誓いの言葉


『私は定めに従い婚姻を結び、この者と共にその生涯を送ります
私はこの者を愛し、慰め、敬い、支え、二人の命ある限り
一切、他に心を許さず堅く節操を守ることを約束致します
今よりのち、
幸福な時も、貧しい時も、病める時も、健やかなる時も、死が二人を
隔てるまでは、互いを愛し、慰め、慈しみ、庇い、助け合い
変わらぬことを、誓います』


「よく憶えてますねそんなモン」
 感心しているのか、呆れているのかわからない口調のハボックに
右コメカミ辺りを指差して、無言でここの作りが違うのだよと示すロイ。

「普段どうでもいい事なんかに使う記憶容量はないって
言ってたじゃないスか…どうせ女の子ウケするとかの理由で
覚えてたんでしょ」
「別に意図して覚えたわけじゃないさ まぁ確かに女性の結婚への
憧れが話題になった際にこの成句を告げると 盛り上がったのは
事実だがね…覚えたのはヒューズの結婚式の時だ」
「中佐の?」
「まだ当時は中佐じゃなかったがな あの口先だけで周囲を茶化したり
煙に巻いたりできる男が真摯な顔をして…誓いの言葉を述べていた
のに 柄でもないとお前は言うだろうが心が動いた」
 
 少し目を伏せ、微笑むロイの顔は珍しく職務時間だというのに、
警戒心が欠片もない無防備な顔で、ハボックの目を惹くと同時に
軽い嫉妬を覚えさせる。
 ヒューズとロイが、そういう仲ではないと解っていても、こんな自然な
顔や懐かしい顔をさせられる事実が、どうしても気になってしまうのは
自分がロイの恋人と呼べる立場になっても、変らない。
 またそれを口にしても、ロイも自分も困った空気にしかならないのは
経験済みなので、代わりにハボックはただ黙って、ロイを背中側から
抱き締めた。

「ねぇ大佐 俺が同じことを言っても心動かしてくれます?」
「…お前が? 今の私の言葉だけで覚えられたか」
「……バカにしてるでしょ 俺のこと
確かに全文は無理っスけど…
幸福な時も、貧しい時も、病める時も、健やかなる時も、死が
俺と大佐をを隔てるまでは、ずっとずっと愛し続けると誓います
……ほら 俺にだって言えます ずっとずっと好きですよ」

 黒く澄んだ双眸を細め、微笑んだ表情のままのロイは、自分の腰に
廻されたハボックの掌に、己の掌を重ね肩越しにふりかえった。
「ではハボック 私も誓ってやろう
今よりのち、幸福な時も、貧しい時も、病める時も、健やかなる時も、
死が二人を隔てても、互いを愛し、慰め、慈しみ、庇い、助け合い
変わらぬことを、誓います」

 ロイから同じ言葉が洩れるのを、心高ぶらせていたハボックが
記憶と微妙に違った誓句に、首を傾げる。
「…あれ? 今の言葉って……」
「私は仮に死が お前と私を別ちても愛しているぞ」

 イタズラっぽいロイの微笑みに、ハボックの鼓動が昂ぶった。
女性相手に、ロイのタラシぶりに何度も嫉妬した事があるけれど
その誑しぶりが自分に向けられると、どうしようもなくドキドキと
してしまう。

 ハボックが一言、「俺も死んでも別れてあげません」
と告げるとロイは「直球だな」と声を立てて笑った。 

 
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冒頭の誓いの言葉そのままでは問題アリかなと、キリスト教の誓いの言葉をアレンジさせて
頂きましたので正式な物とは異なっております。