専門の恋


「俺 最近気付いたんですけどダメ専かもしれないんス」
窓辺で外を見下ろしながら、コーヒーを啜っていたハボックが呟い
た言葉に、休憩と称し便乗してサボっていたロイが首を捻った。
「…聞いた事ない言葉だがダメセン…?何だそれは」
「ダメな人専門で好きって意味ですよ」
「……変わった趣味だな」

女性に関しては、キャパシティの広いロイであったがあえて選び
たい趣味であるとは思えず、同意をしかねる。
「あーダメっていうと語弊があるか…俺も『料理ィ?できなーい
おそーじ面倒くさいからキラーイ 計算とかメンドイしぃー』ってな
駄目タイプは苦手ですよ そんなんは駄目っつーか人間として
嫌だって思いますし」
「…まあ普通 そうだろうな…」
「いやでも中にはそういうのを『こいつは俺が傍にいなくちゃ駄目
なんだ』って思い込んで当人はそれで納得してるらしいパターン
もありますから、一概に普通とは言えませんけどね 俺の場合は
本人ヤル気だけは一杯なんだけど 突っ走ろうとすれば転びかけ
るわ、ハタキをかければ壷を割るわジャガイモを剥こうとすれば
皮のほうが重くなってるわ、アイロンかければ火事にしかねないわ
…そんな感じの人が好みかなあって」

何やら連ねる言葉を記憶から引き出すように、指折り数えるハボ
ックにロイもそれなら理解できるとばかり、頷いた。

「なるほどそれならば納得できなくもない 本人にヤル気はある
のだが空回り 一生懸命にひたむきな姿はかわいいのだが周囲
には悪意なく迷惑をかけてしまうというタイプだろう?」
「そうそう 失敗しちゃった時の困った顔も からかうと意地張って
自分でやり遂げようとする姿もかわいいんスよー」

末尾にハートマークが付きそうな、その返答にやけに具体的だな
と、ロイはハボックの細められた目元を見詰めかえした。

「まあ お前の最近気に入った相手がそういうタイプだと把握した
だがそれはダメというよりドジッ子と分類される型じゃないか?」
「…ドジっ子!ああ凄い そうですねぴったりな表現ですよ」

うんうんと、何度も要点を捕捉したと首を縦に振るハボックに、揶揄
の対象を見つけたとばかりロイが口端を少し上げた。
「しかしハボック そういう相手は大変だぞ」
「ええ そりゃあもう大変なんです」
しみじみ実感の篭った言葉に、なんだもうハボックの片思いでは
ないのかと途端、ロイの表情がつまらなそうに変化した。

「書類を溜めては逃亡するし 雨の日は無能なのを忘れては無茶
しようとするし リンゴの皮を剥こうとすれば自分の指切るし目を
離すと一人で突っ走っていこうとするし」
「…おい」
「掃除機かければスタンド倒すし 色物と無地の白一緒に洗って
色写しさせるし 伸ばさないで濡れたまま干すから 洗濯物を皺だ
らけにしちゃうし」
「…ちょっと待て」
「でも本人なりに一生懸命だから構わずにいられないんですよね」

「……よし お前のその気持ちは大事にしておけ 私はなにも聞か
なかった事にする」
「いやいや 俺は本人に告白してるつもりなんで」
「………ここにダメ人間などいない」
「そうっスよね 可愛いドジっ子がいるだけで」

にっこりと邪気なく笑って、コーヒーを啜っているハボックに向けて
投げつけられてきたのは、来客ソファ用の、刺繍つきクッション。
だがそれは難なくかわされ、窓辺に置かれている鉢植へとぶつか
りそうになる寸前、ハボックが掴みうけた。

「あっぶね まだこれ新芽なんだから葉っぱ折れるっスよ」
「うるさい」
「諦めて俺と恋人になっちゃいません?大佐の仕事と私生活両面
で付いてけるタイプなんてそうそういませんし」

「…先ほども言ったがここにはダメ専とやらの好む人間はいない」
「ああそうか訂正忘れてましたよね 俺ダメ専じゃなくドジっ子萌え
でした」

 平行線になりそうな言い合いの中、ロイは何故か自分が負けて
しまいそうな予感に囚われ、ハボックの言葉を聞こえないフリで、
ただ目線を逸らし抵抗するしかすべがなかった。

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Y木様と一昨日絵チャでお話して年上ハボならドジッ子萌えになるのかと(笑)
ロイを駄目人間扱いしても許されるのは、それだけで愛されてると思います