を当てて押し倒しますが、原理は同じ。
体重で腰を倒すイメージです。……意味分かりませんね(笑)。
大学の団体で先生から受けてみましたが、抵抗できませんでした


むねのかたな・つかとり
胸之刀・柄取

胸之刀の変形。相手が胸倉と柄を取るので、それを外しつつ押し倒し、切る。

上記胸之刀の亜種です。ただ、こちらが本来の形、という説もあり、一概には言えません。
形を見てより分かりやすいのは、こちらの柄取のほうでしょう。体術部分がわりと明確なので。
もっとも、他流派が見たらやっぱりどうか分かりませんけどね。でもとかあるしな……。
引身に似た体捌きがあり、慣れないと難しいですが、複雑なのでかえって簡単かもしれません。
どの流派でも同じだと思いますが、一見して単純そうな業こそ一番難しいものです。
だから、胸之刀に比べたらこの柄取はまだ楽なほうだと思います(あくまで比べたら、ですけど)。


よこぐも
横雲

座業。接近しつつ抜刀しようとする相手の籠手を制し、立って攻め、相手の切り下ろしを巻き落として突く。

神伝流のと同名ですが全然違う技です。
相手の切り込みを受けて巻き落とすという動作が、最初のころ、どうもうまくいきませんでした。
後に、落とす瞬間に後ろ足を前に踏み出して、重心をずらすと良いことが発覚。
これもある種、体術と呼べるかもしれません。


ひきみ
引身

座業。立ちから切り下ろしてくる敵に対し、脇に抜きつけつつ身を引き、よろめくところを斜めに切る。

いろいろ難儀した業です。爪先立ちの正座から、いかにスムーズに右足だけを引くか、というところが難点。
刀の抜き方そのものはそれほど(あくまでそれほど)難しくないのですが、体の使い方がどうも……。
それだけに留まらず、切るときはしゃがんだくらいの腰の高さを維持したまま、引いた右足を左足に揃えなければなりません。
慣れていないと、こちらも相当につらいそうです。僕は流刀を知っていたのでなんとかなりましたが、
そうでないと抜きから切りからすべてハイレベルの業になっていたでしょう。
ちなみに、これは引く業ですが、逆に前に出る雲入剣という業もあるそうです。

相手の脇に抜きつけたときの体勢を作るための手段として、
最初に両膝とも上げるというのもあるそうです。もともとそちらだったとか。
居合腰の状態から、反動を利用するようにしてしゃがみの状態を一瞬だけ作り、
瞬間的に抜刀して抜きつけを行うと同時に右足を引きます。
こちらのほうが圧倒的に速いですが、成功率はどうしても下がりますね。


つれあし
連足

座業。切り下ろしてくる敵に対し、抜きつけて受け、即座に流す。相手から磯波で遠ざかり、振り向きざまに横雷刀でフェイントをかけて右袈裟切り。

新陰流の中では比較的分かりやすく、かつそれなりに見栄えのする技。しかし高難度。
抜いた直後は一応受け流しのはずなのですが、弾き返しているとしか思えません。
そうでもしないと相手の切り込みに負けるから、というのが理由なのでしょうけれど。
しかしそんなことはどうでも良く、連足において最大のネックは忍者走りです。
基本的に3歩で良いと言われているのでどうにかできていますが、
人によっては5歩走ります。確かにそのほうが鍛錬にはなる。
なりますが途中で失速したりつまずいたりと、アクシデントに事欠きません。
新陰流八段のM先生がどれだけの使い手か、連れ足を見れば少しは分かります。


さがりふじ
下藤

立業。正面からの切りを受けに出て、流し、よろめく相手の首を切る。

かつては対騎馬戦の技だったそうです。恐ろしいことですが。
今は床レベルが自分と同じ敵が相手になっています。
そうしないと、他流派の人が見たら意味不明なので。
相手が騎馬だと、当然、受けの位置も高くなってしまいます。
結果、刀を頭上に掲げているように見えて、なんとも間抜けなのです。
一度、その抜き方を見たことがありますが、何かの変身ポーズみたいでした。
腰の回転運動を使う点、切る瞬間に両足を揃える点などが、大森流の流刀に似ています。
大学のI先生もそうらしいですが、だからわりと得意な部類に入ります。
ちなみに、名前の由来ですが、昔はこの技の練習に植物のを使っていただとか。
それを聞いてボクシングのパンチングボールを連想したことは秘密です。


