| 「あらためて言われてみりゃ…なんで母親暗い森に娘一人で お使いなんて危険な真似させたんでしょうね?」 ようやく仕事が終わり、二人連れで帰る道すがらのハボックの 問い掛けにロイが振り返った。 「中尉の前だから口にしにくかったが 赤ずきんは女の子の 性的冒険やそれに纏わるやりとりへの象徴的物語との解釈が あるからな 女の子をまず一人で外出させねば話が成立せん」 「…それ どういう解釈なんスか?」 「まず赤ずきんの物語における一番の出発点は父親の不在だ 助けに来るのも通りすがりの猟師であって父親ではない」 「そういやそうっスね」 物語りあらすじを思い出して、ハボックが同意した。 「で 赤や頭巾、ワインのボトル…これらは深層心理的解釈では すべて性的要素に繋がるアイテムに当たる 一人で旅立ちや悪い狼 …ここらは説明不要だろう」 「あー要するに悪い狼さんには騙されるなよって娘に言い聞か せる為の話だから 一人で行かせなくちゃ意味ないワケか」 「参考までに言っておくが童話でない原典の話は結構エグいぞ」 「原典なんてあるんスか?」 昔話、という雰囲気の童話は代々受け継がれていたのだろうと 思っていたハボックは、軽く尋ね返した。 「シンデレラだって元々はガラスの靴じゃなくリスの毛皮の靴 だったという話もあるし…色々とあるんじゃないのか 赤ずきん の場合元々は女の子がお婆さんともども狼に食べられて終わりだ」 「…猟師は?」 「出てこない しかもエグいのは狼が赤ずきんに…いや違うな 原典の話だとこの少女は頭巾を被っていないんだ まあ便宜上 赤ずきんと呼ばせてもらうが…とにかくその少女相手に狼は 婆さんの肉を干し肉だと 血をワインだと偽って食べさせる」 「うげェ…」 心底嫌そうに、顔を歪めたハボックを見てロイがくすりと笑った。 「お前らしいまっとうな反応だな ちなみにその後少女は服を一枚 一枚脱いで暖炉で燃やした後 狼に食べられて物語は終了だ」 「…カニバリズムにストリップで最後は食われてお仕舞い…って 救いようがねぇ…」 「寓話的にはそうかもしれんが ありうる話としてはこちらの 方が説得力あるだろう?…確か…『黒い森の乙女』とかいう 題名だったな 黒い森というのは針葉樹の森で……」 ――童話一つに、裏的解釈や深層心理、果ては原典まで探って 最終的には、カニバリズムまで行くのかよ 本来の物語とは関係のない薀蓄語りとなり始めたロイの声を 聞いているハボックは、告白時の返事に『お前の単純さが好きだ』 と言われた当時のロイの言葉を思い出した。 その時は複雑な気持ちを抱いたものだが、こうも物事を難しく 捕らえて生きているならば、そのままの心を言ってくれていた のかもしれないと、自然頬が緩む。 「…なんだ?楽しそうだなハボック」 「大佐の声 聞いてると嬉しくなるんスよ」 そうかと答えたロイの話は、いつのまにか眠り姫の物語に 関する解釈へと、話が移り変わっていた。 ************************ フロイトの本1回読んだけど何見ても性的欲求不満と希釈されていて笑った |