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親友


街に秋風の吹く日は
わが親愛なる友よ
お前の悲しい声が聞こえる

「僕は死ねないんだ
死ぬわけにはいかないんだ
家族のため」
お前は僕にそう言って息を引き取った
お前の涙が秋風に揺れて居るようだった
握りしめたお前の手が冷たくなっていく

二十八になったばかりの友の妻は
乳のみ子を抱き、四歳の長男の手を引き
夫のベットに泣き崩れた

僕は語る言葉も無くして立っていた
お前の手がいつまでも僕にすがっていた
かってお前が僕に言った言葉が風に揺れている

あの日お前はまっすぐに僕を見て言った
「自殺なんて考える奴があるか!
お前の悩みが何かは知らぬが
お前はもう一人じゃ無い
愛する奥さんと子供のために
生きねばならぬ義務がある!

なのに僕は生きていて
お前の方が奥さんや子供を残して
義務を果たせず逝ってしまった

大腸ガンがお前の命を三十で止めた

わが親愛なる友よ
街に秋風の吹く日は
お前の悲しい声が空から聞こえてくる



何処へ


れんげの花の中に寝そべり
小川のせせらぎを聴き
青い大空に夢をはせていたお前
あの時のお前は何処へ行ったのだろう

恋におののき
愛する人を光の中に
ふるえる胸で抱きしめた
草原の情熱
あの時のお前は何処へ行ったのだろう

夜毎に闇を透かし
大空に輝く星達を友に
暑い未来に心をはせ
自分の未来に身を震わせていた
あの時のお前は何処へ行ったのだろう

あの時のお前
それは 陽炎だったのだろうか

悲しみに打ちひしがれて
ボロボロになった体を引きずり
力無くうずくまる
ああ これがお前の幻か
お前
お前はいったい何者になったのか
色あせて みすぼらしい亡霊よ

自分で自分がいやになり
夜のしじまに泣き濡れて眠るお前
ああ
あの時のお前は何処へ行ってしまったのだ





砂漠の歌


冷ややかな風が砂漠を覆い
三日月が中天にたたずむとき
旅人ひとり 起きている
永い苦しい旅路を思い
悲しさに熱い涙を溢れさせている

歩けども 歩けども 果てしなきこの砂漠
飢えと渇きに絶えかねて 叫んでも
ギラギラと照りつける白い太陽と熱砂

だけど砂漠の夜は 
旅人の心を癒し
心の傷のひとつひとつを開いてみせる

旅人一人 
夜に歌う
砂漠よ
お前砂漠よ
不毛の砂漠よ

私は緑の森ときれいな泉が欲しい
そのために今日まで旅してきた
いつの日か
私の願いはかなうのですか?

かなうのなら 
命は果てるまで旅を続けよう!
それが 出来ぬのなら

砂漠よ
お前砂漠よ
お願いだから
このまま私の体を砂に埋めよ!




大学の門


私の体をごらん
私は古い
けれど
また、新しくもある

永い永い日々を
私は単調な生活で
諸君を迎え
そして 送る

朝 私は諸君のために胸を開き
諸君を温かく迎える

夕方
諸君を家路に送る


大学の古びた鉄の扉
諸君の門

たゆみなく規則正しい
単調な私の行為の音に
人間を育てる偉大な響きが
諸君の頭脳にとけ込んでいく

これが私の仕事
私の全使命!





夕暮れに


6月の夕暮れに
私はひとり大学のキャンパスにたたずんでいた
風は さわやかに吹き
遠くから学生たちの歌声が流れてくる
人影まばらな このキャンパスを夕闇が包んでいく
限りなく平和に思えるひととき

けれど
私の心は暗い
密林の夜を行くような気がしている
そこには 何が存在し
どこへ行くのかも知らぬ私がいて…・

ただ生きるために
何か
茫々とした目的を持って
単調な生活を無意味に費やしている

私の体から ひとつの意志は消え
生の慣性の中に
身を漂わせているだけだ

にもかかわらず 私の心は
なにか しっかりとした 力強い
目的を求めてあえいでいる




そこは


そこは、透き通るような青空の終わるところ
そこは、たくましい雲が生まれるところ
そこは、雨雲たちが帰っていくところ

そこは、清々しい風の王国
そこは、木枯らしの出発点
そこは夕焼けの果て
そこは星たちの憩うところ

そこは、青い鳥たちが越えていくところ
そこは、古代の人々が神の座とあがめたところ
そこは、吹雪の公園

そこは、桜の花の舞うところ
そこは、若葉の天国
そこは、憧れの湧き上がるところ

そこは、別天地への境界
そこは、私の魂の住むところ!
そこは、私の・・・・・・・!



それでも


地上に北風の吹く頃には
雑木林でにぎわっていた木の葉が
大地に眠る

木立は、寒風の中 裸で立っている
今まで光の射さなかった大地に
明るい光があふれる日がきた

大地に光を与えるために
木立は裸になるのだろうか

ここには黒い枝だけの裸の木々が立っている
凍てつく寒さの中で 裸でまっすぐに立っている
空を見上げて立っている

雪に埋もれようが 激しい寒風にさらされようが
ひとり 自分の力だけで立っている
嘆きもせず あきらめもせず
やけにもならず まっすぐに立っている

どんなに過酷な冬であっても
いつか芽吹く日を夢見て
立ち続けている
重たい雪を跳ね返しながら 待っている

春の来る日を待っている






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