| 「…で なんで威厳ある顔を目指す薬が俺と中尉の中身チェンジに なるんですか」 「…さあ 私としても予想外だ」 「………ハボック少尉 今日の演習は確か模擬格闘戦でしたね」 これ以上ロイを問い詰めても無駄であろうと断を下し、割って 入ったホークアイにハボックはこくりと頷き返す。 「この体 なるべく傷つけないようにするからお借りするわね…ああ 言葉遣いも改めた方がいいわね …あまり男言葉って馴染まねえん だけど…少尉の話し方ってこんな感じで違和感ねぇ?……駄目だ ちょっと乱暴な喋り方はキツいな…丁寧語系で行かせて貰おうか」 薄く笑って掌で自分を指し示すホークアイに、ハボックは拍手で 答えた。 「…自分の顔に向かって言うのもなんですが男らしいっス……って まさか中尉 リタイアせずに参加するつもりですか!?」 「ああ 普段自分の非力さだけは性差のせいで補えないから悔しく 思うこともあったしな どうせすぐに戻れないなら良い機会だから この体で闘ってみたいのだが…構わないだろう?」 「駄目だっ!」 「へ?」 ハボックより先に、ロイが不許可だと叫び当事者であるハボック は目を丸くし振り返った。 「こんなクールでカッコいいハボックが格闘戦に出たりしたら異性 同性問わずに惚れてしまう相手が出てしまうではないかっ!」 ちょっと待て論点ズレてないかと、ハボックが口を挟む余地なく 返されたのは、聞く者を氷点下に落とし込む威力を持った微笑と 「それが狙いです」の返事だった。 「……は?」 なんだかさっきから自分は間抜けな返答していないと思いつつも、 意図のわからぬハボックは、続く言葉を待つしかない。 「ハボック少尉のこの体で 相手が欲しがってそうな言葉をかけて 相手が望んでいる行動をして 勝ち抜いていけばさぞかしファンが 増えますでしょうね 大佐?」 普段であれば陽気な青い瞳が、形だけの笑みを装って細められ ロイをまっすぐに見詰めると、見詰められた方はその図を想像して いるのか黙し俯いてしまった。 「えっと…それって…ちょっと待ってください」 「少尉には申し訳ないけれど 大佐にはこれ位して反省して貰わな くては また同じことされそうですし」 いやいやいや…待ってくださいって何かよく判らないけど犠牲に なるのは俺ですかとか、戦闘で傷付けられる位は屁でもないんです けれど、痴情の縺れとかいうゴタゴタが降りかかってくるのは勘弁 下さいといった言葉がハボックの脳裏で渦巻く。 硬直したハボックの横に、ホークアイが少し屈みロイには聞こえ ぬ程度の声で、心配するなと続けた。 「…大佐に悩んでもらおうって意図だけで 本当にはやらないから 安心して …たまには本気で反省してもらわなくちゃね」 言いながらフッと笑ったホークアイが大変男らしく見え、何故か ハボックの頬が僅かに赤らんだ。 微笑を浮かべたハボックと、頬を赤らめるホークアイの図。 普通に入れ替わってる中身を知らずに見れば、金髪同士の美丈夫 &美女の麗しい組み合わせで、まだ登場せぬライバル達より先に、 警戒を出すのならばこちらではないかと、慌ててロイが立ち上がり、 二人にむかって宣言をした。 「今すぐ戻れる薬を作ってくるから! ちょっと待ってろ」 自身の経験もあり、多少の構築が計算できるからといったロイが 一時間で作り上げた薬は、無事に二人の体を元に戻した。 (戻れる薬の完成はロイの妬心による代物であったが、ハボックは 無論当人にもヤキモチによる結果だとは理解していない為、二度と 同じ効力を持つ物を、これだけの短時間で作り上げることはでき なかったと付記しておく) 「よ…よかった…もし戻れなくて…生理的現象が襲ってきたりとか 風呂入らなくちゃいけない破目になったらどうしようかと…」 大きく肩落とし、安心した様子のハボックにホークアイはあまり平常 には見せぬ笑みを浮かべ、さらりと返した。 「あら私は構わなかったわよ 不可抗力だもの」 「…絶対にしないし言わないですけどね 中尉の胸でっかかったな とか俺が無意識に呟いたりしてたらどうします」 「私も無意識にロッカールームで少尉の身体的特徴を色々呟かせて もらおうかしら…ついでにどこが弱いみたいだとか何故か背中に 爪あとがあったみたいだとか」 上記会話を行ったハボックとその傍らにいたロイは、やはり何が あってもホークアイ中尉に逆らうような真似だけはすまいと、固く 心に誓うのだった。 ************** リザさんは銃だけでなく格闘も優れてそうなので、ハボの体だったら無敵かも |