首輪/上


 親友が差し出した紙袋を、首をかしげながら受け取ったロイが
素直に開けると、中に入っていたのは犬耳つきカチューシャと細い
鎖つき赤の首輪。
赴任間もない護衛役との、相互やり取りでの行き違いを相談したく
この友人を招いた筈なのだが…と、ロイは首を傾げた。

「……ヒューズなんだねこれは」
「お前がどうしてもハボックの気持ちが理解できんと言うからわざわざ
優しい親友が買って来てやったんじゃないか」
「経緯を尋ねているわけじゃない この品物が何だと聞いているんだ」
「見たまんま 犬耳と首輪」
「…そうじゃなくて……それは見れば解る 要するに用途をだな…」
「犬耳は頭に被って 首輪は首に装着」
 わかっていてわざと的を外した回答をするヒューズは、うさん臭い
笑顔のまま、ロイにさあ着けろと促す。

「…着ける?」
 これをかという言葉は省略し、左手に犬耳右手に首輪を持ったロイ
はそれをかざした。
…やはりどうみても、獣向きの首輪と女性向け夜のシャレ用お遊び
アイテムである。
「お前は基本がネコ性質だからな どうかんがえても犬気質のハボ
ック少尉とは反発する事もあるかもしれん この前その事で悩んで
ただろ?その場合下を理解する為に勤めるのが上役たる者の役目
ってもんだ」
「だからって……何でこの二つなんだ」
「首輪つけられる立場と 犬の気持ちを理解するのに最もだろう?」
「しかし……」
「会話じゃスレ違うって言うんだったら実地しかあるまい …俺が親友
の為に周囲の妙な目にも負けずに…買って来たのになぁ」
わざとらしく口元を手で覆って嘆息するヒューズに後押しされ、渋々
であったがロイがカチューシャをセットする。
妙なところで不器用なロイが、首輪を上手く付けられず指先でベルト
穴を探しているのを、ヒューズが手招きで屈ませ、装着を手伝った。

普段素を晒す事が少ない代わり、一度信じた相手は、あまり疑わな
いというロイは、ヒューズの掌の下の口元が笑っているなど、勿論
想像だにしていない。

「大佐ァー入り…… 何してんスか」
 ノックは入室の合図であるはずだが、ハボックにとっては扉を開け
る前の単なる前フリであって、ドアを叩いた瞬間にはもうノブを捻って
部屋に足を踏み入れている。
 その僅かな時間で、首輪や犬耳が外せる筈もないロイは、心構え
もまだのうちに、攻略対象が現れてしまっては何と言っていいものか
も頭が廻らず、その姿のまま凍っていた。

「よぉハボック少尉 似合うだろロイのこういう格好も?」
 人好きする笑顔の裏で、うさん臭さをこれでもかと巻き散らかしてる
ヒューズが、動じる様子なくソファに座ったまま手を振った。