うちどめ
打止

敵との間合いを詰め、下から抜いて相手の顔に突きつける。ひるんだところを追い込んで袈裟切り。

甲冑居合の形態があり、というかそちらが原型なのでしょうが、現在は一部でしか使われていません。
何しろ、まず面を差し出して相手に打たせるという動きがあるのです。ありえません(笑)。
冑というのは鎧の中でももっとも硬い部分なので、差し出されたところで簡単には破壊できません。
だからその隙に下から抜き上げて相手の脇に当て、優位に立つ、という目的なのですが、
新陰流をやって教えてもらわないと、動きだけ見てもその状況は推測できないでしょう。
足捌きと抜き方から、袈裟切りとかぶりまくる業です。
実際、本番ではともかく、稽古中はよく失敗します。だから袈裟切りが指定業のときは、
できるだけ打止は抜きたくないですね(そういう理由でか)。


ぜんごのてき
前後之敵

前後を挟まれた状態で、まず背後の敵に抜きつけて袈裟切りに倒し、間髪容れず前方に向き直り袈裟に切る。

非常に試合映えする業で、いくつかパタンがあります(後ろの敵を突く、前の敵を右袈裟切りなど)。
ただ、ある程度の広さが必要なので、大会で使うときはちょっと注意が必要。
実際、よく使われるらしく、他流派の人から「それ知ってる」と何度か言われました。
最初の抜きつけと切り返し、最後の袈裟切りが難所でしょうか。というか全部か。
目付でミスをすると、一発で失敗します。最初のころ、膝の攻めとずれることがよくありました。
立業の中では、後述の折枯と並んで一番よく使うかな。


いっとうりょうだん
一刀両断


上意討ちの技です。見た目は制定十二本目に似ていますが、抜き方はかなり異なります。
上半身をそらし、女性がショールを肩に巻くように抜刀し、大上段から正面に切り下ろす。例によって止めません。
ポイントは、抜刀中も相手から目をそらさないこと。そのため正面からこれを抜くのを見ていると、
視線だけが自分をひたすら追ってくるので、なかなか怖いものがあります(笑)。
なお、これも順刀と同じく人前で抜かないようにと教わっています。
まあ、処刑の技と表現してもあながち間違いではありませんからね……。


まきぎり
巻切

順抜より遠間で位詰。刀を返して敵を追い込み、誘いをかけて切りかかられる瞬間に胴を切る。

習った中では、最高レベルに難しい業です。形だけならそれほど(あくまでそれほど)難しくはないのですが、追い込みが。
2人1組になって相手を圧倒できる追い込みになっているかチェックしたことがありますが、全然できません。
「背中を使う」と言われはしたものの、それらしくできたのは2回くらいです。
ここに比べれば、最後の巻いて切るところなんかたいしたことはありません。いえ、そこも難しいですけど。
形から、剣道の面抜き胴のように見えますが、これはそもそも相手に攻撃させません。
相手がモーションに入った瞬間、空いた胴を切る、という理合だそうです。
最後はやや横に体捌きをするので、目付がかなり重要になります。


びょうぶがえし
屏風返

敵が胸倉を掴んでくるので、刀を縦に抜き上げる動きで腕を弾き、磯の波で押し倒す。両手で相手の躰を抉り、突き下ろす。

たらりと抜く業です。決してふざけているわけではありません。実際にそう教わったのです。
胸之刀と同じく体術的な業ですが、あれよりは他流派にも理解しやすいと思われます。
ただ、難度はこちらのほうが高い(少なくとも僕には)。特に抜き方が難しいのです。
正中線に沿って抜くのですが、その際、上になる右手が顔の前くらいにしか上がらないようにしろ、と言われます。
額、あるいはもっと上まで上がって良ければどうとでもなるのですが、低い位置で止めるのは存外難しい。
思わず肩に力が入ってしまい、注意されます。最初に比べれば脱力できるようになりましたけど。
あとは敵を倒すときの体の動きでしょうか。抉って突くところは、まあ何とかなります。
慣れるまでは組太刀で練習したほうが良いでしょう。感覚は掴めるはず。


せっこ
折枯

納刀状態で相手が柄を取りに来るところを体を引いて捌き、崩したところで踏み込みつつ抜きつけ。さらに踏み込んで手首に当てる。

正確には、折枯付けたり一刀両断という形で教わりました。折枯単体では教わっていません。
一刀両断に接続するバージョンだと、抜きつけたあとに一旦納刀して、相手がさらに襲ってくるところを一刀両断、という感じ。
単体で使う場合、相手にとどめを刺すアクションはないようです。手首に当てておしまい。
こういう業は新陰流に少なからずあって、最初はちょっとしたカルチャ・ショックでした(大袈裟)。
この業の難点は、何と言っても最初の体捌き。足を引いたり引かなかったりしますが、いずれも難しいです。
何しろ、演武のときは相手が目の前にいないのに、体を崩すのを見せなければいけないわけですからね。
胸之刀もその意味では同じですが、あれは抜刀したあとの話だし、座業なのでまだ分かるでしょう。
とはいえ、業としての形は気に入っているので、試合ではときどき使います。最後の切り下ろしも見栄えがしますし。





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