| いかなるときにも女性への礼儀を忘れない、ロイがワゴン一杯 の花と共に道端に残されたのが五分前。 金額は渡すけれど、花は辞退したいと申し出たのだが相手は自分 は情報屋でなく、あくまでこれはアームストロング家の為の活動 で花を売ってこその商売のオマケに話せるのだと出て来られては それ以上の固辞も無駄のようだった。 笑顔で「それでは」と一見気のいいおばちゃん風女性と挨拶をし 別れたが、実際問題この花の山をどうすればいいものか、途方に 暮れているのが現状だ。 「…とりあえず 持って帰るとして…」 ここで捨てるという選択肢が出てこない辺りが、間違った使い方 を一杯するくせに共感をされるロイの金銭感覚かもしれない。 中尉に電話をしても、まだ余る花の行く末を考えたロイは一番 まっとうな利用道を思いつき、一人頷いた。 コンッと響いたノックは、なぜか下の方から聞こえたような気が して、ハボックは耳を澄ませた。だが、もう一度のノック音はなく 扉がそのまま開かれそこに立っていたのは、怪奇花人間。 薄暗い廊下を背に、顔を埋める量の花を抱え両腕にぶら下がった 籠にもこれでもかの鮮やかな花、花、花。 両手が塞がった状態だったので、ノックの代わりに足で蹴ったの だろうというハボックの見解は、多分間違っていない。 「…花屋いりません不要です お断り」 「見舞いだ」 花の隙間から見える黒コートと、体形でロイだと判断したハボ ックが告げた言葉をものとせず、入り込んだロイは隣の空ベッド に両手で抱えていた花をぶち撒けた。 「あー…わさわさして邪魔だった」 思いっきり本音で空になった手が爽快と振るロイに、一応見舞 いという名目なら最後まで通せよという視線をハボックが送るが それに負けるようでは軍高官など務まらない。 「殺風景な部屋に 彩やかさが加わったな、うん」 「…なんスかこの花の山はついでに処理しきれないからって俺ン所 に寄って押し付けてやろうって魂胆も 少しは隠して下さいよ」 「何を言うのだね 私はお前の為に…ほら、似合うぞ」 ピンクの大ぶりなガーベラを手にとって、ハボックの耳上に差 したロイがニッコリ笑った。 「ついでだから ここと…ここにも お前案外花が似合うな」 頭の上にも、襟元にも、胸元にもとガーベラを次々とハボックに 飾り立てロイは上機嫌にクスクス笑みを洩らす。 「…楽しそうっスね」 「いやいや 花に囲まれて眠るスリーピングビューティーなお前 も良いじゃないか 知っているか?ピンクのガーベラの花言葉は 崇高美…私のようで身近にあると思えば光栄だろう?」 「自分で言いますか もー好きにしてください …そっちの籠のも 俺用見舞いなんでしょ?こっちにくださいよ」 籠を受け取ったハボックは、手持ち無沙汰を慰めるように花を とりだし細い茎の植物を選んでは、それを器用に編み始めた。 ハボックを一通り装飾した後、今度はボタン穴一つ一つにまで、 小振りのマーガレットを差込んでこようとしたロイの腕を、ハボッ クが掴み引き寄せた。 「なんだ?」 「俺が眠り姫なら 王子役お願いしますよ」 ひょい、と頭に載せられたのは花冠。 中央に紅いバラが差し込まれ、白い小さな花が連なったそれはロイ の黒髪に栄え、良く似合っていた。 「私は女性を性格によって差別区別をするつもりはないが ただ 大人しく眠って待っているだけの女性はあまり好みではないな」 手に持ったままのマーガレットに軽く口接けたロイは、その花を そのままハボックの唇に押し当てた。 「どちらかといえば 両手に拳銃もしくはマシンガン片手に『お待たせ しました大佐っ!』と危機に陥った時助けに来てくれる姫を望みたい …追いついて来たまえ ハボック」 「…大佐の脳裏で ドレス姿の俺がマシンガンぶっ放している図が 浮かんでないことを祈りますよ 俺も大人しく待ってるだけは辛抱 できないタイプですので…必ず、アンタに追いつきます」 掴んだままだったロイの腕を、ぐいと引き寄せたハボックはその まま唇を重ねさせた。 「王子の目醒めのキス 前払い頂きました …それから…」 自分の頭上に有るガーベラを一本引き抜いたハボックは、それをそ のままロイの耳上に飾った。 「うん やっぱ俺より大佐の方が花似合ってるっス」 一瞬呆気にとられた顔をしていたロイは、何か言いたげに何度か 口を開閉させた後、「待っているからな…必ず 来い」と頬を少し紅潮 させて微笑みを返した。 *************************** 先日の絵チャのお題で「花とハボック」とsaki様の花塗れハボがかわいくて妄想話連想 |