No. 30

蝶を追うと……巨大ハリケーンが襲う
スーパーストーム
SUPERSTORM



2007年国際共同制作〈BBC(英国)/
Discovery Channel(米国)/ProSieben(ドイツ)/
NHK〉。DVD「SUPERSTORM」発売元BBC
(参考:英国amazonでの販売価格£19・99)
上写真はBBC版DVDジャケットより

 今回の作品は07年制作の「国際共同制作ドラマ」だ。共同制作にはBBC(英国)/Discovery Channel(米国)/ProSieben(ドイツ)、そしてNHKが名を連ねる。ただ、放送権を得るだけでも共同制作だそうで、NHKの関わりは放送権取得だけのようだ。

 各60分・全3回のテレビドラマで、各回に解説ドキュメンタリー(各30分)が付き、現代の科学技術を基にした近未来“ドキュドラマ”。NHKの放送は9月中に終わり、日本でのDVD発売予定はない。NHKは「ご意見を参考にDVD化を検討します」とのこと。しかし、英国ではDVD(写真)発売中で入手可能だ。英語版だが入手が可能な以上、本欄は紹介の対象とする。

 以前、本欄で日本の気象庁にあたる米国気象局=NWSが米国海洋大気庁=NOAAの部局で、NOAAは米国商務省に属すると紹介した(気象庁は国土交通省の外局)。海洋・気象関連データは経済のインフラで国防にも通じるという米国流の戦略的組織だ。

 その米国商務省の担当官が、地球温暖化を背景に巨大化するハリケーンの被害を軽減する科学技術開発で、多額の予算獲得と功名を狙う。精鋭の気象科学者グループを集め、ハリケーンの威力を人為的に殺(そ)ごうという「クラウド・シーディング」(雲の種まき=気象操作)作戦の開始だ。

 この気象操作技術には国防省も関心を寄せていて、かつてベトナム戦争時に、ベトコンの兵站ルートを断つために大雨を発生させ洪水を起こす作戦が実行された(このときは大雨にはならず失敗)。また、カリブ海で発生し北上するハリケーンに対し、太平洋側で人為的に低気圧を発生させ、その圧力でハリケーンを大西洋に押し出す作戦も同時進行する。

 物語は、気象操作のために招集された気象学者グループを中心に展開、ハリケーンは迷走してついにはニューヨークを襲う……解説編は、最先端の気象科学技術のほかに、中国での気象操作(軍事共用の開発)やチェルノブイリ原発事故当時の“不適当な気象操作”なども紹介する。

  ハリケーンの規模・経路を変え、被害を減らすバラ色の可能性と裏腹に、自然生成の連鎖を“壊し”、より大きな自然界の異変をもたらす“種まき”のこわさが示唆される。蝶の羽ばたきがハリケーンを生む可能性を含めて、“バタフライ効果”、恐るべしである。