ピーター・ウィアー監督作品

 

ウィアー監督
フィルモグラフィー&作品概要


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  ⇒ TSUTAYA online (2010/07/01現在)
制作年 タ イ ト ル 制作国 主 演 DVD
(邦 題) (原 題)
2010 脱出記(仮題) 公開未定 The Way Back

コリン・ファレル

2003 マスター・アンド・コマンダー Master and Commander ラッセル・クロウ
1998 トゥルーマン・ショー The Truman Show ジム・キャリー
1993 フィアレス/恐怖の向こう側 Fearless ジェフ・ブリッジス
1990 グリーン・カード Green Card 米・仏・豪 ジェラール・ドパルデュー
1989 いまを生きる Dead Poets Society ロビン・ウィリアムス
1986 モスキート・コースト The Mosquito Coast ハリソン・フォード
1985 刑事ジョン・ブック/目撃者 Witness ハリソン・フォード
1982 危険な年 The Year of Living Dangerously メル・ギブソン
1981 誓い Gallipoli メル・ギブソン
1977 ザ・ラスト・ウェーブ The Last Wave リチャード・チェンバレン
1975 ピクニック at ハンギングロック Picnic at Hanging Rock レイチェル・ロバーツ
1974 パリを食べた車/キラーカーズ The Cars That Ate Paris ジョン・メイロン

作 品 概 要
The Way Back The Way Back, 2010 (『脱出記(仮題)』) 公開未定

第二次世界大戦中にソ連からスパイと疑われてシベリア送りにされたポーランド兵士の、事実をもとにした壮絶な脱出の記録である。シベリアからモンゴル、ゴビ砂漠、チベット、ヒマラヤを経てインドまでの、飢餓と極寒、そして炎暑を乗り越えた脱出行が壮大な自然景観とともに映像化されている。コリン・ファレル、エド・ハリス、シアーシャ・ローナンらが出演している。
日本での公開は、現在のところ(2011/05/14時点)未定である。

●原作: 『脱出記』、スラヴォミール・ラウイッツ(海津正彦訳)、ヴィレッジブックス、2007年。
●予告動画: http://www.youtube.com/watch?v=87kezJTpyMI (YouTube)
 

『マスター・アンド・コマンダー』 『マスター・アンド・コマンダー』 (Master and Commander, 2003)

本作品の時代背景は1805年、ナポレオンがヨーロッパ全土に侵攻を企てていた時代のことである。フランスとイギリスはヨーロッパばかりではなく、はるかかなたの南太平洋でも植民地支配をめぐって覇権を競っていた。そんななか、イギリス海軍のフリゲート艦サプライズ号は、略奪行為を繰り返すフランスの私掠船アケロン号の捕獲を命じられた。この艦を指揮するのがジャック・オーブリー艦長である。サプライズ号はアケロン号をブラジル沖で捕捉し追撃を始める。アケロン号と戦闘を繰り返し、また嵐にも遭いながら、サプライズ号は南米のホーン岬を回りガラパゴス諸島を経て、南太平洋の最後の決戦海域へと向かっていく。
この作品は、パトリック・オブライアンの長編海洋小説「オーブリー&マチュリン」シリーズ全20巻のうちの第10巻 “The Far Side of the World” を中心にウィアー自らも脚本を手がけ、背景となる時代や対峙する帆船の国籍を脚色して2時間余の映画にまとめ上げたものである。構想から10年の歳月を費やしている。本物の帆船を使っての撮影であるだけに迫力があり、最新の視覚効果技術を駆使した戦闘シーンや嵐の場面では、自分もその場にいるかのような錯覚におちいる。帆船の外観や内装、乗組員たちのコスチュームなど時代考証もしっかり描かれている。また、船という閉じられた空間のなかでのオーブリー艦長と船医マチュリンの友情を中心に乗組員たちの緻密な人物描写は、海洋小説ファンならずとも充分に楽しめるが、大海原を帆走する帆船の姿などは、できれば映画館の大スクリーンで観たいものである。

『トゥルーマン・ショー』 『トゥルーマン・ショー』 (The Truman Show, 1998)

