| 一般の勤め人と異なり、軍人はかなりの激務ではあるが申請や周囲 との調整しだいで、連続した休みを取ることも可能だ。 遠征地での演習の場合、土日を含めての活動や移動時間も出勤扱い となる為、休みの計算に無頓着な者や計算をしてまとめての休暇を狙 う者は、いつ何時緊急出費があるやも知れぬ国家軍用費をなるべく節約 しておきたい事務課から休日出勤手当てを貰うより代休を取れと、お達 しがくれば、それに従う。 ハボックの場合、土日の勤務を他者と代わってやる事や日頃の周囲の 同僚や部下との関係が良好的であること…そして友人であるブレダが、 ロイの事を案じているのに乗じて再度の長期休暇をとる企みを実施する のに、障害はほぼなかったと言ってよい。 ――俺が大佐にしてることを知ったら、ブレダは軽蔑するだろうけどな 吹く風は冷たいを通り越して痛いぐらいだし、目印である木々も油断を すれば、枯れていたりして見失いそうになる。こんな場所に希望者がいる からといって駐屯所を作った司令部は、何を考えているんだと 苦笑する ハボックは、真白の銀世界の中誰も来ないのはほぼ間違えないというの にそれでも見回り時間であると、外に立ち尽くしている黒コート姿を認め 笑いの形に唇の両端を上げた。 「この前ほど 久しぶりじゃないっスね」 ロイのよく知る口調で、ロイの思い出にある笑顔で微笑むハボックを見 上げたマスタング伍長は、声にならぬ声で『なぜ』と呟いた。 「この前のでもう会わなくて済むと思った?…甘いんだよ」 もう巡回警備の時間は終了の筈だと、ロイの二の腕を掴んだハボックは そのまま室内へと引きずり込む。 「なんでって顔してますね …簡単 アンタに俺を忘れさせないためだよ」 言いながらロイを壁へと叩き付けたハボックは、片腕をねじり上げ壁へ 縫いとめると、もう片方の手で器用に煙草を取り出し火をつけた。 フゥーッと深呼吸のように吐き出した煙を、眼前に浴びせられロイが 咳き込む。 「相変わらず ケムリ苦手なんだな」 笑いながらもう一度浴びせられた煙で、ロイの眼帯に覆われていない方 の瞳に生理的な涙が浮かんだ。 「さて…どっちがイイ?」 唐突なハボックの選択を迫る疑問詞に、ロイはその意味がつかめず 細められたハボックの蒼い目を見詰め返した。 「無理矢理と可愛がられるのどっちが好みかって聞いてるんだよ」 「なに…を…言って……」 「言っただろこの前の別れの時 アンタが部下であった俺を否定して 自分だけの世界に篭もるなら 俺はどんな手使ってもアンタを俺の下に 従えてやるって」 手首を掴んだ力が、いっそう強くなりロイの体がピクリと震える。 獰悪に細められた目と、形だけの笑みを作った唇がもう一度同じ質問を 繰り返した。 「無理矢理がいい? 可愛がって欲しいならそう言えよ」 「…あ……少尉殿 ふざけ……」 「なんだ …無理矢理がご希望か アンタやっぱマゾだよな」 薄く笑ったハボックが力任せに布を掴んだ掌を下ろせば、悲鳴にも似た 音を立てて、コートと上着のボタンや留め金は弾け跳んだ。 白い肌の上の、キッチリとした軍服と黒いコートが乱れた姿というのは ひどく支配欲をそそりハボックは挑発的に腰を押し付けた。 「無理矢理がいいんなら慣らす必要もねえよな」 高圧的に耳元で喋るハボックの声に、以前の痛みを思い出したロイが 小さく息を飲み首を振った。 「いや…で…す…少尉殿…」 「イヤ? 逆らえる立場なつもりな訳?」 嘲りの声音で、顎を掬われたロイは首を振り続け体を震わせた。咎め るかのように頚動脈の辺りを、鍛えられた指が圧迫をする。 「ゆる…して…下さい 逆らうつもりでは……」 「じゃあ言えよ 『この私めを可愛がってください ハボック少尉殿』って」 荒々しく下りてきた唇が、ロイの意識を霞めるまで貪った。 呼吸が切れそうになる寸前、透明な糸を引いてようやく口接けから解放 されたロイにハボックはうっすら笑って繰り返した。 「言え 二度も言わせんな」 無理矢理がイヤなのは本音だが、いつのまにかロイ自身がハボックを 望むことになる台詞に、混乱をしたロイは身を竦ませ呆然と固まる。 だが、逃れようともがくにも既にその身は壁に縫いとめられていた。 「あ…かわ…い…がって…くださ…い……」 絞るようにようやく出した、ロイの声にハボックは煙草を壁へと押し付け 消し捨てた。 「聞き分けの良い部下は可愛がってやるよ…その前に逆らったお仕置き もするけどな」 焦点の合わぬ目で、ハボックを見返すロイの眸から涙が一滴伝う。 熱く、尖った舌先でそれを拭うハボックはそのままその舌を滑らせロイの 白いうなじへと唇を落とし、所有の痕を残すべく歯を立て齧りついた。 ********************* ジャク×伍長を書いたら西森様が絵をご褒美に下さるとのお言葉を賜り、一気に小説を書いたら 素敵絵を賜り、そしてその素敵絵にたまらずまた話を練成… ハボの!ハボの目線とか強いはず なのに流されちゃってる伍長の顔とかもうハァハァですよ!! |