黙して実行


「馬鹿者っ…お前…! な 何を考えているのだっ!!」
「あ…ひでぇ 部下が上役を慕ってじゃれてきてるのに莫迦呼ばわり?」
 耳元でからかうように囁き、報復だとばかりまた指を背筋に滑らせる。
「…ひっ…あぁ…んっ…」
「すげぇ…大佐 こんな感度良くて よく普通に生活できてますね
もう立ってもいられないみたいじゃないスか」
「ばっ…あっやだっ! やっ…も…はな…」
 頬を紅潮させ、睨んでくる大佐がかわいくて何度も、指を背中に
滑らせると、俺の腕を止める為に制服を掴んでいた指先は、もはや
縋るためのよすがと変わる。
 腕の中でくったりと、荒い息を吐いてる大佐は、俺が望んでいた
ありのままの生身の、見たことがない表情。

 必死で俺に凭れてくるのが嬉しくて、もっともっと縋らせたいと思わず
上着の裾からシャツの内に掌を潜り込ませたら、我に返ったらしい
大佐が、全力を込めた右パンチ。
頬が紅く、少し潤んだその目元に見惚れていた俺は防御が間に合わず
ストレートにその威力を味わった。

「いって…ひでっスよ 大佐ぁ」
「ひ ひどいのはお前だこの莫迦アホ駄犬のまぬけ!
お前が今やったこと鑑みてみろ!!セクハラの他のなにものでもないぞっ」
 ズボンからはみ出した、白シャツ裾を握り締めた大佐が、羞恥で顔を
染め、凄みをかけようと威圧する。

 …あれ?…言われてみれば…その通りかも。

「…いや でも男が男の背中に指滑らせただけじゃないっスか!」
「ばーか莫迦バカ馬鹿!それは普通の話だったらだっ!!
さっきのお前はエロくてスケベでヘンタイな顔満載のエロエロモード
だった!!反論できるか!?腕の中だと顔が見えないからどうせ私を
寝ぼけて女性とでも間違えたのだろうこのエロ犬っ」

 う…そう言われると……なにやら反論しにくい現実が目の前にある。
ただ一つ否定させて欲しいのは女性と間違えたんじゃなくて、大佐の
反応が可愛かったから、つっぱしちゃったと言う点だ。
――しかし幾ら俺が、お馬鹿でもさすがにこれは言い返さないほうが
身のためだという事実ぐらいは自覚アリ。
 結局大佐の大笑い顔は見れなかったけれど、…照れた顔や怒った顔
見れたからまあいいか。

 そう考え無意識に指をわきわきさせているハボックは、また同じ事を
大佐に隙があったらしでかしてやろうと企んでいる。
 
 …どうやら、ハボックのロイへの思いは、脳や感情より先に、中身に
忠実な躰の方が反応を示しているようであった。
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セクハラ話?