| マゾ気質は持ち合わせていないし、むしろ自分の性癖を どちらかでどうしても上げろというなら、サドに近いんじゃない かと思うのだけど、それだって人間誰もがどちらかの性質を 持っていて二分割したらという程度の比較率で選択した場合だ。 苛めたいと思うのだって、別に泣かせたい訳じゃない。 普段強気で意地を張ってるアノ人の、その仮面を取り去って 俺の前でだけ頼りなげで、下手すりゃ儚いと言って良いほどの キレイな内面を見せて欲しいと願うだけ。 …まあ、結果として泣かせてしまうのだけどその涙を 舐めとって、その感触に震えているのを抱きしめるのだって、 乾かすのだって全部俺の腕の中でだけという限定感が与えて くれる至福が、何物にも代え難いと思うからであって、単なる 嗜虐を喜ぶ性質は、多分ない。 切なそうな吐息とか、追い上げられた鼻にかかった甘い声、 傷ひとつない白い肌に刻む、俺の所有の証代わりの紅い痕。 それが眼下にある冥利は、下腹部を熱くするってのはホント だけれど、雄として当然の反応だろう?見たいと思って無茶 を強いてしまうのは。 「…おいっハボック!聞いているのかっ」 「勿論」 ――勿論、聞いちゃいないの言葉を、あえて省略して答えれば 大佐はお見通しだったようで、俺を睨む視線は一段厳しくなった。 これが学生時代のイヤミな教師だったなら、じゃあ今の自分の 発言を繰り返せと言ってくるだろうけど、流石にそれは時間の 無駄だと察してる大佐は、代わりに俺の耳朶を強く引っ張った。 「…で何を考えていたんだ?」 言い訳の余地を与えてやろうとの、大佐の温情なんだけど…。 今日の議題は先日捕まえた犯罪者どもの、逃走ルートを 図面から割り出せという地道な作業。 必要な作業だって頭じゃわかっているけれど、現場で奴らを 追い詰める高揚感とは、比較にならない退屈さでついつい俺は あの昂った気持ちに良く似た感情を興させてくれる、大佐の 蕩けた泣き顔想いだし、心の中で暇潰しをしてました。 ――素直にこう告げりゃ、幾ら何でも逆鱗に触れまくりだって のは、確実だ。 「スンマセン ぼーっとしてただけで何も考えていませんでした」 「…本当だな?」 ――いえ 嘘です。 俺への説教タイムが始まるかと、残る皆はそれぞれ自分の 席にこっそり戻ってく。 「まあいい 昨日の犯人逮捕の手際に免じて今日の所は許して やろう お前も早く仕事に戻れ」 おや、肩透かしを食らわせてくれる。 説教されなきゃされないで、物足りないのは実は俺マゾの資質 も持ち合わせていたんだろうか。 そんな莫迦を考えて、暫くたってようやく気付く。 ちょっと感じた不満は、大佐が昼間偉そうにすればするほど、 夜に啼かせる楽しみが、俺の中で増幅するからだと。 大佐限定ケダモノの性。付き合わされるほうにしてみりゃ 冗談じゃないかもしれないけれど、自分でも知らなかった享楽 的な闇の心は、大佐の涙を心地好いと感じる別の新しい俺を いつのまにか、引き出していた。 ***************************** ちょっとジャク混じってるハボ |