裏切らない


外は快晴で、溜まっていた書類処理も一段落着いて、
窓の外を見ているのにも飽きた俺と大佐の茶飲み話は、
中尉がいないと取りとめもなく続いてしまう。

「もし俺が大佐の敵側についたらどうしますか?」

ふと投げかけたのは、戦闘方法や狙撃と近距離で攻撃の
有効性についての流れを汲んでの質問だ。
演習で反対の組なんかでの対戦になったら、大佐はやっぱり
遠距離で俺を狙うかなという程度の軽い疑問で、別に深い
意味はなかった。

 だが、言われた大佐はしばらく首を捻り、なにやら真剣に
検討をしている。

 まあ大佐なら、近距離だろうが遠距離だろうが大差はなく、
(ダジャレじゃないぞ)指先一つで俺達を片付けられるだろう。

でも一応身近に居て、少しは大佐の弱点を知ってる俺相手
なら、遠距離のほうが確実だろうし何故即答しないのだろうと
疑問に思っていると、返ってきたのは遠近二択以外の答え。

「まずお前の周囲を調べるな」

確かに戦闘において、周りの状況を把握するのは重要だけ
れど、この場合の返答としては、ずれていないだろうか。
「それって平野や街中の場所に応じて切り替えるって意味
っスかね?」
と重ねて聞けば、大佐は不思議そうに
「場所?なぜ場所が関わるんだ」と聞き返す。

――駄目だ、わかんねぇ。
「えーっとじゃぁ俺の周囲の何を調べるっていうんで?」
「お前の周りで人質が取られていないかともしくは何か私を
不利な状況に陥らせる材料を敵側が持っていないか…
そんな所だな」
「人質?」
 鸚鵡返しな言葉ばかりしか漏らす事ができない、自分の察し
の悪さも困るけれど、この場合大佐の返答も想定遥か外で
あるのだから、勘弁してもらいたい。

「お前が私の敵側に廻るなんて 人質を取られているとでも
いう理由がない限りありえんだろう」

 さらりと言われた言葉は、何を今更という含みを持った、絶対
の信頼。

――うわ…ヤバい――感動しちまう。
普段、警戒心や計算づくを隠そうとせず、茨だらけの人格を
装っているくせに、一度懐に入った者へ対しては無防備で、
警戒どころか疑うことすらしやしない。
女性相手にだけそのタラシぶり、発揮してくれてりゃ楽なのに…
こんな事言われたら、命懸け沙汰でも裏切れやしない。

俺だけに言っている言葉じゃないと解っているのに、俺のたった
一つしかない魂を捧げたくさせるなんて、卑怯じゃないか。

 確かに、場所も遠距離も近距離も関係ないや。
…この全幅の信用を踏み躙るぐらいなら、自分に銃口向けた
ほうが、きっと、よっぽど楽だ。

「すいません 質問を間違えました」

この人に心を奪われてしまった諦めと、この人が心を許して
くれているという高揚をない交ぜに託した、俺の苦笑。
その微妙になってしまった顔つきを、怪訝な顔して大佐は
ただ、見返していた。

 
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アニメ ハボソラが丁度でてきたので恋愛じゃないけど(恋愛でも勿論いいけど)
惹かれてるハボのお話を書いてみたかった