| 大佐が滅多に見せない、困った顔が好きだと言ったら 怒られるだろうから、黙っている。 普段は大佐の地位としての威厳を気にしてるのか、 そんな表情を見せる事は滅多にない。 …というよりも、職務上であれば仮に一の手が失敗しても ならば二の手三の手と、次々に異なる方法を考える性質が 身に沁みていて、その表情に困惑という言葉を浮かべる 時間すら惜しいのだろう。 勿論、その張り詰めた空気を纏う緊迫した顔も好きだし、 余裕が無くて、八つ当たりめいた事をされる時の顔だって嫌いじゃない。 だけど一番好きなのは、やっぱり困ってる顔。 大佐の内部に踏み込めた人だけにしか見せない表情で、私事で相手の 悪意がない状態で、困惑する事態にあった時にだけ見せる表情。 大人げねぇとか、童顔だとかさんざ揶揄され気にしているだろうせいで 張ってる片意地が抜けて、とても年上とは思えない脇が甘い、無防備な顔。 ――でも、こんなに苦悩してる顔が見たかった訳じゃない。 俺が好きなのは、困ってて絶対に助けを請わないけれど、それでも 俺が後押しできる状況が前提だ。 初めて見る、絶望が入り混じった困惑の顔。その原因は俺で。 …施しようがないのを一番知っているのも俺だ。 ごめんなさい 俺はもう役に立てません。 アンタの手助けどころか、随いていくことすら侭ならない。 だから捨てて行ってくれと叫んでみたけど。 …それでもアンタを思いつづける事は変わらないから。 どうか、諦めさせてください。 相反するグチャグチャの思いに、下されたのは「待っている」の言葉。 その日はそれだけ述べて去っていった大佐に、 まだ自分の答えを返せなかった。 数日後、けしてこちらの様子を探りに来たのではない、単に忘れ物を 取りに来ただけだと、一生懸命装う大佐の内心が測れるように なっていた俺は、もう随分と心が回復していたのだろう。 自分から会話を切り出せない、困った顔をやはり好きだと思う。 「賞金は山分けっスよ」 そう言って笑いかけると、大佐の強張っていた全身が あっという間に氷解していくのが伝わってきた。 ごめんなさい、本当は勝手に想い続けるだけにしようとしていたけれど、 声に出してあんたに告げておきます。 そうすれば、本人が思っている以上に情が深いこの人は、 決して俺を捨てられなくなるだろうから。 「お願いします 俺がアンタを好きでいること許して下さい」 *************************** ハボサイドの心情っぽく |