断層・付加体実験


「砂箱実験」と呼ばれる、断層のモデル実験の応用です。透明な箱やスライド用のケースを使い、小麦粉とココアで地層をつくってみました。この実験、寺田寅彦の指導によって行われていた事が、中谷宇吉郎(はじめて人工雪の結晶をつくった)の随筆「寺田先生の追憶」に書かれています。当時はココアではなく、小豆粉などを使っていたようです。


1.実験装置の製作

細長くて深さのある透明な箱と、箱の幅に合わせた板を用意すれば実験はできます。
以下では、スライド用ケースを使ったミニ実験装置の作り方を説明します。

材料
スライド用のケース(1個)、カッター(1本)、バーナー(1台)

作り方
(1)ケース本体(緑色の部分)を、三等分に切る。
(2)両端部の1つを真ん中から横に切り、底の部分だけを残す。
(3)透明な蓋の端の天井部分に、幅1〜2mmのスリットをあける。
(4)蓋の天井部より長めに切った厚紙(ケント紙)に、両面テープを使いガーゼを貼る。
(5)カッターを使い、はみ出した部分をきれいに削り取る。

 
実験装置 A:断層実験用パーツ
小麦粉-ココア地層を圧縮するときに使用。
B:押し固め用パーツ
小麦粉やココアを上から押し付けて固め、地層をつくるとき使用。
C:大陸パーツ
付加体実験のとき、大陸のモデルとして使用。
D:透明ケース(フタ)
中に地層をつくり、断層や付加体ができる様子を観察する。
その他:ガーゼを貼った厚紙
海洋底プレートのモデルとして使用。


2.実験方法

用具
実験装置(1セット)、小麦粉(適量)、ココア(適量)、スプーン(1本)、厚紙(ケント紙またはハガキを5cm×10cmくらいに切ったもの、1枚)、茶こし(1個)

やり方

逆断層実験
(1)Aパーツを透明ケースに入れ、小麦粉とココアを交互に積み重ねた地層をつくる。このとき、Bパーツを使い、均一の厚さと固さになるように押し固めながら層を整える。
(2)透明ケースの内側について粉を、厚紙で削ぎ落としながら地層をつくる。
(3)Aパーツを地層に向けてゆっくり横にスライドさせ、小麦粉-ココア地層を圧縮する。
(4)断層ができる様子を観察する。

逆断層実験装置

正断層実験
(1)Aパーツを、逆断層の時よりも幅が狭くなるように透明ケースに入れ、茶こしを使って小麦粉とココアの地層をつくる。ココアの層を厚く(全体の9割位)、小麦粉の層は薄くなるようにする。
(2)厚紙を使って地層をならし、透明ケースの内側について粉を削ぎ落としながら地層をつくる。この時、地層を押し固めないように注意する。
(3)Aパーツを地層と反対側に素早く横にスライドさせる。
(4)断層ができる様子を観察する。

正断層実験装置

付加体実験実験
(1)透明ケースに、スリットから引き出せるようにガーゼを貼った厚紙を入れる。
(2)スリットがある側に、大陸パーツを底の部分が上になるようにセットする。
(3)厚紙の上に、小麦粉とココアの層を薄く(1〜1.5mm位)つくる。
(4)透明ケースの内側について粉を、厚紙で削ぎ落としながら地層をつくる。
(5)プレート(ガーゼを貼った厚紙)をゆっくり引っ張り、層の変化を観察する。

付加体実験装置


4.実験結果

断層の動きや地層が付加していく様子が視覚的に確認できます。地層をつくる粉の種類や固さ、加える力を変えるなど、発展的にも使えます。

※画像をクリックすると動画(Quick Time ムービー)を再生します。

断層 逆断層実験
ある程度断層が動くと、その隣に新しい断層がつくられます。断層面はシャープで、傾斜はほぼ一定しています。ココア層内では、粒子が流れるように移動し、変形していくところも見られます。
断層 正断層実験
Aパーツ側が滑り落ちて、正断層が作られます。地層の下部ほど断層面の傾斜は低角度になります。地層を押し固めていないため崩れてしまい、地滑りの断面を見ているようです。
付加体 付加体実験
まず、大陸の近くに逆断層ができ、隆起します。断層が大陸から海洋に向かって次々につくられ、圧縮されていく様子が見られます。地層が揉まれて、褶曲したり層厚が変わる様子も解ります。


逆断層
逆断層
正断層
正断層
「砂箱実験」は、透明な容器を使えばすぐにできます。教材として市販されている「前線モデル実験装置(水と着色したお湯を入れ、しきり板を外すと前線面の様子が観察できる)」を使い、実験してみました。演示用としては、このくらいの大きさは必要でしょう。

スライドケースと小麦粉・ココアの地層は、岡本義雄先生の実験を参考にさせていただきました。岡本先生のwebサイト には、いろいろな実験やコンピュータ・シュミレーション、画像が掲載されています。砂箱実験による付加体モデルについては、京都大学大学院工学研究科地質工学研究室のwebサイトを参考にさせていただきました。


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