| 三者三様に異性(一部同性含)にもてている三名であったが、 各々への好意の示され方とそれ対応する反応は、それぞれ異なり 誰一人重なる箇所はなかった。 ロイの場合は同性の妬みを持つ者が見ても、もてるのは納得が いくもので、女性が幾つになっても心の奥底で存在を願うような、 エスコートに長けかつスマートな若きエリート像を、本人が意図せず 周囲へ披露しているのだからそういった意味で、真似なんかできるか 畜生と粗野な男どもに呟かれる事があっても、太刀打ちしようとする者は ほとんどいなかった。 一方ジャクはといえば、チクショウと呟かれるレベルなどではなく、 お相手女性に片思いの男なり元彼なり…下手をすれば今彼なりが 存在すれば、なんでこんな誠実さも真心も持ち合わせていないような 相手を選ぶんだと、暴力沙汰で彼女と別れろと迫ってくる相手が 過去多々存在し、実際トラブルを巻き起こしている。 だが幸い当人が使い手で、女へ口説きをかけるかわりに暴力沙汰で 済ませようとする輩如きが敵う相手でなく、女性から見れば、その 危険性がありそうな所も素敵と、一種の兇暴さにまで反応されている のだから、雄としてはある種一番正当なもて方をしていると言えるかも しれない…人としてはどうかとされるが。 一番複雑なのは、ジャン・ハボックであろう。 もてるかもてないかと尋ねれば、当人は苦笑して俺は全然っスよと 答えるだろうが、その場にロイとジャクが存在した場合多分両者は 複雑な表情で、ハボックを見詰めるに違いない。 本人が気付いていないだけで、ハボックは女性に好意を持たれる 事が実は多い。金髪ブルーアイ、陽気な性格で女性への心遣い もあり、年齢のワリには出世だってしているし長身で頼れそうだと 指折りで数えてもかなりのプラス点が評価されるのに、唯一異性への 洞察という方角で大きくマイナスを背負っていて、相殺されてしまって いるのである。 例としてあげるならば、先日は大人しげな雰囲気のふんわりクセ毛 金髪女性がハボックへと、世間噺を交えながら意を決したように 「あの…ハボック少尉のお好きなタイプの方って…どんな感じの 方なのですか」 と問いかけたのに対し、ハボックはのびのびとした笑顔で 「んーどちらかっていうと黒髪が好きかな サラサラのストレートだと もっと良いかも」と答え、聞き耳を立てていた周囲の内心で、一斉に 『莫迦』とツッコみを請けていたのだが、…おそらく当人は現時点でも、 相手女性の真意に気付いていないだろう。 「…で?なんだよジャク 俺がモテないのも大佐がラブレター貰いまくり だってのも 今更言われなくても知ってるさ」 ふて腐れる顔でなく、現在腕の中に愛しい人がいるからそれで充分 幸せなんだと、ロイを自分の胸部にもたれ掛からせ座らせたハボックは、 ロイとは違ったの形の好意を寄せられる事が多い、兄へ尋ね返した。 「いや だからさ鈍いお前とソッチ方面の気がなさそうなロイさんで よく成立したなと思ったんだよ 心理テストのに出来ちまったのが 勢いだってお前が白状したけど…その前の段階、なんか意識をする キッカケでもあったのか 興味本位の質問」 暫く黙り込んでいたロイとハボックが、どう説明しようかとばかり に互いに目線を交わしているのに気付いたジャクが、重ねて伺った。 「なんか マズいこと聞いたか?」 「いや…拙くはないけど…これってキッカケは特になあって… 俺が同僚に好みのタイプ聞かれて『年上でしっかりしてるようだけど どっか抜けてて ショートの黒髪でキリッとした印象与えるのに 本当は可愛いタイプ』…って答えた時も別に大佐を意識して答えた訳じゃ なかったから 当人がその場にいても全然困らなかったし」 「…ロイさんその場にいたのかよ …でロイさんはそれを聞いて ジャンを意識しだしたとか?」 どう解釈しても、その時のハボックの台詞は、ロイを指し示して いるだろうと、呆れながらジャクはもう一方の当事者に会話を向けた。 「…いや…その時の流れではハボックに私の知合いの女性を紹介しよう という話だったので…知人にショートの黒髪でハボックより年上でしっかり しているようで抜けているというタイプはいないから困ったなとしか」 『こいつらってば すげえお似合い』 当時その場にいた、弟の同僚という人物の苦労を察しつつ、珍しく揶揄の タネを見つけられなかったジャクは、そう結論づけるのだった。 |