| 「……なんだね ハボック」 「へ?…アンタ なんで俺の名前を……」 「何でとは… ああ…そうかこの姿でお前と会うのは初めてだったな 別に私は泥棒などではないから その手を放したまえ」 フと鼻先で笑った黒猫のその表情も、秀麗でハボックの視線を奪う。 ――うわ、なんでさっきからドキドキするのかと思ったら…この顔 超が 付くほど俺の好みなんだ…間近で見てもやっぱ美人だなあ 「今更だがあらためて挨拶をしておくか ロイ・マスニャングだ」 「………え?………えぇぇぇぇぇぇっっっ!?大佐??」 呆然としているハボックを尻目に、やんわりと、だが断固とした力で 手首の拘束を解いた青年姿のロイは、今しがた告げた内容が以前より 目をつけていたテロリスト達が残していった証拠だと説明をし、手際よく 現場で準備する事柄や行動を、その場にいる者達に説明始めた。 ――マジで大佐!?本当に???確かにあの綺麗でサラサラな黒髪 とか黒曜石みたいにきらめいてる目とかは一緒だけど…うっそぉー… 「ハボック何をぼやぼやしている!聞いているのか!?」 「え…あ、ハイ!」 「では私たちも現場に赴くぞ フュリーは連絡要員として無線機の準備 を終えたら後から来い」 「イエス、サー」 鋭いロイの声に、ようやく我を取り戻したハボックが周囲を見渡す頃には もう上司であるロイ以外の者達の姿はなかった。 「言いたいことを簡潔に述べたまえハボック少尉 そのボーっとした様子は 何だ 具合が悪いのならここに残っていろ」 「えっと…いやスミマセン 思いがけない事態に頭が付いて来ないだけで 具合は悪くないっス …本当にアンタがロイ・マスニャング?俺を騙そうと してるとかそんなんじゃなくて?」 「…こんな大掛かりにお前を騙してどうする 幾ら私でも普段の姿では焔を 扱いきれんから 錬金術師として活動する時はこの姿だ 説明忘れてたの はすまんが故意ではない」 「…普段からその格好でいればいいじゃないスか」 その方がずっと軍人らしいとの、後半のハボックの素直な感想はあえて 飲み込み、現時点ではとてつもなく近い位置にあるロイの顔をハボックは 見下ろした。 「サカリが来ては困るんだ」 「………は?」 あっさりと言い捨てられた少し押さえられた声音の言葉は、ハボックの 脳裏で意味を成してくれず疑問符が乱舞する。 「…幸い私は普段…その……繁殖的欲求が訪れにくいのだが…どういう 訳か この姿になると同性異性を問わず ひたすらアプローチを受けてしま うのだよ」 「ああ、サカリってそのサカリ」 ようやく理解したハボックが率直に言葉に出すと、『この鈍感め 意味が 把握できたのならば黙って頷いていろ』と小さく返され、ロイの頬は羞恥で 紅く染まった。 本人がその気はないのに『困る』という事は、ロイのこの姿は他者の盛り を誘ってしまうということだろう。 マジマジとロイを見直したハボックは、小さく頷いた。 ――なるほど納得だ。 本人は無意識なようだが、成人体をしたロイはどことなく成熟した、それで いて清涼という不思議な色気を醸し出していて、雄の征服欲と雌の優秀な 遺伝子を求める欲を、限りなくそそる。 今はそんなことを問題にしている場合でないと、顔を赤くしたままハボック を外へと促すロイは、なるほどとひたすら感心しているハボックのドッグタグ を思いっきり引っ張り外へと促した。 **************** きっとハボックもサガリの来訪に悩まされてしまうのでしょう(笑) |