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03月13日

民宿司→37岩本寺(高知県幡多郡大方町)34km


不安も引きうけてこその歩き遍路

伊与喜のあたりで、旧国道を進行中、道しるべ立て札が出現した。左手の小山を指している。旧国道進行のはずだよね、山登りはなしでしょ、と、あたりを見まわした。

すると、右手にある畑から、「上―!」と声がした。え、これ登るんですか。「ありがとうございまーす!」登っても、道しるべはない。最も近い舗装路に降りてみた。

前方にレンガ造りのトンネルが現れた。へんろシールはある。車両通行止め、と、大きく書いてある。ライトはない。かなり古いトンネルのようだ。「このトンネルができたとき、地域の人は、『トンネルとは、入り口が大きくて出口が小さいものなのか』と言った」なんてのんきなことが、立て札に記されている。

トンネルを抜けるとそこは工事中であった。道しるべは見えない。不安も引きうけてこその、歩き遍路だよねと、自分に言い聞かせながら歩いた。

高知国体の隠れた影響

今日の午前中歩いた道の半分は、工事中であった。「工事区間終わり」の看板を見て5分もしないうちに、「300メートル先工事中」の看板を見る。片側交互通行でも、車ほど困りはしないけれど、所々舗装ははがされているししばしば車と一緒に足止めされるし、決して歩きやすいとは言えない。

道路を舗装し通信ケーブルを埋めこみ下水道を整備し河川を修復する。たしかに今は3月だ。しかも今年は、高知国体が行なわれるという。これまでほとんど工事に遭遇しなかったのが、不思議なくらいだ。このあとも、ほとんど工事には遭遇しなかった。あのあたりには何か、特別な事情があったのだろうか。

工事現場には工事をする人がいる。オフシーズンには、彼らは仕事があるのだろうか。「徐行」と書かれた旗を、車のたいして通らない道で振っているおじさんを見ながら、ふと心配になった。

1.5キログラムの善意

午後、いいかげんに着くはずだがなあととぼとぼ歩いていると、おばあさんに呼びとめられた。

残っている歯が少ないためか、土佐弁のためか、言っていることがよく聞き取れない。「一人で?若いのにえらいわねえ」みたいなことを、言っていたように思う。

「お菓子でもあればいいんだけど」おばあさんが手押し車から取り出したのは、ひと袋3個入りの、イヨカンの袋であった。「ありがとうございます」と、受け取る。

さらにおばあさんは、何か話している。いよいよ聞き取れない。すると彼女は、もうひと袋、イヨカンを出してきた。いやそれはもういいんですけど。3つで十分です。けど、歯の一本しか残っていない口と、ほぼ半球状のメガネを見ていたら、なんだか何も言えなくなって、受け取ってしまった。

表示によると合計1・5キロ。リュックに詰めて背負うと、足が地面にめり込む感触がした。


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