No. 35

9.11と1.17の類似性と危機管理考
ユナイテッド 93

UNITED 93



2006年米国製作映画/DVD「ユナイテッド93」/
販売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン/
価格3,800円(税共)

 2001年9月11日に起こった同時多発テロでハイジャックされた4機のうち、唯一目標に達することなく墜落したユナイテッド航空93便(乗員7人、乗客は犯人4人を含めて37人。全員死亡)を主題に、機内の様子と連邦航空管制センターや航空会社、米国空軍などの緊急対応の様子を事件の進行に沿って描いた06年製作の米国映画である。

 9・11調査委員会の資料をもとに、独自の調査取材や遺族の証言(一部乗客が機内携帯電話で家族と連絡)をまとめ、航空管制官など関係者の協力を得て、可能な限りリアリティを追求した作品だ。

  監督・脚本は大ヒット作『ボーン・スプレマシー』のポール・グリーングラス。手持ちカメラで早いテンポで場面転換を図る撮影手法は、揺れる機内の恐怖と共振して私たちの不安を増幅させる。
 この映画がどれだけ真実に迫ったかはさほど問題ではない。この映画が表現しようとしたのは、あくまで結果としての事実だから。

 首都ワシントンDC方面へ向かう途中、ペンシルベニア州の草地に墜落したUA93便はもとより、ニューヨーク・ワールドトレードセンターに突っ込んだ2機、国防総省(ペンタゴン)に激突した1機も、全員死亡という結果が厳然として残った。これら4機には総計265人(乗員33人、乗客213人、犯人19人)が搭乗していた(同時多発テロでの死者総数は約3000人)。

  「ユナイテッド93」は、孤立無援、逃げ道のない乗客がテロリストに対して最期の抵抗を試みるシーンで終わる(墜落する)。

 「ユナイテッド93」を観ていて、9・11と1・17(阪神・淡路大震災)は似てはいないか、と思った。いずれも“社会の脆弱性が暴力的に暴かれ、無差別的に市民の犠牲者が出た”印象からだが、直下地震の爆弾を抱え災害列島から逃れ得ないわが日本国民が、「ユナイテッド93」の乗客と重なる。

  機内に“活断層”という名のテロリストが乗り込んで、いまにも行動を起こそうとしているのだ……

 危機管理学では「危機には必ず兆候がある。幅広い組織を横断する部署で危機要因を監視し、選択と集中で対応する」のが基本だそうだ。

 さぁ為政者よ、“防災庁”をつくるのか、それとも逃げ道のない国民の最期の抵抗を、手をこまねいて眺めるか。