| ハボックの親愛の情は、訳隔てなく振りまかれているように見える。 勿論、アイツにだってどうしても馴染めない奴だとか、気が合わない 奴がいるのだろうが、とりあえず私の前では見たことがない。 そう思ったロイは、ハボックの行動を観察していた。 フュリー並の身長の者からも、ハボックと同身長+重さ1.5割増と 言うような者も気軽に肩を組んでは、酒を酌み交わしたり、笑いながら 拳を軽くぶつけ合って挨拶している様子は、爽やかな男同士の やり取りとして、舞台のワンシーンにでも出て来そうな清清しさで あるのだが……ロイにとっては面白くない。 「…大佐 何ブーたれてるんスか?」 「誰がブーたれているんだ」 「今の俺の質問はアンタにしたもんなんスけど そこらで汲んで くれません?」 「ほほぉ お前が私に謎掛けのように質問してくるとはな 随分と 頭を使った会話をできるようになったじゃないか」 何だかわからないけれど、目前のロイが少し拗ねてる様子なのが わかったハボックは、机に肘付いたまま目線を寄越そうともしない 相手の興味を惹く為、軽く屈んでその顔を覗きこむ。 無理やり視線を捕らえると、ふいっとそっぽを向くのはロイ自身が が少々自分を疚しく思っている行動の時だ。 「えっと…俺何かしましたっけ?」 ロイがやましく思っていようと、きっかけは自分にあるらしいと悟った ハボックが今日の自分の行動を思い起すのだが、どうしても 何かをしでかしたという記憶がない。 「別に何もしてない」 「…じゃぁ別にムカつく事でもあって 俺にヤツアタリ?」 「やつあたりなんてしてないし…仮に当たってるとすればお前の 行動が原因だからだ」 遠まわしでわかりにくいが、やはり原因はハボックにあると 言っているらしいのに、ハボックがしばらく困惑した様子で 立ち竦んだ後、にっと唇の片端を上げた。 「えー じゃぁ原因らしい俺が ご機嫌とってあげます」 ひょいと両肩下に掌を差し入れ、高い高ーいっとロイを持ち上げた ハボックは驚きで硬直しているロイに、目を細めた。 「ハハッ すっげぇ今の大佐の顔 かわいい」 「…なっ…」 瞬時に顔を紅くしたロイが、暴れようとするのを察したハボックは すぐにロイを椅子へと下ろし、ロイが何かを言い出す前にその唇を 己の唇で覆った。 「…で 結局なんでヘソ曲げてたんスか?」 「別に…お前が他の奴らにやるみたいに 私相手だけ肩を組んで きたり内緒話をしてこないから腹が立った訳じゃない」 あいかわらず、ちょっと捻った答えを返すロイの言葉はつまり 「ハボックが自分だけ親しいコミュニケーションを行なってこないから 淋しくなった」と翻訳できる。 「いやぁ…大佐にシモネタ話はさすがにできませんし…」 「普段…お前たちはあの炎天下でそんな話をしてるのか?」 呆れたようなロイの表情に、ハボックが苦笑した。 「血気盛んな軍人達は女と酒の話は時間と場所問いませんよ …っていうか大佐仮に夜でも俺がそんな話をしたら嫌がりません?」 「………」 そういった類の話に疎いためか、スムーズに切り返せる自信の ないロイは黙り込む。 「大佐の肩を組まないのは 幾ら大佐が許してくれても上司に そんな態度取ったら他の上がうるせぇでしょ そんな理由で部下の躾が なってないって大佐が絡まれても嫌ですし」 「なるほど」 納得した様子のロイは、それ以上無理は言わない。 だがそれでも物足りなさそうなので、微笑んだままのハボックがロイを もう一度かかえ立たせると、ぎゅっと抱き締めた。 「肩組むより 大佐とだったらこうしてる方が俺は好きです」 「…苦しいぞハボック」 内心男同士の友情風なやり取りに憧れていたロイも、こうまで ストレートに愛情表現されては、頬を赤らめるしか術はなくハボックの 為すがままにされていた。 ***************************** ロイのやきもちは、ハボの人懐っこさへ |