| 人が罵倒や喧嘩の際、咄嗟に口から出てくる言葉は本人が一番 気にしていることだそうだ。 なにかでその知識を得た俺は、それ以来大佐との私生活での 衝突が、ちょっと楽しみなのだから我ながら少々趣味が悪いかも しれない。 ちなみに私生活、と限定言葉が付随するのは仕事に関しての罵倒 であれば、大佐は実に冷静にかつ最も言われたくない事を見極めた うえで、そこを一言で突いてくるからだ。 必要以上の罵りはしない。自分の面子を損なわれたと、他者への 晒し目的とした長々とした説教もしない。 ただ一言、顔を合わせてくれないまま「…馬鹿をやったな」とだけ 言われ、向こうへ行けと手を翳された時は、自分がもう大佐に不要 と思われたんじゃないかとか、いらないと切り捨てられたんじゃない だろうかと謹慎中の二日間、この俺が飯が喉を通らないぐらい 胃が痛かった。 …その二日間、大佐が少しでも俺への風当たりを弱くしておこうと あらゆる手段を使って、逃がしてしまったテログループの在り処を 探してくれていたと知ったのは、それから随分たってからだった。 そんな時こそ俺に恩を着せて好き勝手言ったり、無茶な残業押し 付けてきたりしても当然な筈なのに、…こういう時は何も言って こないんだから、普段どんな無理言われても大佐に随いていきた くなる。 大佐を大好きになって、守りたいって気持ちとは別の感情で、男心 に惚れるってのはこんな気持ちかと教えてくれた。 完璧とまでは言わないが、外部に隙を見せず凛としたその姿は大佐 の内面の輝きを、自然洩れさせて異性同性問わずを魅了する。 「…でさぁ、そんな大佐が俺とちょっと食べ物のスキキライレベル でぶつかった時『どうせ私は可愛くないからなっ!』って言ってくるん だぜ これってつまりは自分が俺に可愛くないと思われてるんじゃ ないかって気にしてるってことだろ……もうそう思うとすっげえ可愛く てさ思わずニヤケちゃって…」 昨夜の喧嘩の後、何がおかしいと腹立たしそうに叫んだロイについ 「大佐があんまりにもかわいくて」と答えたら、拳が直後飛んできて、 「甘いっスよ体術だけなら俺の方が上です」と余裕をかまして衝突を 避けたら「甘いっ!」とマグカップが飛んできたのだと、幸せそうに 額をを抑えるハボックの惚気を聞かされるブレダは、聞き流しつつ 内心 たまにコイツの趣味って解らんなとタンコブの理由を聞いたこと を、後悔しながらシチューを口元へと運ぶのだった。 |