10000Hit キリ番プレゼント「青」 掌編

作:しゅう
絵:涼夜




「ねぇ、おばあちゃん。どうしてこの絵本の空は灰色じゃなくて青いの?」

 それは目の覚めるような青。
 それはまだ世界が紛い物の平和にすがっていた頃の絵本。

「昔の空は青かったのよ」

 そして紛い物の平和はいつしかその均衡を崩し、多くの物を失った。
 そして消えた空、消えた海、消えた緑。人の心さえも。

「どうして空は灰色になっちゃったの?」

 それは人々のエゴ。
 それは罰。

「人々が愚かだったからよ」

 そしてその罰を受けるのは、罪を知らぬ者。
 そして空の青を知らぬまま、太陽の光を知らぬまま、海の青を知らぬまま、山の緑を知らぬまま、罪を背負い心を失う。

「ねぇ、もう青い空を見ることはできないの?」

 それは永遠に失われた物。
 それは二度と手に入らない物。
 
「とてもとても長い時間がかかるわ。それに人々が愚かなままでは、青い空は取り戻せないのよ」

 そしてその長い時間は、青い空を見たことのある者を連れて行ってしまう。
 そして誰も青い空を望まなくなってしまう。
 
「ちょっと待っててね、おばあちゃん」

 それでも人は青い空を望むだろうか?
 それでも人は灰色の空を嫌うだろうか?
 
「それは……」

 それは目の覚めるような青。
 そこにあるのはとても小さな青い空。
 
「ねぇ、空ってこんな感じだった?」

 その少年の部屋にある空。
 それは壁に青い折り紙を貼っただけの、それでも確かに空の青