金の斧銀の斧/ハボ


「子供の御伽噺だろ?正直者が得をしましたって」
「そうそう それそれ」
 ハボックとブレダの酔い交じりの会話は、童話『金の斧
銀の斧』 正直者のきこりがうっかり池に、斧を落としてしまったら
湖の精が「貴方の落としたのは…」と尋ねてくる正直者は得を
するんだよという啓蒙的お話だ。

「で それが何か?」
「いやそこに人間落としたら どうなるのかというのを
考えていたら色々な考えが出てきて昨日眠れなかったんだよ」
「…なんだそりゃ」
呆れたようなブレダの言葉に、酔いで目元をほんのり紅くしている
ハボックがへへと照れ笑いを返す。

「えーまあ例えば何だけど …ホントに例えばだぞ
ちょっと意地っ張りで…そのボディーコミュニケーションをあまり
好まないお堅い考えで冷たい素振りを見せてくる恋人が
池に落ちたらどうなるのかなーとか」
「…なんだそりゃ」
「いやだから こういう相手が落ちたら もんのすごくエロくて積極
的でお誘いしてくるタイプと初々しくて可愛くて俺にメロメロで
従順なタイプの恋人二人が出てきて 湖の精は『どちらが貴方の
落とした恋人ですか?』とか聞いてきてくれないかなって」

 馬鹿馬鹿しいと思いつつも、積極エロと初々しい従順というのは
男にとって一つの浪漫であって、ブレダも酔いついでにその
思考に乗ってみる。
「…で お前ならどっちを選ぶんだ?」
「そこなんだよなあ…大……いや俺の恋人が積極的エロエロに
なったりなんかしたら…もう超イロッポイと思うんだよ 濡れたような
目で挑発の視線送られたりしたら俺以外の男も絶対メロメロになって
ちょっと目を離すとうっかり他の奴に手を出されちゃわないかとか
心配だし」
「へっ 言ってろ…っつーかお前の今の彼女そんなに美人なのか?」

「なんていうか…普段お堅い感じで張り詰めてるから ちょっと
それが崩れるとこう下半身にクるっつー感じ?」
「…俺に同意型で尋ねるなよ まぁ美人女教師タイプって雰囲気か」
「あー教師!そんなシチュエーションも萌えるなぁ
うんそういう職業も似合いそうかも……でそれはさておき
もう一方の可愛いバージョンを選んだら 白い肌火照らせて縋る
ような目で俺を見てきそうだろ?」
「…だから同意型で尋ねるなと言ってるだろうが 相手をしらねぇ
のに想像つかねえって」
「ん…ああそうか いやその…ついお前が知ってる相手という
前提で話しててすまん まあそういう相手なんだよ
…で、俺恋人のそんな姿 見ちゃったら俺仕事なんて出れねぇよ
もう二十四時間くっついて俺が支えてないとって思っちゃいそうだし」

 手元の何杯めかのウィスキーを飲み干したハボックは、真剣な
様子で頭を抱えた後、勘案尽きたとばかり勢いよく顔を上げブレダを
見遣った。
「…なあブレダ…俺はどっちを選べば良いかな」

 酔っ払いの思考とはとりとめないものだが、何故仮定の話で
そこまでひたむきに悩むのか、ブレダにとっては謎であった。
 が、本来明晰な頭脳の持ち主である彼にとっては解決の道は
容易で、一言で切り捨てるべく答えるべきか悩んだ挙句
『解決してやるから二皿奢れ』と持ちかけた。

「あー…いいぜ 俺の悩みを解決してくれるなら」
酔っ払いなりの真剣さで悩むハボックは、から揚げとシュリンプ
カクテルを追加し、ブレダの前に並べた。

「じゃあ ハボックお前の悩みを解消してやろう
…お前はどっちも手に入れられないぞ」
「………何でだよっ!?」
「お前なあ…湖の精霊は『正直者』に御褒美として金と銀の斧を
くれるんだぜ?…金と銀を目の前にして『どっちにしよう』なんて
嘘つきはどっちも手に入れられねぇよ」
「…………しまったぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」 

 その夜、酔っ払って帰ったハボックに、エロ大佐と従順大佐に
迷った俺を許してくださいーーーッと土下座されたロイは、何が
起こったのか理解できず、ただひたすら頭を下げるハボックを
困った視線で見つめていた。


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あほなお話でごめんなさい ハボを落としたらバージョンだとどうなるかな(笑)