| どうにも言い訳が難しいが、私がハボックを振り回している自覚はある。 女性相手全般に、礼儀であるのだから愛想をよくふるまう私に対し、ハボックは 露骨なまでに顔に出るタイプで、愛想が良くなるのは好みか好みでないか…… いや違う、基本的にどんな相手であっても上官に対する問題行動以外はハボック の人当たりは良い。だが、一定の条件を持つ者に対しては愛想が良いを越して だらしないぐらいに目尻が下がり、にやついているというのは目敏い者でなくとも 悟れる事実だ。 …具体的に言うのであれば、つまりは胸が大きいか大きくないかという面が重要視 されているというのは、私の考えすぎではないだろう。 だがそれは、悪辣ではないか。 かわいらしさが勝負だというのであれば、ハボックの為に可愛らしいロイ・マスタング を演じてやらんこともない。………いや、やはり今の発言は取り消そう。 可愛い私というのやらを演じて出来ないことはなかろうが、それは既に私でない。 何より他の者にそんな場面を目撃された瞬間に、記憶喪失にでもなりたく望んで しまいそうだ。 過去に何度かハボックは、年下のクセ生意気にも私を『かわいい』などと称して からかってきたのだから、…まあハボック基準の可愛らしさというのであれば、 比較対象に選ばれるぐらいはできるだろう。 顔の造作でというのなら、…ハボックは私の顔を好みだと言っているのだから そこそこ自信を持っても良いのかと思う。 だがしかし…基準がボインか否かというのであれば、私が立ち向かえる余地が どこにも存在しないではないか。 百万が一私とて胸筋を鍛えれば、胸を膨らませるのも不可能ではないかもしれん。 ………だがそれで出来上がるのは、醜悪なとしか表現できない体型だ。 ならば、私が取れる方法はひとつ。 いつもハボックに我侭言って、私のことで振り回して、……他の誰かを見る余地 や、私以外に愛想をみせる余裕ないほど、拘束をしてしまおう。 それで嫌われてしまうのであれば、哀しくは思うだろうが…ハボックが幸福な 未来を得るのに、私と居るよりそちらの道のほうが為になると…なんとかアイツを 諦めることができるかもしれない。 「…なんでそんな複雑な思考回路してるんスか」 ふと洩らしてしまった私の本音に、ハボックは呆れ戸惑い声だ。 「私を好きになってくれた者は過去にいるが …私からこういう意味で好きになった 者は他にいなかったから…どうしていいか解らなかった 複雑か?単に思ったまま の行動を取っただけなのだが」 私の問い掛けに、絶句したハボックは暫くして耐え切れない、とばかり小さく 吹き出した。 「ホント、巷一般でコマシのふたつ名を持ってる人とは思えないっスね…いや 違うか…現に俺も大佐の今の発言で嬉しくて仕方ないんだからやっぱ誑しこまれ てるんだよな …大佐男女問わずの天性?」 「…意味がわからん」 「解ってくれないから俺が困ってるんスよ その無意識のかわいらしさ俺の目が 届かないところでも振りまいてるんじゃないかと気が気じゃない」 重ねられたハボックの台詞は、私にとってやはり理解不能であったが、コイツ がどういう理由であっても、私から目が離せないというのならばまあ良いかと、 無言で微笑んでやった。 「…あーもう 笑顔一つでトドメかよ 本っ当ズルい人に惚れちまったなぁ」 「笑顔で周囲をたぶらかしまくっているお前に言われたくはないぞ」 「俺はいいんスよ感情そのままの顔してるだけだから 大佐の微笑なんて遠巻き にいる奴らにしてみればどれだけ貴重か解ってないアンタが問題なんです」 少し不本意な言われような気もするが、ハボックがまた私から目を離せないと いう理由が増えたならそれは嬉しいことだと、笑顔で返してやったらハボックは 一言『…降参』とだけ呟き、抱きついてきた。 |