not計算 オマケ


 「アイツは惚れると盲目になりますからねぇ」
語尾に音符マークがついていそうな勢いで、お先に失礼と
業務終了の合図とともに、去っていったハボックの背を
見ながら、呟いたブレダの言葉にロイが向き直る。

「なんだ ハボックの奴また新しい彼女ができたのか?」
「アイツ 自分はもてないと思ってるらしいですけど
実際はそうでもないんですよ」
「…知ってる」
 長続きはしない、というだけでハボックは本人が
言うほど女性に縁がないわけではなく、むしろ標準と
比較すれば女性からのアプローチは、多いほうだ。

「でもなぁ…今度のはタチ悪そうなんで心配なんですよ」
「女性に騙されてみるのも経験の一つだ…特にあいつは
単純だからな一度ぐらいそういう目にあってみても
いいんじゃないか」
そういうロイに、肩を竦めブレダが首を振った。

「そういう性質の悪さじゃなくて…何というか
自分がカワイイと承知の子で態度も素直そうなんだけど
男の誰もに『自分が恋人だ』と信じさせる言動で取り巻きを
何人も持ってる…ってタイプでしたからね 多分彼女の方に
ハボックは彼氏かと尋ねたらプレゼントされたハンドバックを
持ちながら『いいオトモダチよ』って微笑み言われるでしょうね」

 なるほど、いわゆる同性に好かれないタイプといった
女性らしい。手管に長けた女性であれば、引っかかってみるのも
一興と言えるが、この場合相手はあくまで自分は善意で
勝手に勘違いしただけだと言い張りそうな相手…
確かに、ハボックには不向きかもしれない。
 自分が割り入って、その女性を惹き寄せ互いに
遺恨なく別れてやるとの方法もあるのだが…それをやると
確実に、またハボックに怨まれるのは自分だ。

さてどうしようかと悩んでいたところに、都合よく移勤の話。

「俺 彼女出来たばかりなんス」
「別れろ」

 そんな不満そうな顔をするな、お前ならもっと
いい娘が向こうでも見つかるぞ。…それとも、私よりも
そいつを選んでここに残るとでも言うつもりか?


 グルグルそんな事を考えていたら、大佐には
俺の気持ちなんて理解できませんよとの拗ねた答え。
皮肉でなく二、三度デートをしただけの相手に
そこまで思い込めるのかと背後にいる者達に
目線で問えば、揃って無言で頷きを返された。
 己の読み間違えに、ようやく気付くがすでに遅い。

「大佐が俺の目を見て『ハボックが必要だ傍に居て欲しい』と
言ってくれたら 多分俺は滅茶苦茶感動して一生アンタに
捧げちゃうかもしれませんね」

――なんだ、そんな事をいまさら。私が必要でない奴を
手元になど置きたがるものか。
簡単なことだと真意を込めて、今のお前の『一生』の言葉忘れて
やらんぞと微笑めばハボックの眼は少し見開かれ、
頬は紅く染まった。

 さあ随いてこい。お前が必要だとの言葉に嘘はない。
――これでハボックは、私から逃げられないとの言質を
取れたのかと思うと、私の頬も自然と緩んだ。
 
 

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オマケ ロイサイド