My Dear・・・ 


 街にはたくさんの人達が歩いていた。わたしは仲間達とくっつきそうなほど頬を寄せあってその流れを見つめていた。
「ねっ、あの人よさそうじゃん」
「そうお?それよりさ、あっちの人、綺麗だよね」
「何言ってるの。顔じゃなくて財力よ。やっぱ幸せになるにはお金がなくちゃね」
 さっきからわたしと仲間達は通り過ぎる人達を品定めしている。仲間達は相変わらずああでもないこうでもないと無邪気に言い合っている。けれど、わたしは少し飽きてきていた。そろそろここを出たい。
「ね、ね、あんたはどんなのがいいの?」
 仲間の1人が声をかけてくる。ふっくらした頬の可愛らしい子だ。この子だけじゃない、他の仲間も皆それぞれに可愛らしい。そしてみんなそのことを自覚していて、自分が相手に拒否されるなんてことはこれっぽっちも考えていない。とか言うわたし自身、とても愛らしいと思う。頬のふっくらさでは負けるけれど、すべすべとしたピンクの肌では誰にも負けない、なんて思っている。
「わたしはねー」
 どうしようかな。そう思いながら通りに目を向けると、その人がいた。
「あっ、あのひとがいい」
 顔は大して良くないし、お金だって持ってなさそう。でも優しそうだった。あの人が笑いかけてくれたら、きっといいことがあるような気がする。それにちょっと小太り目のあの体で抱きしめてもらったら、きっときっと気持ちがいいだろう。
「あのひと?」
「顔は良くないわねえ」
「でも、まあ優しそうではあるわね」
 途端、仲間達が次々に品定めを始める。でもわたしはもう決めていた。
「わたし、あの人にする」
 そう宣言して、仲間の群から飛び出した。もうその人しか目に入らない。
───幸せになるのよ
 仲間達の声が遠くに聞こえた。

 ***

 とくん、とくん。
 優しい音がわたしを包む。
「お母さん、もうすぐですよ。がんばって」
 そう、もうすぐわたしは生まれる。わたしの選んだあの人にようやく会えるのだ。
 ママ、もうすぐよ。もうすぐわたしはあなたに抱っこしてもらえるの。