生脚とお返し/下


  一言返答を間違えれば、ハボックが力尽くという手段を選びかねない相手
に変貌しそうな危地に立たされたロイは、言葉を選びゆっくりと口に出した。

「…その、だな…お前の妄…空想の中ではイケてても 実物でガッカリさせたら
申し訳ないし」
 目線を天井に向けつっかえつっかえのロイの言い訳は、言下に却下される。
「ソレ絶対 ありえないから大丈夫です」
「…履、履き慣れていないから足元寒くて 風邪をひくかもしれんしっ」
 ハボックの腕が、ロイの両脇へと体重を乗せて置かれ、じりじりとソファ隅迄
後退したロイの退路を阻む。
「…ヘェ 大佐はフェミニスト自称してるクセに女性にそんな体調崩しそうな
モン着せようってんですか?」
「わ、私が大総統になったアカツキにはミニスカ着用実施前に きちんと配慮し
全個所セントラルヒーティング完備にするつもりだっ」
「今この部屋だって充分暖房効いてるじゃないスか その上で大佐もそういう
格好してみないで 自分だけ風邪をひくから嫌だなんて…女性陣が聞いたら
その言い分 何て思うでしょうね?評判聞いてみたいっスよ」

 よくよく考えてみれば、女性陣がその話を聞く前提として『ロイにミニスカート風
Tシャツ1枚姿をお願いしたら風邪ひきそうだから嫌だと断られた』と口にせねば
ならず、実現させればどう取っても不審人物の扱いを受けるのは話し手である
ハボックの方だが、切羽詰っているロイは気付いておらず、崖っぷちに追い
つめられた感で小さく唸る。

「大佐が『一人じゃヤダっジャンもお願い…』って可愛く言ってくれれば 俺も
おつきあいして差し上げますが?」
 細められた目付きは、笑みの形を刻んでいるのに何故か凶悪でロイは無駄だ
と悟りつつも、懸命に退路を探す。
「誰が言うかっ!…大体っお前の生脚を見たって私は嬉しくもなんともない!!」
「ですよね 俺もそれこそ見苦しいと思いますし おそろいは却下で…では自主
的に大佐が着替えてくださらず 拒否されるとなると 残りは俺が無理やり強いる
の選択になりますが」
 
 ニッコリ笑ってのハボックの言葉は、つまりは着てくれないなら力尽くにでも
実行するぞの意味で、ロイの背筋を粟立たせる。
だからといって、今更折れるにはロイの矜持は高すぎた。むぅと唇端をきつく結び
まっすぐに睨み返す漆黒の瞳に、ハボックはにっこりと微笑を返しその表情とは
裏腹に物騒なセリフを返した、
「…力づく 決定」
 
 結局、『頂いたものに、本人がお返しをするのが最低の礼儀だ』と主張するロイ
を押し留める、ハボックの欲と計算が絡んだ引止め作戦は、効を利したようだ。

 生脚などになったら風邪を引いてしまうかもしれないと主張していたロイは、
素足を通り越して、身に纏っていた服を全てソファの上で強奪されてしまい、
そのせいで、熱を出し外出不可能となってしまった。

 そのロイに代わって、自分が代理であることを謝罪してホワイトデイのお返しを
配り回るという提案をハボックは持ち出し、不承不承とはいえそれを同意をさせた
事に上機嫌で、指令本部を駆け回り使い走りに励んでいた。

休日に職場を走りまわされるのに、上機嫌だという理由は勿論、お返し相手に
さりげなく、ロイには恋人にいると匂わせる為にである。

 
**************************
生脚おねだりの時点では、ハボは翌日の計算までしておりません…多分