| 「で あのボスル准尉を前にアクビって度胸あんなぁって」 ハボックがにやにやと人の悪い笑みを浮かべているのは、上司 相手にあくびをしていたのを、私の弱味として付け込んでやろうという より、単純に面白がっているだけの表情のようだ。 コーヒーをまた一口含んだハボックが、俺だったらもっとはっきり アクビしちまってたと思いますけどね、と笑う。 それだけの理由で懐かれたのなら、…私にとって間抜けな出会い ではあったが、僥倖であったとも言えよう。 …そうでなければ、きっとこの手のタイプは私を敬遠していたに違い ない。スカしているだとか、エリートぶっているだとか女タラシだとか (一応万民に誤解のなきよう言っておくが、私はあくまでもフェミニス トであって、女性を誑かすような真似など一切していない)勝手に 人を見掛けで判断し、角を向けてくるのだ。 肩を竦めた私がそう言えば、 「え イヤそんな事ないっスよ 俺は一目見たときから大佐モロに 好みだったんで 大丈夫です」 とハボックは急に真面目な顔になって、返してくる。 人の好意をまっすぐ向けられるのが、こうも面映いものだとは 知らなかった。…ハボックの表現は少し変っているような気も するが、きっと私がこういうタイプとあまり交流を持たなかった為、 そういったやり取りに疎いからだろう。 「あー俺好きな人にはすぐ好きって 言っちゃうんスよねー」 だから本気にされないし、ふられやすいのかもとハボックは首を 傾げ続けたので、なかなか人に好意を示せぬ私は新鮮な行動だと 感心しながら意見を返す。 「…相手が迷惑だと言ってこなければ良いのではないか?」 ハボックが困ったように苦笑したので、こう答えれば一瞬ハボック は停止した後、ものすごい勢いで顔を上げ私をまじまじと見詰めた。 「えっと…それって大佐にOK貰えたと思って良いんでしょうか」 今の私達のやり取りに、何か承諾が必要とされる会話が あっただろうか?よく解らんが否定する流れではなかっただろう。 「よく解らんがお前の気持ちを否むするつもりはない …良い…事だ と思う…勿論相手の気持ちは尊重すべきだが というのが私の 答えだ」 要点が掴めぬので曖昧に答えると、ハボックは破顔し途端表情を 輝かせた。 「ホントっスか!?じゃあ後は大佐が俺を好きになってくれるよう 頑張りますから!好きです!!」 うむ、まっすぐな好意というのは、気持ちの良いものだ。 こいつが部下達に好かれると言うのも、納得がいく。 どうも人の心の裏ばかりを読んで、疑ってしまう自分はよくないな と内心でおのれを嗤い、ハボックの行動を微笑ましく思っていると 唐突にハボックは私へと抱きついてきた。 感情表現が率直な奴は、行動も大層ストレートだと呑気に思って いた私は、数週後ヒューズと飲んでいた時に「優秀な懐いてくれる 部下を得た」とこの時の話をしたら、「…お前 鈍感にもホドがある だろうと呆れられたのだが、いまだその意味は解らない。 ただ何故かそれ以降、ヒューズのハボックへの警戒と風当たりが 他の部下に対してより一段強く、相対していても笑顔であるのに目が 笑っていないのは私の気のせいではないと思う。 |