No. 31

湖がころげ落ちる!……ダム津波
プロジェクトV

Vajont-La diga del disonore



2001年イタリア制作。DVD「プロジェクトV」
発売元:彩プロ/税共:3,990円

 水の堆積5千万立方mというとどれくらいの量だろうか。ちょっとした湖一個分くらいはあるのではないか。この巨大な水の塊が一挙に山から“ころげ落ちた!”

 今回は、ダム災害(事故)の実話を描いた01年イタリア制作映画の紹介。ヴァイオント・ダムはイタリア北部の深い渓谷に1960年秋に完成、総貯水池容量・約1億7千万立方mの当時世界一高いアーチダム(堤高262m)だった。

  完成して間もない63年10月9日、大雨が続いたあと隣接の地山(じやま=盛土、表土などの下にある自然の地盤)が地滑りを起こし貯水池になだれ込み、貯水池の水5千万立方mが越流、ダムの頂部を100mの高さで飛び越える“ダム津波”が発生して、ダム関係者と下流の住民・計2125人の犠牲者を出す大惨事となった。
 この災害の後ダムは放棄された。映画はそうした経緯を描いている。

 さて、日本で有名なダムは言わずとしれた黒部ダム(通称・黒四=くろよん、63年完成)。やはりアーチダムでその堤高は186m(総貯水池容量は約2億立方m)だから、当時いかにヴァイオント・ダム開発が大事業だったかが想像できる。

  ダムは巨額の開発費がかかり、自然環境や生活環境に大きな影響を与えることから、近年では新たなダム建設の是非・功罪について厳しい議論が展開する。いっぽう地球温暖化で今後は“地球規模の水戦争の時代”に入るとも言われ、ダム問題は新たな岐路に立つ。

 ダムの功罪論議は盛んだが、その安全性についてはどうだろう。世界的に見ると、ダム本体や地盤評価など技術上の問題で決壊事故を引き起こした例は少なくない。わが国では50年代までは豪雨による越流・決壊事故が何件かあるが、その後は大きな事故は起きていない。

 地震国・日本で、ダムの耐震性について議論を聞かないのは、まったく問題がないからだろうか。確かに、世界的にみても、地震による直接的なダム決壊事故はこれまで起こっていない。

 しかし、想定を上回る巨大地震が発生したら……地震で周囲の地山が崩れたら……自然災害は基本的には想定外で起こる。巨大地震によるダム決壊の可能性について、じっくりと専門家の話を聞いてみたいところだ。