| 「大佐に似合うのって 一輪咲きの白系の花だよな!」 月下美人を初めて見たというハボックが、四方山話で出た 話題に乗じて、過去に彼女に渡した花束にどんなものがあった だとか、花言葉も色によって同種でも違うのだと知らなかった だのを語っている。 色々な話題に反れた後、結論とばかりにロイに似合う花は月下 美人だの百合だのだろうと述べた上で、ハボックはブレダに同意 を求めた。 ロイとホークアイが揃って市内視察で不在なのをいい事にの雑談 は、気安く断ち切れる話題が望ましく、ブレダもその会話に調子を 合わせる。 「…あー男相手に花がどうとか語るのは考えモンだけど まあ… 大佐だったら確かにそんな雰囲気あるかもな…そういや花言葉 っていえば 何でだよってギャップが激しかったの一つだけ覚え てるな」 「ギャップ?」 「ネギで花言葉が『誘惑の足』」 確かに、葱のイメージからは程遠い印象だ。 「…なんでそんなの知ってるんだ?」 生き字引とも称されるファルマンであるならばともかく、ブレダは どちらかというと理数系の頭脳派であった筈だのハボックの疑問に、 ブレダの眉がかすかに寄せられた。 「…学生の頃の女友達が 俺の頭見てネギボーズみたいだって 言って…その流れで全員のイメージの花を決めようついでに 花言葉調べてみようになったんだよ」 「あー それで誘惑の足なんて結果が出たんじゃ…その、色々 お疲れさん」 ぽふぽふとブレダの頭をたたくハボックの手を、ブレダは邪険に 振り払う。 「私が知っている予想外の花言葉はニラですね 随分ロマンティック で星への願いだそうです ただそれとは別に卑劣という意味もある らしいのですが」 「なんだか…随分両極端ですね」 純朴なフュリーの言葉は、聞いていた他の者たちの言葉を代弁 していて、ファルマンは言葉を重ねた。 「先ほどハボック少尉もおっしゃっていたように 花言葉は色や状態 などで変りますし 一つの花で幾つもの意味を含んでいたりします からね」 「そういや ちょっと話題がずれるけどお前は何となくアがレ似合い そうな感じだよな」 ブレダがハボックに向いて、太い指で差したのは窓外で鮮やかな 黄色で咲き誇っている、大振りなヒマワリ。 「そうですね ハボック少尉の雰囲気とかにピッタリです…ヒマワリ の花言葉は何になるんですか?」 にこにこと尋ねるフュリーに、目を瞑りながらファルマンが記憶を探る。 「確か『私の目は貴方だけを見詰める』とか『敬慕』とか…何か他の 言葉もあったけれど あまり興味がなかったので現在記憶にある のはこの二つです」 ファルマンの言葉に、ブレダが小さく吹き出し笑った。 「…ハボ お前花言葉まで犬みてぇだな」 「うるせえいいんだよ 大佐を尊敬してる部下…イイ話じゃねえか 俺…自分じゃ解んねえけどヒマワリ似合うんだ?」 その場にいた者は全員が頷き、ハボックは面映げに頬を掻いた。 満更でもない顔付きで、帰ってきたロイに自分をイメージする花が 向日葵だと、そして花言葉までピッタリだと言われたと、ハボックは 雑談ついでに告げた。 花言葉を、そのまま気自分の持ちを伝える手段として利用しようの 目論見である。 だがそれは、ロイの不思議そうな 「…随分 率直にものをいう友人だな遠慮のない相手なのか」 の呟きで、断ち切られた。 「え…俺が大佐だけをまっすぐ見詰めてるっての…遠慮がいる 言葉っスか?」 「…ヒマワリの花言葉は確か『高慢』とか『いつわりの富』『偽金貨』 だろう?…他の意味もあったような気もするがあまり私のイメージの 花ではないのでね 覚えているのはそれ位だ」 ……ファルマンの言っていた他の意味の花言葉って、これか。 脱力したハボックは、異性の前では浪漫の塊の王子様を演じる相手 が、自分の前では容赦ないリアリストの側面を遠慮なく晒してくれる のを、不幸と汲むか幸いと受け取るのか煩悶し、複雑な気分で苦笑 するしかなかった。 |