青い空に太陽がさんさんと輝き、白壁の家が点在し、周囲には青い海が広がる町、シーヘブン・・・。この町で、トゥルーマンは保険会社のセールスをしながら妻と二人で暮らしている。まったく幸せそのものの毎日であるが、彼には最近少し気になりだしたことがある。そう、いつも誰かに見られているような、そんな感じがふと脳裏をよぎるのである。
もし自分の半生が24時間、知らない間に世界中の人々の目にさらされていたとしたらどうであろうか。いま生活している町そのものが作り物の巨大なセットで、妻も両親も友達も周囲の人々はすべて役者が演じている。そんな完全無比の虚構のなかで、その真実を自分だけが知らされないままに生きてきたとしたら・・・。そんな荒唐無稽ともいえることが実際に起こっているのがこのシーヘブンという町。
テレビの視聴率競争で勝ち抜くために、プロデューサーのクリストフは途方もない番組を作り上げた。一人の人物を主人公に仕立てて、その人物がこの世に生まれてからずっと24時間をテレビで生中継するというものである。現代メディアの象徴ともいえるテレビの行き着く先とそら恐ろしさを痛烈に風刺しているが、コメディアンとしても秀でたジム・キャリーがトゥルーマンを演じたことで、この作品が持つ底知れぬ深刻さがやわらげられているのが救いである。

『フィアレス/恐怖の向こう側』 『フィアレス/恐怖の向こう側』 (Fearless, 1993)

主人公のマックス・クラインは乗客の一人として飛行機の墜落事故に遭遇する。奇跡的に助かったマックスは、パニックに陥っている事故現場で、生存者を安全な場所へ誘導してマスコミにも大きく取り上げられる。死に直面した事故を契機にマックスの心のなかで何かが変わり、それまでとは違った神のような不死身の肉体を持った人間であるかのように思いはじめる。そんな彼は、車の走っている前を横切ったり、高いビルに登ったりと奇行を繰り返して妻のローラを不安がらせる。一方、墜落事故で赤ん坊を亡くし、自分だけが生き残ったカーラ・ロドリゴは深い悲しみと自責の念で苦しみ、立ち直れないでいる。事故後にまったく正反対の症状を見せるこの二人を、事故後のケアーを担当する心理学者ビル・パールマンは思い切って接触させてみることにする。
飛行機の墜落事故から奇跡的に生還した主人公の行動を通して、死の恐怖というものが人間の心にどのような影響を与えるものなのかを問いかけた異色作である。

『グリーン・カード』 『グリーン・カード』 (Green Card, 1990)

作曲の仕事をしたいとフランスからアメリカにやってきたジョージが、この国で働くにはグリーン・カード(労働許可証)が必要で、そのためにはアメリカ人の妻がいなければならない。一方、園芸家でニューヨーク娘のブロンティーは温室付きのアパートに住みたいと思っている。けれども、そのアパートを借りるには夫婦であることが条件だった。そんな二人が書類だけの偽装結婚をすることになった。そして二人は、それぞれの希望をかなえることができたのである。ジョージはグリーン・カードを取得できたし、ブロンティーは温室付きのアパートに入居できた。となれば、二人は赤の他人に戻るはずであった。けれども入国管理局の調査員が二人の結婚を確かめに来ることになった。生活信条や好みも正反対の二人が、にわか仕立ての共同生活をすることで調査員をだまそうと計画する。果たしてジョージとブロンティーは、このピンチを切り抜けることができるのであろうか。
コメディタッチでストーリーは展開していくが、その背後には、まったく異なる習慣や文化を背負っている二人が、対立しながらもいかに折り合いをつけていくのかという、ウィアー監督が常に関心を抱いている異質な文化へのこだわりが描き込まれているのである。

『いまを生きる』 『いまを生きる』 (Dead Poets Society, 1989)

アメリカのニューイングランドにあるウェルトン・アカデミーは、アイビー・リーグへの進学校として100年の伝統を築き上げてきた。この全寮制名門校に、卒業生でもあるキーティングという教師が赴任してくる。厳格な規律で教育を行なうこの学校で、キーティングの授業は型破りなものであった。「先入観にとらわれずに自分の感性を信じて、自分自身の生き方を見つけろ」という彼の教育方針に戸惑っていた生徒たちも、次第に彼についていくようになる。生徒たちは自分自身のやりたいことを自分の力で見つけて、それを実行するようになる。けれども、そんな子供たちの行動を学校側や父兄が許すわけはなく、キーティングは学校のなかで孤立していく。そんななかで、両親と対立した生徒の一人が自殺をするという事件が起こる。キーティングに責任がかぶせられ、ウェルトンを去ることになってしまう。彼が学校を去る日、生徒たちは校長の前で精一杯の抵抗を試みるのである。
この作品は、『ピクニック at ハンギングロック』で描かれた少女たちのみずみずしい感性を少年たちに置き換えて、若者が社会や既成概念に対して持つ疑問や反抗をより普遍的に描き出したといえる。ウィアー監督は、『刑事ジョン・ブック/目撃者』でハリソン・フォードのシリアスな面での演技を引き出したが、この作品でもキーティングを演じたロビン・ウィリアムスの、それまでに定着していたコメディ的センスだけではない奥深い演技を引き出している。

『モスキート・コースト』 『モスキート・コースト』 (The Mosquito Coast, 1986)

