| 久しぶりに集まる同期の飲み会は、既にそれなりの能力に応じて 階級差はあったが、無礼講ということで堅苦しさは微塵もない。 むしろ日頃上官クラスに当たる存在となった者の頭を、ぺちぺちと できるチャンスなどそうはないと、額を叩かれる者や首根っこに腕を 巻かれ絡まれてる者と様々な人間関係を露わにし、借りきった広い 酒場のそれぞれで盛り上がっていた。 安易に酔うには、酒に強すぎたハボックとブレダも同期の中では 割合出世している方にあたり、元々人当たりの良い性格であった分、 士官学校時代の同部屋であった者や同じ隊であったもの達が集い、 周囲には自然二人を囲む輪ができている。 職場仲間での飲み会で、つまみ話になるのは大抵無能な上司と 使えない部下への愚痴であるというのは軍部という場所でも変わらず 自然、話の流れはそちらへ向いた。 「…やっぱマスタング大佐って大変だろ?」 興味津々と口火を切ったのは独りだが、やはり若いエリート国家錬金 術師への周囲の関心は高いらしく、皆が揃ってハボックとブレダの口が 開くのを注目していた。 「大変なのは否定しないが…働き甲斐はあるぜ?」 「まあな 結果がよければ多少のポカは見逃してくれるし 多少の暴言 吐いてもこっちに理があれば それ以上咎めてこないし」 少し首を傾げ、答えたハボックにブレダも同意した。 「そうそう 俺が暴走して立入禁止区域でテロリスト待ち構えていたの が見つかった時の説教は『規則違反を承知で行うなら 徹底的に上司 にばれないようにしてやれバカモノ』だったし 『どうしても上に隠し通せ ないが実行できそうな最善の案がある時は私に話せ…何とか抜け道を 探してやる ただし責任はお前だ』だったかな…」 爽快そうに笑うハボックと対称的に、ブレダの眉根が寄せられた。 「…あん時…説教の後の割に お前が随分楽しげだと思ったら大佐は そんな事言ってたのか…?」 「そ 時と場合に因っちゃ計算より 俺の本能の方が正解を出すことも あるだろうからってさ 見る目あるよな大佐って」 ――いや、それ誉めてないから。 周囲の内心のツッコミも、満面の笑みでグラスを仰ぐハボックには多分 まったく届いていない。 「へえ…思ってたよりは物分りいい上司だな 羨ましいぜ 俺んトコの なんて正規ルートの別方法もあるんじゃねーかって進言しても貴様如き 下っ端が口に出さんでいいだもんな」 「あー解る解る 現場は俺らの方が知ってるって場所でもそうなクセに 失敗したらひたすら俺らのせいだし」 相憐れむとばかり、上司への不満を口にしては互いに頷きあう者達を 尻目に、ハボックは変わらず上機嫌だ。 「でもよ 俺らの前では『〜したまえ』とか言ってスカした口調でたまに 見せる笑顔もすっげぇ胡散臭いじゃん マスタング大佐って」 本音かつ風評悪いロイへの評価を含めた言葉に、ハボックは大振りで とんでもないと掌を振った。 横でジョッキを傾けていたブレダが、眉間を指で支え 「あー…スイッチ入ったなこりゃ」 と小さく呟いたのは、誰の耳にも届いていない。 |