| 「俺はどんな出会い方してても大佐を絶対好きになってたと思うんスけど 大佐はどうですかね?」 満面の笑顔という訳でも、猜疑心を浮かべてでもないハボックの 表情は、自分にもそうだと言って欲しい甘えを含ませた願望を述べている というより、興味本位での質問のようだ。 ロイに『私もだ』と答えさせたいのであれば、解りやすく瞳を輝かせて 待っているだろうし、どうせ大佐はそう言わないだろうなと思ってであれば 卑屈さが自然滲むはず。 「…状況によるな」 「例えば? 学生の頃の先輩後輩の立場で出遭って、お前が今と変らぬ ように境界線を乗り越えて近寄ってきたのだったら、現在と同じ感情を 抱いた可能性は高いが 仮にお前が上官だったり先輩だったりした 場合…鬱陶しそうだから表面上の付き合いで済ませていた可能性が高い」 「鬱陶しいって…ひでェ 俺 結構面倒見イイとか自分で言うなだけど 頼れるとか言われるのに」 さすがに自己の特性を否定され、拗ねた口調になったハボックに ロイが僅かに口元を優しく緩めて、肩を竦める素振りを返した。 「それは認めてるぞ だがそれを上の立場で行われると当人はそうで あろうとなかろうと 私にとっては借りができるみたいで…好まないだけだ」 「…中佐だったら…?…あっやっぱ今の質問なしっ聞かなかった事に してください!」 自然、飛び出した質問にハボックが慌てて掌で口を塞いだ。 自分の友人へ、ハボックが複雑な感情を抱いているのを知っているロイは 苦笑を浮かべた。 「多分アイツの場合…年齢や立場が異なっても今とあまり変らなかった ような気がするな」 予想はしていたのだろうが、越えられない絆というものを見せ付けられた 気がしたハボックの意気消沈ぶりは凄まじく、大きく肩を落としうな垂れている。 「だがそれはヒューズの頭の良さから来ているものだから仕方あるまい あいつは私の性格や内面を見抜きその上で接し方を決めてくれる…仮に 向うが先輩であったとしてもこちらの負担にならないように持ち掛け 上司で あったとしても自尊心を損なわさせずに上手く私を使いこなすだろう…お前に その腹芸がこなせるか?」 「…無理っスね」 「そうだな お前のことだニコやかに『俺がやってやる』と負担を請け負ってくれる だろうが…それが私にとって重圧になる場合…やはり無意識に避けてしまうかも しれんし」 「俺 多分そういう時相手に恩を売るとか考えてないしやってやるなんて威張る… 真似しないっスよ?」 「そうだろうな だが…そういう人柄は嫌いではないので負担とは別に…好きに なったりしても困るじゃないか…そういう面倒は嫌いだから徹底して避けるぞ 私は」 「…あれ ソレって今とどこか違います?」 ――しょげてた犬が、勢いよく尻尾を立ててじゃれかかって来たようだ。 突然、陽気で前向きな雰囲気になったハボックに、ロイが首を傾げた。 「今と…とは?」 「大佐 最初俺が告白したとき逃げ回りましたよね 立場がどうとか俺の幸せが どうとか落ち着いて考え直せとか」 「そう…だったかな…」 「そうっスよ!俺は何て言われようと気持ちは変らない自信はあったし大佐を好きで 居続けたけど お前はいらないと他の部署に廻されたらどうしようかと すっげェ不安 だったんですから」 「…一応 言訳をさせて貰うがお前の幸せを考えてとの行動だったのは嘘ではないぞ」 「解ってますよ …でも俺が上の立場だった場合手放される心配は絶対ないでしょう? あとは大佐が俺を好きにならないように逃げまくるというなら押せ押せで追いかけます」 「…セクハラで訴えたらどうするつもりだ」 「大佐が、俺を?」 絶対にそれはないと、自信ありげに微笑むハボックに、ロイが僅かに頬を染めた。 「お前が上官の世界に生まれなかった事に感謝してやる…きっとこの上なく鬱陶しい 世界だっただろうし 今以上に気苦労が多そうだ」 「…気苦労……ねぇ…」 「なんだその含みを持たせた言い方は」 プイと背けたロイの顔は、まだ頬が紅いままだ。 「まあいいや それってやっぱその世界でもいつか俺を好きになってくれるって 意味っスよね?」 「…知るか 自分で考えろ」 早足でその場から逃げようと立ち去る、ロイの頬の紅潮は色を増しており、言葉より 如実にハボックへ答えを現していた。 |