アメリカのマサチューセッツ州にある小さな町に、アリー・フォックスという変り者の男が住んでいた。一匹狼で発明家の彼には妻と4人の子供がいたが、子供たちはアメリカのような物質文明のなかではなく大自然のなかで成長しなくてはならないという信念を彼は持っていた。そんなアリーが自らの信念を実現すべく、一家を引き連れて中央アメリカのホンジュラスにある「モスキート・コースト」へ移住することになる。ホンジュラスに着いた一家は力を合わせてジャングルを切り開き、アリーは持ち前の腕でさまざまな生活道具を作り出していく。そしてその最たるものが、栽培用の種子を保存するための巨大な製氷機であった。ジャングルのなかに、物質文明の象徴ともいえる製氷機を作り上げてしまったアリーであったが・・・。
ポール・セローの小説を映画化したこの作品では、物質文明の大国であるアメリカを否定しながらも、物質文明のなかで生きていかざるを得ない人間の皮肉さ、滑稽さを広大なジャングルを舞台に描き出している。また、父親と子供たちの間に生じる葛藤や折り合いに見られる世代間の対立など、『パリを食べた車』や『ピクニック at ハンギングロック』のなかにもあったテーマがここでも描かれている。

『刑事ジョン・ブック/目撃者』 『刑事ジョン・ブック/目撃者』 (Witness, 1985)

この作品では、アメリカのペンシルヴァニア州のアーミッシュ(アンマン派信徒)の村が主要な舞台となっている。フィラデルフィア駅で麻薬課刑事が殺される現場を、アーミッシュの子供が偶然にも目撃する。事件の捜査を担当する殺人課刑事ジョン・ブックが、目撃者である子供と母親に事件の状況を聞きだす過程で、その殺人事件の犯人が同僚の警官であることが判明する。ブックが真相を突き止めたことを知った犯人は、彼の命を狙う。傷を負いながらもブックは子供と母親をアーミッシュの村へ送り届けるが、その傷がもとで村にとどまらざるを得なくなる。傷が癒えるまでの村での生活は信条も生活様式も現代とはかけ離れていて戸惑うが、次第に彼らの社会のなかに溶け込んでいき、子供の母親である未亡人のレイチェルとの間にも恋心が芽生えていく。一方、犯人はブックや、子供と母親の命を狙う機会をうかがっていた。
それまで『スター・ウォーズ』のなかでハン・ソロ役を演じてきたハリソン・フォードが、マンネリ化を脱してシリアスな役でも充分に演じられることを証明した作品で、アカデミー主演男優賞にもノミネートされている。
また、ウィアー監督にとっては母国オーストラリアから離れて作った初めてのアメリカ映画である。舞台や登場人物の設定は、オーストラリアとは関係がない。けれどもアーミッシュという社会を取り上げることによって、作品の底流に流れる異質な文化へのこだわりという彼の関心は一貫している。さらに、ウィアー作品に時として見られる難解さが抜け落ちて、ブックとレイチェルのラブ・ロマンスを縦軸に、犯人が同僚の警官であることが判明するまでのスリリングな展開や、西部劇の傑作『真昼の決闘』(1952)を思い起こさせるラストの犯人との対決シーンなど、娯楽という面からも秀逸な作品といえる。

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『危険な年』 『危険な年』 (The Year of Living Dangerously, 1982)

舞台は、1965年のスカルノ政権末期のインドネシアである。それまで独裁的な政権を握ってきたスカルノ大統領の力もさすがに衰えてきて、共産主義者やイスラム勢力が絡み合って対立する不穏な空気がインドネシアを覆っていた。そんな政情不安定なジャカルタに、オーストラリア人ジャーナリストのガイ・ハミルトンが赴任する。彼は中国系オーストラリア人のカメラマン、ビリー・クワンと知り合う。二人はコンビを組んで、特ダネを本国に送るようになる。ビリーはまた、イギリス大使館の秘書ジル・ブライアントをガイに紹介し、二人は恋に落ちる。けれども、ガイは特ダネを追うあまりに身の危険にもさらされるようになって、インドネシアからの脱出を余儀なくされる。
この映画は、脚本も担当しているオーストラリア人作家CJ・コッシュの小説をベースに作られている。映画の前半部分は、当時のインドネシアの政治状況に疎いとわかりにくいが、動乱のインドネシアからガイが脱出しようとする後半部分はスリリングに描かれていて、手に汗を握る展開で楽しめる。

『誓い』 『誓い』 (Gallipoli, 1981)

