| 「私が単に孤独を厭うただけで 傍に居る者は誰でも良いとお前 を選んだとしたらどうする?」 生真面目顔で問いかけてきたロイに、こちらは常である飄々と した雰囲気を変えず、ハボックは肩を竦めた。 「別に?…おや当てが外れたって顔してますね 大佐としては やっぱ俺にショックを受けて欲しかった?」 ニヤリと少し人の悪い笑みを浮かべたハボックとは対称的に、 平然を装おうとしているが、ロイの機嫌が損なわれたのは確かで、 それは僅かに寄せられた眉根から、悟ることができた。 「無理ありますよ大佐の言動 俺を引っ掛けたいならソレらしい 行動してからじゃなくちゃ説得力皆無ですって」 「ソレらしく…とはどのような行動だね?」 自分の何が無理があるのかと、尋ね返すロイは不本意なようだが それでも持ち前の探究心で、ハボックが指摘する理由の根拠を 知りたいらしい。 「まず誰でも良いって言うなら あの笑顔で本心覆い隠すの止めた 方がいいっスよ ちょっと大佐の事を知れば例のうそ臭い笑顔で相対 してるのは 警戒してる相手なんだなーってバレバレですから…これ でまず 大佐が胡散臭い笑い顔をしてる時に一緒にいる奴は 選ぶ 相手としてバツだなって消えますね 誰でもいい訳じゃないでしょ?」 「…それはほぼ他人に近い相手と言う場合だろう …私が心を許し ている相手であれば 自然な笑みが浮かんでいるはずだ」 「ああ それは勿論ですよ あの顔を他の奴らの前でも見せたら 一気に大佐の敵は減って 信奉者は増えるだろうになーって勿体 なく思ってるぐらいっス…でもその顔見せる相手 かーなーり限定 されてますよね」 「……特に意識していないから解らん」 肯定をすれば、その時点で負けだと感じるのか ロイは不承不承 と言った様子で呟いている。 「それから頭の中身で気に入った場合はともかく それ以外の場合 大佐結構面食いっスよね 俺なんか仮に大佐より背ェ低くてもっと 太ってたりして加えてまばらな不精髭面だったりしたら相手にされ なかったんじゃないっスか?」 無言のまま考え込んでいるロイの脳裏には、太って髭を生やして 自分より身長の低いハボックがいた。 ――それを理由に、護衛官をやめさせたりはしないだろうが…… 今と同じ感情を抱いたかと自分に問いかければ、即断で答える ことは難しい…というより、あまり考えたくない。 「あ そんな罪の意識感じてる顔しなくてもいいっスよ 俺だって 大佐が俺よりでっかくて体格良くて チョビ髭面でモヒカンだったり したら…やっぱ今と同じ意味で好きになるのは難しかっただろうなあ って思いますから」 「…待て お前の想像力は凄すぎるぞハボック お前より背が高くて 体格良くて髭を生やしたモヒカンの私など…どうやっても絵面が脳裏 に浮かんで来ない…」 「まあ それはさておき 今の俺じゃない俺はイヤなんでしょ? それってやっぱ誰でもいいとは反対の意味っスよね」 嬉しそうな声であればまだかわいげがあるものを、ハボックは さも当然という表情で、見下ろすのが口惜しい。 折れるきっかけを掴めぬロイは、素直に頷けず視線を逸らした。 「ついでに言うなら大佐がワガママ言って それに付き合いきれる 奴、そんなにそこらに転がってないと思いますよ――中身・見た目 ・その後のお付き合い――全部含めて 俺じゃなきゃ駄目だって 認めちゃいません?」 わざと逸らした視線を捕らえようと、強い指の力がロイの顎を掴み、 ハボックの元へと引き寄せる。 「もう一遍言ってみます? 俺じゃなくても良かったって」 「……従順なフリをしたサド犬め」 「ご主人様が俺じゃなくてもいいなんて言うから悪いんスよ…俺 だから選んだって言ってくれないで まだ意地張り続けるなら… 噛み付いちゃおうかな」 柔らかく、低い声。だがゆったりと細められた目が、幾分かの 本気を含んでいると察したロイは、こいつをからかう場合、他人を 引き合いに出すのは今後止めておこうと、肝に銘じておくのだった。 |