No. 40

お薦め!“知的エンタテインメント”大作
メガフラッド 〜ロンドン水没〜
〈原題:PERFECT DISASTER/MEGA FLOOD〉





2006年米国・英国・ドイツ・フランス製作、
DVD「パーフェクト・ディザスター 完全版(3巻セット)」
(英語版・日本語吹き替え)/提供:プライムウェーブ
/販売:アルバトロス/発売日:2008年8月2日/297分
(各巻99分)/3巻セット価格 7,350円 (税込)
《各巻は1st File、2nd File、3rd Fileの3種、各巻とも
2,500円(税込)》
《ジャケット写真は1st Fileより》
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 本コラムはディザスター映画を“エデュケーショナル・エンタテインメント”(防災教育的な娯楽映画)として位置づけ評価してきたが、そのものずばり、“これぞ知的エンタテインメント!”とする2006年米国・英国・ドイツ・フランス4カ国合作のTV映画シリーズ『パーフェクト・ディザスター』が、最近DVD発売になった。

  米国ディカバリー・チャンネルでの放映のほか、世界170カ国以上で放映されたシリーズ・全3巻6話(CASE)のDVD化で、6話の内訳は、「スーパートルネード:ダラス崩壊」、「ファイアーストーム:シドニー炎上」、「ソーラーストーム:ニューヨーク機能停止」、「アイスストーム:モントリオール凍結」、「メガフラッド:ロンドン水没」、「スーパータイフーン:香港壊滅」と、それぞれの大都市で起こり得る大災害をモチーフにしている。

  ディザスター映画といっても知的に“災害を科学する”いわゆる“ドキュドラマ”(ドキュメンタリーとフィクションの融合)で、ドキュ部分は実映像や災害現象を解析する最先端CG、実在の第一線研究者たちのコメントで構成、これに危機管理ドラマを織り込んでのストーリー展開だ。

  たとえば5話(CASE 5)の「ロンドン水没」では、ロンドンの水防システムが、想定を超える自然の脅威にあえなく無力化する様を描き出す。人間の情報処理能力(想定)をはるかに超えて現れる未知の自然現象こそ災害の実相であり、500年に1回、あるいは1000年に1回の大災害でも、起こるときは当然のごとく起こり、“そのとき”は明日であっても不思議はないことも自然の摂理なのだ。
  いっぽう、最新のコンピュータ解析技術を駆使した気象情報といえども、過去の気象データに拠って立つ未来予測である以上、前例を欠く現象に遭遇しては誤差が誤差を生み、天気予報でさえ的中率はなかなか上がらない。かくして予報ははずれ、新たな現象は想定外へと棚上げされ、嵐はますます勢いを増し、海と陸の境は消え、海は堤防を超え、過去のあらゆる災害情報、防災対策は一瞬にして海面下に呑み込まれて行く……

  「ロンドン水没」では、北大西洋で発達した巨大な低気圧(嵐)が、掃除機で海面を吸い上げるように海面を50cm上昇させ(吸い上げ効果)、数百km四方で数十cm盛り上がった海面は、そのまま高潮となって北海を南へ進みドーバー海峡にぶつかる。その手前に、まるで海の逆流を誘い導くかのようにテムズ川河口が位置し、その奥に740万ロンドン市民の生活がある。
  この河口に、1980年代に設置された高さ7mまでの高潮を防ぐ大規模な水門施設、テムズ・バリアがある。ここ1カ所で低地に広がるロンドン市街の約80%を高潮洪水から守るとされ、文字どおりロンドン市の“防波堤”だ。しかしドラマは、ディザスター映画ならではの想定外プロットを駆使して最悪のシナリオを展開する。高潮はテムズ・バリアをやすやすと乗り越え、ロンドン市を水没させるのだ。

  『パーフェクト・ディザスター』シリーズの想定外プロットから学ぶべきことは多そうだ。わが国でも地球規模の気候変動を背景に、中央防災会議専門調査会が大規模水害対策を検討中であり、「ロンドン水没」は決して“対岸の洪水”ではない。
  防災対策は、災害要因となる想定外現象を想定内に取り込んで防災対策を講じる終わりなき挑戦だと言える。その際、想定外現象をいかにして想定するか……その自家撞着を解くカギは想像力にある。
  そこで、私たちの想像力の凝りをほぐし、発想の転換を促すエンタテインメントとしてディザスター映画があり、本コラム『ディザスター&イマジネーション』がある。今後とも本コラムへのご支援をよろしく。