金の斧銀の斧/ロイ


帰宅するなり、酔っ払って土下座をしてきたハボックの行動が
まったく理解できぬロイは、確か夕べはブレダと呑んでいたはず
だと、事情を伺うべくこっそり個人執務室へと当人を呼び出した。

ハボックがほぼ連日、ロイの私邸に入り浸っているとは公表を
していないし、まして一線を越えてしまった中であるという事実は
けして洩らさぬよう厳命している為、率直に事情を話す訳にはいか
ないロイは、酔っ払ったハボックが昨夜自分の家に来て、ひたすら
謝罪をしていたのだがどういう訳だろうかと、情報を曖昧にしたまま
ブレダに問いかける。

「あーすいません そこまで酔ってるとは思わなかったからアイツ
を家まで送らなかったんですけど …彼女の家と大佐の家をつい
慣れた道とかで間違えたんですかね」
「…彼女?」
「ハボックのヤツ珍しく自慢してこないから 俺も気付かなかった
んですけど どうやら新しい恋人ができたらしいんですよ」

気持ち声を潜めるブレダに、そうかいや実は新しい恋人というのは
実は私だとも言えぬロイが、付合い上己も声を潜め続きを促した。

「…普通に飲んでて 途中バカ話をしているうちに童話の話に
なった流れなんですよ…大佐も知ってますよね『金の斧銀の斧』」
 知ってはいるが、それがどうして土下座に繋がるのかがわから
ないロイは、頷くだけで返事を留めておく。

「…でハボの奴が 自分の恋人が池に落ちちゃって『エロ妖艶系』
とか『従順可愛い系』とかになったりしたら俺はどっちを選べば
いいんだと本気で悩みはじめまして」
「…バカの思考は理解しがたいな」
「まあ概ね同意ですけど それがハボックですから そこで『悩んで
本物じゃないのに俺が落としたのはこれだとウソをつくような奴は
なにも得られない』――ってのが童話のオチじゃなかったかと
突っ込みましたら途端 罪悪感に目覚めたらしく…」

「…で…その、…あー私を…彼女と間違えて…土下座か」
腹を立てるのも馬鹿馬鹿しいと、脱力して背もたれにもたれ上半身
を預けたロイに、ブレダもそのまま仕事に戻る心持ちになれぬのか、
軽口を続けた。

「大佐ならどうします?」
「どうするとは何がだ」
「大佐の恋人が池に落ちて違うタイプに…えーっと今お付き合いしてる
相手はどんなタイプですか」
「…基本素直 紙一重でバカがつく正直さで色んな意味で人懐こい」
「…大佐の今までのお相手とは違う雰囲気ですね」
「私もまさか しばらく一緒にいたけれどその相手と恋人になるなんて
考えたこともなかった相手だよ」

少し笑ったそのロイの顔は、常のどこか作ったような笑みでなく くす
ぐったそうでどこか無防備だった。
珍しい反応だとブレダが意外に思いつつ、今回のお相手は恒例の軽い
お付き合いといったものではないのかと、納得し説明を重ねた。

「へえ…じゃあ友達とか幼馴染みたいな感じ…からの交際ですか?
まあそういうタイプが ちょっと違う魅力持ちでバージョンアップしたら
どうしますの質問ですよ」
「どうしますと言われても…具体的に想像しにくい」
「大佐のお話の子が明るい天真爛漫なんですよね…その娘が池に
落ちて、精霊さん登場 えーっと違った魅力持ち…だとしたら妖しい
雰囲気の妖艶タイプと強引押せ押せだけじゃなく駆け引きも心得た
ちょっと狡猾肉弾タイプ?を出してきて『貴方の恋人はどちらですか』」

 ブレダの口から出た言葉で、ロイが咄嗟に連想したものは湖の
精霊が、左に全身黒尽くめのハボック――ジャクリーンとも呼ぶ――
を、そして右手に、成長した髭姿のニヤリと笑うハボックを差し出す姿。
『貴方の落としたのはどちらの方ですか』
 ――…一人でも手に追えないのに、あんなの二人もいらない。いや
どれも素敵だと思うし個人的感情を廃しても、イケてる男だとは思うが
…まとめてだなんて、扱いが面倒すぎる

「…心の底から、湖の精霊に辞退を申し上げる」
 真剣な面持ちになったロイに、おやどうやら大佐殿今回のお相手は
性格が変ったりしたらイヤだと思うほど珍しく本気なのかと部下は、
感心し受け止めた
だがそこで素直に祝福はせず、冗談めかしてロイへととどめを刺す
言葉を足してしまうのは、日頃の仲の良い上司部下だからできる行為
だろうとブレダはにこやかに続ける

「残念ながら大佐 逆にその答えを言ったら精霊さんは落とした相手
+その二人を付けて正直者にはセットで合計三人進呈してくれちゃい
ますよ 童話だって落とした斧にプラスして金の斧と銀の斧がくっつい
てきたんですから」

「………いやだっ!いるか あんなのが二人+本人だと!?確かに
それぞれ魅力はあるだろうが………無理だっ …私の身が持たんっ
無理無理無理だっ 冗談じゃないっ!!!」

いささか青ざめて真剣な表情で叫ぶロイに、純朴元気系の女の子を
想像していたブレダは 惚気に近い事言っといてそんな心底拒否って
なんでだ、との謎が生まれるのだが小刻みに震えるロイ本人には、
とても聞きだせそうにもなく、現状首を傾げるしかなかった。



********************
あほなお話でごめんなさい どうなるかとの自己完結で書いてみた
ハボ+ヒゲ+ジャクリーン…?ロイ腹上死亡フラグ…(笑)