| 「パラレルの世界って立場とかだけじゃなくって性格が違う とかでもアリなんスよね?」 ハボック大佐は、例え出遭えてもロイと一緒に居る時間が 今より確実に減少するとの結果になった為ハボックの中では 没案となったらしい。 今度はどんな妄想を考え付いたのだと、呆れ顔のロイで あったが、無駄に知識を蓄えている身として、聞かれたら その薀蓄を披露したいという機会は逃しがたいもので、一応 同意を示した。 「…あるだろうな 性別違いだってありえるし」 「女大佐っ!いいっスね!!」 「…無駄に瞳を輝かせるな 何が良いというのだ」 「だって大佐ミニスカ推奨派でしょう 自分が女性だったら 堂々と着用できるし俺たちも、目の保養だし」 「あれは人が着てるのを見ているのが楽しいのであって …仮に私が女性であっても多分着用せんぞ 足元はスースー して寒いしちょっと走れば下着が見えかねんし」 「…なんでそんな実感篭った感想知ってるんスか…?」 冗談じゃないと首を振ったロイに、今度はハボックの声に 呆れが混じった。 「……黙秘権を発動する」 「わかりました 大佐が夜中こっそり部屋でミニスカを履く 趣味があったとか 実は小さい頃病気がちで女の子として育て られていてミニスカを履きまくっていたなんて 俺絶対皆には バラしませんから 安心してください」 「おい勝手な設定を作るんじゃないっ! 士官学校の予餞会で 無理やり着せられたんだっ」 「…ヒューズ中佐殿の発案で?」 「よくわかったな …まあ祭り騒ぎが好きなアイツの性格を 知っていればそれぐらいは読めるか…あらかじめ言っておくが 写真を見せろとか言っても無駄だぞ 全部廃棄させたからな」 「……」 ――絶対 それ残ってると思いますけど というハボックの言葉は、後から交渉しようと企む身として、 声に出さずにおかれた。 「…で仮に性格が違うとすればお前が想像していたのは どんな世界だ?」 唐突に戻った本題に、ハボックは「えへっ」と曖昧に笑う。 「その顔だとロクな想像をしていなさそうだな 怒らんから 言ってみろ」 「いやいや まあ願望コミで…大佐が甘えんぼで俺にいつも ピッタリくっついて離れない寂しんぼで俺に夢中な せ・か・い …大佐が言えって言ったんスよ そうも心底嫌そうな顔しなく てもいいでしょう」 「お前は気持ち悪くないのか そんな私は」 「両手広げてウェルカムしますよ 気持ち悪いなんてそんな とんでもないっ!」 「…一人勤務で帰ってきたら『お帰りなさいっ寂しかった』 と抱きついてきて」 「そうそう」 「どこかへ出かけようとすると『どこ行くの?一緒に連れてって くれないの?』って悲しげに見詰めてきて」 「くはァ それ萌えるっスねぇ」 「…ハボックお前犬でも飼ってろ 私はそんな気色悪い 私はイヤだ 出会ったりしたら鳥肌が立ちそうだ」 ひらひらと眼前で掌を振るロイの眉間の皺は険しく、現在の 自分の想像だけでも鳥肌がたっているのか、無意識に腕を さすっていた。 「そんな!俺的には超OKなのに」 「ならば攻める観点を変えてやろう…私がそんな性格だったら お前と出会った頃には 鬱陶しい信奉者が山と群がっていそう だとは思わんか?」 「う…確かに…」 若くてエリートで童顔で、その性格だったら多分外面も良く、 相手に会えないと寂しいと面と向かって呟くロイ・マスタング。 ハボックとしては大いに歓迎だが、確かにそのロイであれば 結ばれるまでの道のりは、今以上に深く険しい困難があり、かつ 手強い妨害者がこれでもかと罠を張って待ち構えていそうだ。 「それにそんなに私が寂しがりだったとしたら お前に出会う 前にとっくに恋人作っているなり妻を娶るなりしていただろうな」 トドメ、とばかりにロイが言い添えた。 「えー…スミマセン前言撤回 俺はこの世界で今の性格の 大佐に出会えた現実に感謝しています」 目を閉じたハボックが、宣誓をするように掌を胸の前で掲げ るのに、ロイがくすりと笑いを洩らした。 「私はずっと今のままのお前が好きだ お前が上司だったり 今以上に強引な性格だったりしても楽しいだろうとは思うが …同じ思いを抱けるかの確信は無いから この世界で出会えた 事実に感謝をすべきなんだろうな…おい何を脱力しているんだ 失礼な奴め」 「脱力じゃなくて 嬉しくて感動しているんです…これだから タラシって怖いよなって思いながらも…口元が緩んでしょうがない」 喜びで表情が歪まぬよう、自制するハボックを見るロイの 視線は『事実を言ったつもりでタラシたつもりは毛頭無い』と 告げていた。 ――やっぱ大佐って、無意識に男女問わず誑かしまくり? ロイの言葉でたまらなく幸せを貰った代わり、その分苦労の 絶えないハボックは、目の前の天然人物にその事実を指摘 すべきかどうか、また新たな悩みが増えるのであった *********************** 私は甘えんぼで一人だと淋しくて死んじゃうロイは嫌です |