| 見舞いと称したロイが、ハボックの入院している病室に複数ベッドがあり しかも警備上の都合という名目で、部屋を個人利用して更に他に邪魔しに来る ものが滅多に居ないという状況を、活用しないわけがない。 勿論本心で…部下を思う上司としての心と、想い人相手への配慮という点 からの来訪であるのは事実だが、訪れに乗じて空きベッドを利用してのロイ が自主的な休息を取っているというのも事実であった。 「大佐 目の下クマ」 病室に入る前までは、足音からして颯爽と歩いていた風情であったのに、 扉を閉めると同時、俯いて大きなアクビを噛み殺したロイを見たハボックは、 視線があうなり、自分の目の下当たり一帯をなぞり指摘した。 「……徹夜明けだ」 ボソリと返したロイは目の下どころか全身で疲労困憊と訴えていて、見て いるだけで、その疲れた様子が解る。 「大佐が来てくれるのは嬉しいっスけど…無茶してまで来てくれなくていい ですよ?」 「別に無茶をしているわけじゃない 一人家に帰って寝るよりここで眠る方が 安心できて心休めるんだ……寝る」 スタスタとハボックの寝台の横へと足を運ぶロイが、そのまま空ベッドに 倒れこむと同時、深い睡眠に陥るだろうと察したハボックが、ロイの手首を 掴んで引き止めた。 「……なんだね?」 「その格好のまま寝たりしたら 起きてからシャツも下もシワクチャっスよ よれよれのみっともない姿で帰るなんて大佐の信条にも反するでしょう」 「……私は寝相がいいから平気だ」 「寝相の問題じゃないと判ってて そういう駄々を捏ねるんじゃありません ホラ 俺のパーカー貸しますからこれに着替えて」 「……めんどくさい」 「着替えを手伝って欲しいならやったげます…それにこっちの方が楽っスよ」 パーカーを差し出した手とは逆の手の指をわきわきと動かし、にやりと笑う ハボックの表情は楽しげで、これ以上逆らえば、自分を甘やかす言動に乗じて フザケ半分でも、無理やりに剥かれる可能性があると懸念したロイが渋々と パーカーを受け取った。 「…冷たいから着替えたら寒い」 まだごねようとするロイに、ハボックはしょうがねえなあと笑って、自分 が着ているパーカーを脱ぎ、ロイの手元にあるそれと交換した。 「ホラ、こっちなら温かいっスよ」 「…お前は私を甘やかし過ぎだ」 そう言いながら、閉めたカーテン越しに着替え始めたロイに、ハボックが 声を掛けた。 「大佐 脱いだら皺にならないよう畳みますからこっちに下さい」 「……ん………ってそこまでせんでいい!」 「どうせ大佐が寝ちゃったら暇なんスから それぐらいさせて下さいよ」 ハボックの明るい声は、恩を売ってるの押し付けがましさが一切ない、 優しい本音だ。 「…大きいな」 少し眉根を寄せて、余る袖口をぶらぶらと振るロイは面白くない口振りだ。 「体格の差があるんだから仕方ないでしょう…にしても目の保養っスね」 「ジロジロと見るんじゃないっ!」 にんまりと細めたハボックの目の先が、自分のパーカーの下の素足にあると気 付いたロイが、シャツとズボンをふわりと投げつける。 「いいじゃないっスか 減るもんじゃ無し」 「……もう寝るっ!」 すらりと伸びた素足を隠すべく、そそくさと隣りのベッドにもぐりこんだ ロイは、数秒後には静かな寝息を立てていた。 「…全然甘やかしすぎじゃないっスよ 置いてくって言ったアンタがわざわざ 仕事帰りにここに寄ってくれて 安心できるって言ってくれたりとか もう 護衛役として使いモンにならねぇ俺の前で無防備に寝てくれたりとか…それが どんだけ俺の気力の源になって 幸せくれてるか……お休みなさい 大佐」 ――本当は、眠るといっそう若く見えるその寝顔をもうちょっと眺めていたい けど… そんな内心は言葉に出さず、「ゆっくり寝てください」とだけ小さく呟い てハボックは隣りのベッドとの境にあるカーテンをゆっくり引いた。 ************** お絵描きチャットで20巻の互いの衣装を取り替えた絵というのを描きまして、ハボのでっかいパーカーを 着るロイに萌えvのお話 |