No. 33

大災害がもたらす孤独と支え
TSUNAMI 津波

TSUNAMI: THE AFTERMATH



2006年米国HBO、英国BBC共同制作
DVD「TSUNAMI: THE AFTERMATH」

 2004年12月26日に発災したスマトラ島沖地震・津波(インド洋大津波)をテーマとした06年・米国HBOチャンネル、英国BBC制作のテレビドラマ。

  原題が〈TSUNAMI:THE AFTERMATH〉とあるように、「その後」の約1週間、防災用語で言えば「応急対応」の局面が主な舞台だ。

 この大災害の概要を改めて思い起こしてみよう。インドネシア・スマトラ島西方沖でマグニチュード9・1の大規模地震が起した大津波がインド洋沿岸のアジアの国々を襲い、アフリカ東部にまで到達、各地で甚大な被害をもたらした。

  発見された遺体数は約17万6300人、行方不明者5万人超、総数で約22万7000人が犠牲となり、被災者数は500万人を超えた。なんと、犠牲者の約3分の1が子どもだったという――
  
 彼らをどう弔えばいいのか。自然災害から被る死もまた自然死なのだとでも受け入れるのか。膨大な災害犠牲者を前に立ちつくすほかにすべはない。

 制作は06年であれから“まだ”2年、記憶に生々しい災禍の映画化(現地ロケ)に批判も少なくなかったというこの作品を取り上げることにためらいがあったが、「その後」という切り口の新味と真正面からの取り組みを評価する(NHK・BSで昨年11月に放映、現在、DVDは英米からの取り寄せ。英語版のみ)。

 大津波が、欧米人が多く訪れるアジアの観光ビーチを日中に襲ったこともあって、ビーチに居合わせた観光客のビデオカメラでとらえられた映像は数知れない(運よく助かった人たちが撮影?)。こうした映像がインターネットに乗り、当時、世界中がその惨状を目撃した。

 この映画でも大津波シーンで実写映像が使われている。だが、ドラマはそうした自然のカタストロフィーでさえ人間の悲嘆の前に矮小化するのだとでも言うように、「その後」の子どもを失った観光客の若夫婦の悲しみを深くえぐる。

  この映画が米国でエミー賞やゴールデングローブ賞の作品賞やアクター、アクトレス賞にノミネートされたのは、災害と人間の相克を鋭く描いた点が高く評価されたからだろう。それはたとえば、被災地でボランティア活動をする女性の次のような台詞に反映される――
  「(大津波は私に、)深い孤独感と生きている実感をもたらした」。

  大災害の「その後」は、生きている実感こそが生き抜く支えになるのだ。