| 「少尉のあの輝かんばかりの笑顔を ここの所拝めていない…」 と肩を落とすのは『ハボック少尉についていき隊』ことハボック親衛隊。 大柄かつ筋肉質なガタイを持つマチョメンが多いその一団は、頭を抱え フゥと重苦しい吐息をついて、思わし気に首を振った。 一方 同じ字部屋の少し離れた場所で「大佐がここの所 悩ましげに憂 い顔で…心が痛む」と遠い眼をし、どこぞに目線をやっているのは『マスタ ング大佐を護り隊』ことロイ親衛隊の一員だ。 こちらはどちらかというと軍服を纏ってはいても線が細い、文系エリートと いったタイプが多く、悩み顔も周囲に訴えるというよりは、思いつめ悩んで いる様子であった。 ロイとハボックの二人は、極対の二人として周囲から人目を惹くこと が多く、また信奉者や恋愛の対象としてのファンも少なくない。 そんなファンの中でも一部熱烈な者達が集ったのが、それぞれの親衛 隊であるが熱心な二人への日々の観察から、ロイ・ハボック両者それぞれ が互いに好意をもっているらしいと、当人達より先に気づいてしまったのは 不幸であったかもしれない。 ロイはハボックの事で迷い、ハボックはロイのことで胸を騒がせている 様子なのに二人とも、そんな悩みの原因をまったく察していないのだ。 現在この場に集っているものは、ロイもしくはハボックの行いを遵奉しよ うとする者達ばかりで、日頃から互いの情報を交換し合っていた。 そこで口にされたのが「マスタング大佐はハボック少尉を好きなのでは ないか」の少尉親衛隊による推測と「ハボック少尉はマスタング大佐に思い を寄せているのではないか」のマスタング大佐親衛隊の予測で、互いに 自分の愛慕をしている者を冷静には見れていなかったが、その言葉に思い 当たる節のあったそれぞれは、俯きつつも元気の無い両者の理由がそれ かと悟り、落ち込んでいるのが現在である。 切れ者な上司と茫洋とした護衛官、武闘派とは思われにくい体形して年 より数段若く見える童顔年上と精悍な肉体と年相応な顔付きの青年、黒目 黒髪と金髪碧眼、頭脳派と肉体派…どこを取ってもハタから見る限りでは 共通点の少ないロイとハボックは、常から注目を浴びることに慣れていた為 他者の探るような視線にも無頓着で、今日も親衛隊の存在にも気付いて いなかった。 …内情を知れば、切れ者な筈の大佐殿は案外うっかりさんでそこがツボ だと他者に好意を抱かれたり、茫洋とした少尉殿は誰よりも早く無意識に 危険へと警戒を行える俊敏さを持っていて、そこに憧れている者が多数 いるのだが、ともに良くも悪くも他者の感情にどうにも疎いという点だけが 共通している両者は、周囲のそんな探ってくる目線があっても自分たちの 間で漂っているぎこちなさは誰にも知られていないと思っている。 「ハボック少尉って 大佐が他の誰かとにこやかに談笑されているだけで 途端不機嫌になってすげえ解りやすいと思うんだけど…」 「それを言うならば大佐とて 少尉が目下相手に親切をふるまっていると 見事なぐらい無表情になって わかりやすいぞ」 「…俺の同僚が勇気を持って聞いてみたんだよな『少尉はマスタング大佐 のことをどう思われているんですか』って」 「おおっ…それは…で、何と?」 「ものすごい最上級の笑顔で『誤解されやすいけどいい上司だぜ』ってさ」 述べた際は他意が微塵も無い、爽やかな笑顔であっただろうと推測可能 で、その行動はいっそうハボックは自分のロイへの想いを気づいていないと 他者に裏打ちさせるものだった。 「あのー私は以前事務官で大佐の補佐をした事ありまして、雑談に興じ て大佐に『ハボック少尉のことをどう思われていますか』と聞いたこと あります」 おそるおそる手を上げたのは、マスタング大佐側親衛隊の新入りだ。 一斉に目線で続けろと促された准尉章を持つ男は、頷き続けた。 「『行いで誤解されがちだが頼りになる得がたい部下だ』…と」 仮にいきなり聞かれたとて、同性への好意を示せるはずがないのだが こちらもその爽やかで少し誇らしげだった笑顔は、まったく部下として以外 の概念が含まれておらず、やはりロイも自分の気持ちを疑問に思っていな いようだったの結論に達した。 「大佐と」「少尉が…」 「「今までのような表情を見せてくれるのは…二人がくっつかないと駄目なの だろうか……」」 愛する人に幸せになってほしい。だが、できるのなら幸せにするのならば 相手は自分で…それが望めぬのならばせめて一人のままでいて欲しいと 望む親衛隊達は、重圧を纏った面持ちでそれぞれが頭を抱えた。 *********************** 以前お邪魔させていただいたチャットでの会話が元になっております ネタからの創作許可 ありがとうございました |