贈り物の選択 オマケ

何とは無しに、引き続き頁をめくっていたハボックは文庫を途中で
開いた状態で伏せ、伸びをした。

「なんか…ガキの頃はイイ話として教え込まれてたけど 今の大人
目線で読むと 単に間が悪い夫婦の話だったり思い込みの激しい
女の子を救うために死んじゃったアル中の話だったりとしか捉えられ
ねえようになって……あんま感動湧かなくなるっスね」
「お前は子供の頃 最期の一葉で感動したのか?」
「いや…そういえばガキの頃読んだ時もこれっていい話なのかって
疑問に思ったような…あーでも儚げな少女が同じような悩み持って
苦しんでたら俺もやるかもとか思ってたかな そういう大佐は?」
「…私が段取りや効率の悪い方法を選択する輩を好まないというの
をお前は知っているだろう」
「つまり 今の俺と同意見って事っスね」

「同じ作者の作品の中には もう皮肉そのものでしかない短編も
あるのだが…それには収録されているかな?『善女のパン』と
いう題名だ」
ロイの目線の先に、文庫があると気付いたハボックが指先でパラ
パラと捲る。
「んー載ってないみたいっスね」
「翻訳によっては『パンの無駄仕事』とか『魔女のパン』になっている
みたいだが…」
「それも見当たらないっス どんな話なんですか」

目次を見て、該当作品がなさそうだと判断したハボックはロイに
直接内容を尋ねた。

「世間一般で…これは蔑称なので個人的にはあまり好まない呼び方
だが いわゆる嫁き遅れと呼ばれる年代のパン屋の女性が 毎日
店を訪れては安い古いパンばかり買っていく男性に同情して大い
なる親切心と好意を込めてこっそりパンにバターを挟んでおいてやる
話」
「…感動はしませんが まあちょっといい話っぽいんじゃないスか
別に皮肉とは思えませんが」
 疑問、という様子で首を傾げたハボックに、ロイは薄い笑みを返す。

「ところが一見貧乏人に見えた男性の職業が製図描きだとしたら?」
「男の職業で親切心がなんか変るんですか」
「おおいに変るとも 男性が古パンを購入していたのは炭で描いた
下絵を消す為で食べる為ではなかったんだ」
「…えーっとそれって…」
「パンにバターを挟んであげた翌日 女性はちょっと明るめの服装で
男性が来るのを待ち構えていた お礼を言われたら大した事じゃない
とさりげなく会話できるように…だが…やってきたのは怒り狂ったその
男性だった 男は昨晩全身全霊を込めて描いたコンペ用の製図を
消そうとパンでこすった瞬間…」
「うっわ…紙にバターべったりってオチ?」
「そう まあ一緒に訪れた男性が必死で宥めて女性に害は及ばない
で済むのだが…女性はそっといつもの地味な服装に着替えたと
いうのが結びだ お前がこの結末をまとめるならどう表現する?」
「…小さな親切大きなお世話…だけど…可哀想だなあ…」
「そうだ …だからお前もむやみやたらと親切振りまくんじゃないぞ
世の中気持ちだけじゃ通じずどんな結果をともなうか解ったものじゃ
ないのだから」

床に座って、ソファ自体を背凭れにしていたハボックが苦笑でロイの
手首を掴まえ、自分の目線へと引き寄せる。
「ひょっとして大佐 それが言いたくてこの話持ち出した?」
「な …なぜだね」
「いや一昨日 困ってる女の子手伝ってたら通りがかった大佐一瞬
眉顰めてたから」
「…それはお前の気のせいだ」
「はいはい そういう事にしておきましょう」

にっこりと空色の双眸を細めたハボックに、「お前の気のせいだったら
気のせいだ!! 大体私は女性への親切に嫉妬などしたりしないっ」
とロイは否む。

「はい そうですね俺の気のせいですとも」
「…お前のその返答 ムカつく お前がにやにやとだらしない顔をしてる
から腹が立ったんだ 確かに彼女は巨乳だったし可愛かった だから
といって部下が人前で緩んだ顔をしてるのを見たら 上官としてその
表情を引き締めろと思って当然だろう」
「ええ その通りっスね」
笑顔のまま同意を示すハボックに、ロイは頬を赤らめ ただ否定を
繰り返すばかりだった。

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えーっと一応言い訳しておきますが 別に私はO.ヘ○リー嫌いじゃないですよ
読書感想文用に買った文庫本(笑)捨てずに取って置いてあるぐらいに
本棚の整理で読み直したら、子供の頃とは随分違った観想になったなあの思いつき
小説でした