No. 36

災害は進化する――ナノテクの陰
ジャッジメント・デイ/地球崩壊

〈原題:PATH OF DESTRUCTION〉



2005年米国製作/
DVD「ジャッジメント・デイ/地球崩壊」
/販売元:アルバトロス/価格5,040円
(アルバトロス扱い価格、税共)

  テレビ朝日の人気番組『爆笑問題の近未来予測テレビ/ジキルとハイド』は、最先端科学技術が導こうとする近未来の世界を予測し、科学技術が併せ持つ光と陰を、ジキルとハイドという両キャラクターを借りて見せようというもの。
  本コラムの趣旨とも呼応して、なかなか興味深い番組だ。

  科学技術の光の側面はともかく、陰の側面は一筋縄ではいかない。科学技術には兵器開発と歩みを共にしてきた“裏の顔”があり、また、環境、バイオ、医療、情報通信技術など人間の幸福のための研究も一歩誤れば、倫理・価値観をひっくり返すハイドを演じかねない。

  さて、ナノ・テクノロジー(略称ナノテク)は、物質をナノメートル(nm、1nm=10のマイナス9乗m=1mの10億分の1)の原子レベル領域でコントロールしようという技術で、いま、世界でもっとも“トレンディ”な研究分野のひとつ。

  人間の可能性の新領域を拓くナノテクの効用はいろいろあろうが、これまた危険性も背中合わせだ。極小の物質は金属でも生体に取り込まれ、それが触媒となって未知の毒性を生む可能性などが指摘される。
  生物兵器に似て、さらに応用範囲の広いナノ兵器の開発競争もすでに始まっているとも言われる。

  ここで本題。今回の映画は2005年米国製作の「ジャッジメント・デイ/地球崩壊」だが、このモチーフが、無限に増殖し接触した物質を食い尽くすナノ粒子だ。人間がつくり出した自己複製を繰り返す破壊的ナノ粒子は、暴発して巨大な雲となって人間、都市を襲う……

  「ナノテク」でこの映画に食指が動いたわけだが、はっきり言ってB−マイナス級、VFX(映像特殊効果)もいまひとつ。ナノテクの着眼点はいいものの、その実科学的な解説・情報はほとんどなく、惜しい! ただ、テンポはよくてさっと見流せるのが取り柄か。

  ちょうど30年前に、やはり米国SF映画で「デモン・シード」(1977年製作)というのがあった。人工知能がナノテクでつくった精子をつくりだし、人間の女性を使って子どもをつくろうというショッキングなストーリーだった。

  科学者は、SF作家としての想像力を持ち合わせたうえで、ジキルとハイドを演じ分けているように見える。