闇遊戯


 意識はあるのに、何一つ身動きが取れない。
皮膚に上部から伝わる暖かさは柔らかく、人工的なものではない自然の
陽光のようだが、ロイが瞳を凝らしても周囲は暗闇のままだった。
「……うっ……」
喉からようやく洩れた声は、ロイがが発しようとしていた言葉を紡がず
ただ小さな呻きしか出せなかった。

「…大佐 …気ィつきました…?」
 闇から伸びた何かが、ロイの頬のラインを辿るように撫でた。
声がなければ、その触れたことでした存在を確認できない物に
怯えたかも知れないが、問いかけてきたのは常に聞きなれている
部下の声であったので、ピクリ、と体を動かすだけで済む。

確かめる、というにはもっと別の意味合いが込められているハボックの
探る指の動きは、睦言を交わす時間でもない限り、現状にふさわしい
ものではない。
 だが、その輪郭に沿って動いていた指先が、首筋を通り耳裏の
うなじへと降りていくと、ロイの感情に反して与えられた刺激に体が過剰に
反応し、かすれた吐息が洩れた。
「……っあ…く……」

――声が、出ない。
 皮膚の薄い箇所や、ロイが体を震わせる箇所を狙ってくすぐる指
に、抗議しようと唇を開いても、喉から出てくるのは喘ぎにも聞こえ
かねない、掠れた声。
「う……ぁ…」
「ああ…やっぱ声も出ないスか」
 首後ろを撫でていた掌が外され、そのまま指先が唇の形を辿り
強引に太い指先が、ロイの口腔へと入り込み舌先に乗せられた。
異物の感触に、咽せて咳き込むと指は舌から離れたが、粘膜の
様子を調べでもするかのように、ひき続き口の中を蹂躙する。
「んっ……」
 乾いた皮膚が、水分を奪っていくのが気持ち悪くて拒絶をしたい
のに、声どころか首を振っての抗議も不可能で、鼻奥で紡がれる
呻きだけが、ロイのやっとの抵抗だ。

「…動かないでしょ?」
 耳元で囁く、少し笑いを含んだハボックの声は、何故だか同じ位の
瞋恚を秘めていそうで、危険信号を発していた。
 何が、起きているのだろう。ロイが唯一自分で動かせる目蓋を開いても、
周囲は漆黒のままでハボックの姿が追えない。
ハボックの声は、小声で鼓膜を震わせるほど近くに居るというのに。

「アンタ 薬盛られたんスよ 体動かなくなって、目ェ見えなくなって
声も出せなくなって 聴覚と触感だけが残されるヤバいクスリ…
ほら 体動かせないけどこの感触は伝わってるでしょう
安心してください 今いるのは大佐の自分のベッドの上ですから」
 静かなハボックの言葉は、どこかに嘲弄を含んでいて肌を擽る
指がそのまま襟元から、胸元から入り込んだ。
 まだ柔らかい胸先の尖りを、指の股で捏ねるようにハボックの指が
挟み、周囲のわずかな肉に従ったふくらみを揉む。
 ほんの僅かな動作であったのに、背筋に走った信じられないほどの
快楽の波。抗弁を紡ごうとするロイの意図に反し、感触でしか世界と
繋がっていられない今の自分の体は、甘い嬌声を洩らした。

「あっ…んぅっ……!」
「フフ…かわいい声っスね あのね大佐…今の自分理解できて
ないでしょうけど 現在太陽燦々と照っている真昼なんです
明るい光の中その少し潤んでる目も 真っ白な肌も何もかも丸見えで
すっげぇ…男を興奮させてくれますね」
 言いながら這い回るハボックの掌は、執拗なまでに胸を弄り回しロイの
胸先に硬さを与えるまで止まることがなかった。
 道化を含んだハボックの声色に、抗言を許さぬ怒りが今でははっきりと
露わになっている。ぷくりと勃ちあがった乳首の小さな穴に、ハボックが
ツメをねじ込むように刺激を与え、敏感な箇所を嬲り続けた。

「あ………」
「何でって顔ですね 大佐に使われたのは人攫いの組織が性奴隷
を仕立て上げるのに使ってたヤバいやつなんスよ…俺が行くからアンタは
来るなってあれほど言っといたのに」
 言いながら、乳首をきゅっと摘んだハボックはびくりと微かに
仰け反った。

「抵抗できない・感度はそのまま…いやむしろ媚薬成分も含まれてる
っぽいから普通より感じやすくなってるのかもしれないっスね・視力は
奪って 喘ぎだけは出せる喉…最悪なことに男の精を体に突っ込まれ
ない限り、クスリの効き目は切れない…しかも放っておけば三日で
色狂いの廃人完成……奴らのアジトに乗り込んで一番に発見したのが
俺だったから良かったものの……アンタ他の奴らが見つけてたらどう
するんです!?治療法探す為に有無言わさず軍の秘密裏の病院…ヘタ
すりゃ実験施設に送られて…どんな目にあってたか……」

 容赦のない唇が、無理やり重ねられ息を奪う。
剥き出しにされた肩口の薄い箇所を、ハボックが血が滲むまで噛み付いて
所有の痕を刻んだ。
 ロイの仰け反った背と、必死で押し殺す喘ぎにハボックの唇の片端が
上げられ、相手に気付かれぬよう苦い笑いを形どる。
 冷静で居丈高な上司の、ゆっくりと理性が溶かされていく姿は被虐心を
煽るばかりで歯止めがききそうに無い。
 
――何の薬を使ったか吐かせた後、その下っ端も大佐を抱いてやろうと
待ち構えていたクソ野郎も、なんの迷いもなく、撃ち殺した。
軍人としての怒りではなく、個人の腹立ちそのままに。

「…俺が今までどれだけ我慢してたか 気付いてなかったでしょ大佐?
幸いアンタが壊れるぐらいの刺激を与えても 今なら薬のおかげで
慰みにしか感じられないようですし…どんだけ危険なモン使われたか
俺がじっくり教えてあげますよ」

 漆黒の闇から響く、激情と一途な思いを込めた声。
ロイのあちこちをまさぐる動きは緩慢で、ハボックの甘い責め苦はまだ
はじめられたばかりだった。

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設定はエロっぽいのにエロまでいきませんでした(笑)