アイコラ

「さてハボック少尉 ここからが本題なのだが私は君が昨日 艶やか
な女性たちの半裸体が満載の雑誌を 読みふけっているのを見たの
だが あれは何なのかね詳しく話してくれないか」
「いやだなぁ 大佐あれはただのグラビアじゃないですかしかも昼休み
でしょ …ははぁなんか俺の弱みを狙って言葉責め羞恥プレイ狙って
るんスか?」
 ニヤリと笑って、煙草の煙をフゥーッと洩らしたハボックに、ロイが
顔を紅くし反論をした。

「だ、誰が言葉……な、何が羞恥だその厚かましいふてぶてしい表情
を晒しておきながら図々しい!」
「…大佐ー声でっけーっスよー マスタング大佐司令室から言葉責め
とか羞恥プレイなんて声が洩れてきてるなんて噂になったら大変じゃ
ないっスかね」
「……わ、私はそんな単語を口にしておらんだろう!……ゴホッ だが
まあ……声は慎むようにしよう あー今度こそ本題に入るぞ ハボック
少尉の主張はもっともだ だが提出すべき書類を出していない者に
昼休みを主張する権利などないと思わんかね?しかも手にしていた
物は 職場で読むに値する雑誌とは言いがたいと思うのだが」
 一人で紅くなったり、咳払いをしてごまかそうとしているロイを見た
ハボックは、口端を愉快そうに上げながら肩を竦めた。
「あれはたまたま 興味ある舞台俳優が載ってたからっスよ」
「ふむ そうかコレはハボックのお気に入りだったのか」
 
 ロイの手先にあるのは、昨日ハボックが手にしていた雑誌だった。
…寒い。まだ微笑みの表情を崩そうとしない当事者二人以外はその
凍った空間を、遠巻きにするばかりだ。
 雑誌をパサパサと振って掲げるロイは、作り笑いのまま続けた。
「まぁ 上司が嫌味を言われる羽目になるほど入れ込んでいる相手
が載っている雑誌を取り上げるほど 私も悪魔ではないよ ほら
返してやろう」

 ハボックにとっては まあ好みではあるけれど、たいして入れ込んで
いるわけでなく、本当に興味本位から手にしていただけの雑誌で
あったが、投げ渡されれば受け止めざるをえない。
「ハァ どうも………って何スかこれっ!?」
 ペラペラとページをめくっていたハボックが、途中で盛大に喚くの
を聞き、さすがにそれまで流していた他の者たちも顔を上げた。
「ちょっ…これっ…みんな 大佐の顔になってるんですけどっ!?」
 ハボックが見開きをかざして主張するそのページには、
胸を強調するポーズをとったナイズバディの…ロイがいた。

「…!?」
 一同が問いかける目線で注視するのを、ロイが得意げに笑い返す。
「ハッハッハッ どうだハボック!仕事をサボってそんなものを
読んでいた嫌がらせに 全ページ私の顔に練成してやったぞ!」
「………何考えてるんスか」

 呆れ顔のハボックは、それでも雑誌を放そうとしない。それをお気に
入りをとんでもないものに練成された故だろうと判断したロイは、ハボ
ックの肩を軽く叩き、最高級の笑顔で告げた。
「なに、1時間以内で書類を完成させたら元に戻してやるぞ」
「え イヤですよ」
「…なに?」
「大丈夫です ボインの大佐も俺の中で滅茶苦茶許容範囲でした
っつーかむしろ コッチの方が元の写真より好み?」
「ぎ、疑問系にするな それは勘違いだっ!ボインな私とは妙な
枕言葉を付けて寝言をほざくんじゃないっ!」
「いやいや ほーら変な合成写真と違ってちゃんと大佐のボンキュボン
が違和感なく収まってて 大丈夫!!俺じゃなくてもこれ大方の男なら
かなりイけますよ うっわホラ このページなんて大佐超イロッペー」
「うっうわっ 私にそんなページ見せるな!!」


「…なにやってるんでしょうねぇ あの二人」
「いつものジャレ合いだろ 関わるとバカみるぞ」
「どう考えても あんな雑誌が残る事にデメリットは大佐の方が大きい
と思うんですが」
「……あの人 たまーに抜け……天然だからな」

 言葉を選んだブレダの配慮も、あまり意味はない。
なお、ハボックが死守したロイ(の顔したナイスバディ女優)のグラビア
雑誌は、今もハボックのベッドの下で宝物として眠っている。
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 考え無しのロイのお話