No. 34

医療従事者の使命と自己犠牲の相克
SARS WAR〈サーズウォー〉

SARS WAR



2003年香港製作/ DVD「SARS WAR サーズ・ウォー」
/販売元:アートポート 価格4,441円

 2003年の香港。ある病院に救急患者が運び込まれた。検査の結果、患者の体内から新種のウイルスが発見され、同室の入院患者が次々と同じ症状を引き起こし、医者や看護婦までも倒れていく。未知のウイルスの恐るべき感染力になすすべもなく……

  香港で実際に起きたSARS(重症急性呼吸器症候群)の院内感染をドラマ化しながら、世界を震撼させたSARSの脅威を描く03年香港製作の感染症パニック映画。

 SARSは02年11月に中華人民共和国広東省に発生し(同年7月に発生が報告されたが中国政府が報道規制、国際的な対応が遅れた)、03年7月にWHO(世界保健機関)が制圧宣言を出すまでの間に、世界で8069人が感染し、775人が死亡した。

  香港では1755人が感染し、299人が死亡。日本では幸い症例の確認例はなかったが、海外旅行が大幅に落ち込み旅行業界に大打撃を与えるなど、社会的影響には大きいものがあった。

 映画は、感染拡大阻止のため強制的に隔離された病院でSARSウイルスと戦う医師たちの職業的使命を、信仰(キリスト教)を背景に自己犠牲的な視点から描くが、SARSとはなにか、感染拡大の背景、社会的・国際的な影響、感染症に対する危機管理のあり方など、本質的な視点に欠ける。“戦争”とその後(検証)のはざまで話題性を狙ったB級映画だとしても、B級なりのおもしろさも不足している。

 いま、東南アジアを中心に世界的に、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)が不気味な動きを見せている。鳥インフルが人に感染し始めている。これがさらに人に感染しやすい新型インフルに突然変異するのは時間の問題とされ、人がこの新型インフルに感染すると免疫がないので重症化し、パンデミック(世界的流行)になると恐れられている。

  厚生労働省は最悪のケースで、日本では人口1億2700万人の25%・3200万人が感染、64万人が死亡(致死率2%)と想定し、05年に「行動計画」、07年に「対策ガイドライン」をつくって警戒体制に入った。

 この映画をあえて取り上げた理由は、新型インフルエンザへの危機感が高まるいま、医師・看護士たちが「職業倫理と二次災害(感染)の危険」の相克にどう対応するかを改めて考えさせてくれるからだ。
  もとよりそれは、殉教とは別次元の危機管理のテーマであり、「危機における個々人の行動規準」確立の課題のはずだから。