作品の舞台は第一次世界大戦下での地中海沿岸、トルコのガリポリ戦線である。この戦場に、アーチーとフランクという2人のオーストラリアの若者が志願してやってくる。オーストラリアはニュージーランドと連合してアンザック軍を組織して、イギリスとともに戦っていた。オーストラリアの若者たちの多くは、戦場で勇敢に戦うことが母国のためであると信じていたのである。ガリポリ戦線では、トルコ軍を撃破してイギリス軍を上陸させるためのアンザック軍の攻撃準備の作戦が練られていた。しかしこの時、将校が自らの時計を7分遅れで設定してしまったために攻撃開始時間の命令が狂い、その後のアンザック軍に甚大の被害をもたらすことになってしまったのである。戦場での伝令係りに任ぜられたフランクは戦場との間の連絡に走り回ったが、彼の必死の努力もむなしく、誤って時刻設定をした将校の攻撃命令により、アーチーは他の兵士とともに戦場に飛び出して命を落としてしまうのである。アーチーが命を落とすラストシーンは鮮烈である。
「ガリポリ」と聞けば、オーストラリアはもちろん英米の人々にはよく知られている地名である。けれども日本では、この地名はほとんど知られていないといってもよい。そこで、日本で公開されるときには『誓い』というタイトルをつけられたと考えられる。この映画は反戦を謳ったものではないが、戦争という異常な状況下で、アーチーのように不条理で無意味な死を遂げた人々が大勢いることを教えてくれる。また、オーストラリアの歴史を知るうえでも、この映画を見る価値は充分にあると思う。
この映画は、オーストラリアのアカデミー賞ともいわれるAFI賞を総なめにした作品であり、ウィアー監督を世界の檜舞台へ押し上げるきっかけとなったものでもある。また、メル・ギブソンのファンなら、彼の若々しい姿を見ることもできる。

『ザ・ラスト・ウェーブ』 『ザ・ラスト・ウェーブ』 (The Last Wave, 1977)

乾燥したオーストラリア大陸の内陸部に雹が降り、シドニーでは例年にないほどの雨が降り続いていた。シドニーに住むバートン弁護士は殺人事件に関与した5人のアボリジニの弁護を担当していたが、彼らとかかわりを持つほどに不思議な幻覚に襲われるようになる。彼は幻覚の核心を探っていくうちに、世界の終末が迫っていることを確信するようになる。
オーストラリア大陸の異常気象を背景に、近代都市シドニーの地下にアボリジニの聖地を設定して、この大陸の先住民族アボリジニの予知能力を取り入れることで、いわば白人一般が抱く、想像を超えたアボリジニの世界観を映像化した作品ともいえる。けれども、そこには異質なものへのこだわりというウィアー監督の関心の一端も見て取れるのである。

『ピクニック at ハンギングロック』 『ピクニック at ハンギングロック』 (Picnic at Hanging Rock, 1975)

その事件は1900年の214日、聖ヴァレンタインの日に起こった。オーストラリアのヴィクトリア植民地にある寄宿制女子学園の生徒たちが、近くの岩山(ハンギングロック)にピクニックに出かけて、そのうちの3人の生徒と1人の引率女性教師が岩棚の間に忽然と姿を消してしまったのである。1人の生徒は発見されたものの、他の者は必死の捜索にもかかわらず見つからなかった。一方、授業料滞納でピクニックに行けなかった1人の生徒が自殺をするという事件が、学園内では起こっていた。この二つの事件をきっかけとして、厳格な教育で知られた女子学園が生徒の監督不行き届きという理由で父兄からの非難をあび、崩壊への道をたどることになる。
女子生徒たちが消えてしまった岩山に象徴されるオーストラリア大陸の太古の自然が、パンフルートの響きとあいまってミステリアスな雰囲気を醸し出す。また、厳格な規律から自由になろうとする、感受性豊かな女子生徒たちの姿が鮮明に描き出されている。この、若者に向けるウィアー監督の眼差しは、以後の作品にも形を変えて表れていくことになる。

『パリを食べた車/キラーカーズ』 『パリを食べた車/キラーカーズ (The Cars That Ate Paris, 1974)

オーストラリアの「パリ」というへんぴな田舎町が、この映画の舞台である。この町に入った車は、なぜか忽然と姿を消してしまい、町から出てくることはない。ある日、この町をジョージとアーサーの兄弟が通りかかり事故にあう。ジョージは亡くなるが、アーサーは生き延びて「パリ」で生活をする破目に陥る。そこでアーサーが目にしたパリ町の姿は、想像を超える異様なものであった。何の産業もない貧しい田舎町の人々が生活の糧としていたものとは・・・。
ウィアー監督の処女長編であるこの作品の出来ばえは評価の分かれるところであるが、閉ざされた空間のなかでの現代を風刺した不条理な内容は、彼の以後の作品の方向性を示唆している。


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