| 「という訳だから 大佐大笑いさせる作戦 協力しろ」 「…阿呆やるなら一人でやれ 俺たちを巻き込むな」 露骨に眉をしかめたブレダの影で、立場上逆らいにくいらしい ファルマンとフュリーはこくこくと頷いていた。 「え 大佐の本心からの顔を見てみたいって思うの俺だけ?」 やっぱ命懸けで守る相手だったら、純然たる生の感情を表してる 姿、見てみたいって望んでも普通だろ? そんな思いを込めた俺の問いかけに、なぜかブレダは呆れ顔 で吐息をついた。 「…ひとつ聞くが 俺とお前はここでは割と仲がいいほうだな?」 「確認しなくたってそうだろ」 「よしじゃあそこはクリアだ 一応俺だって相手が大佐じゃなく お前でも 何かあったら咄嗟に命懸けで庇うとは思う」 「お…? 何か気恥ずかしいけどありがとな」 「いやそこは礼を言う箇所じゃなくて前フリだ …でここから本題 そういう仲だけど俺は別にお前の大笑い…は始終見てるから例え にならねぇな…っつーかお前の場合 まず感情がほとんど丸出し だからなぁ…」 なにやら俺に解説してくれようとしていたらしいブレダは、そこで 言葉につまり、続きを模索しているようだ。 何が言いたいのかわからんなと、待っていればファルマンが 「泣きの表情と言うのではどうでしょう」 と助言を出した。 …当人の俺が解らないのに、なんでこっちは理解しているん だろうと悩むより先、接ぎ穂を見つけたブレダが頷いた。 「そうだな 要するに俺はお前の言う所の素の表情…大笑いした顔 や泣き顔とかには興味ねぇって言ってるんだ」 「…俺も別に お前の困り顔とか泣いた顔に興味ねぇよ」 ブレダの言いたいことが、よく解らないからそのまま返せば、 なぜか大仰に首を縦に振られ、ブレダが俺の肩を何度か叩いた。 「…つまりは そういうこった」 ――ん?いまだお前がなに言ってるか解らんのだけど どうも俺のその疑問は、そのまま顔に出てたらしい。ブレダが そのまま、答えを声に出してくれた。 「要するに俺もお前も 仲は悪くない だが互いの奥底にある感情 を露呈した表情というのに 別に興味がないってこったな」 「ああ」 「…で 尋ねるがお前大佐に対してはどうだ? 大佐の困った顔や 泣き顔 大笑いしてる顔を見てみたいんだろ」 「う…ん…まぁそうだな」 「だから そういう事だよ」 話はそこで終了だとばかり、ブレダは机の書類に向き直るが …俺はいまだ置いてけぼり気分で、よくわかんねぇ。 そういう事だってどういう事だ。 でも、確かにブレダの言う通り大佐の泣き顔や困った表情に興味 あるのは本当で…それを、俺だけに、俺の腕の仲で見せてくれたら きっと最高に嬉しくて堪らないに違いない。 ――あれ ひょっとしてこれは上司に抱く感情じゃねえのかな こいつらが言ってるのは、そういう意味か? 「なぁ…俺の感情ってひょっとして…部下として偏ってる?」 頭が良くない自覚ある俺は、他人に聞いたほうが手っ取り早い事 もあるので素直に聞けば、声を揃えてその通りだと返された。 「とりあえずお前がどういう思いを大佐相手に抱こうが自由だが …俺たちは巻き込むな」 びしり鋭く指差された俺は、いまいちまだ自分の感情が飲み 込めず、曖昧に頷いておくことにした。 ******************** 周囲はわかっているけれど自覚なしな人のお話 |