No. 29

土砂災害は掘り下げられたか……
アースブレイク
Landslide



04年アメリカ映画・DVD「アースブレイク」/
発売元:プライムウェーブ/価格5,040円(税共)

 災害パニック映画の魅力と楽しみをおさらいしておこう。

  最近ではCG技術を用いた映像特殊効果=SFX、あるいはVFXなるものが日進月歩で、想像力の極みの天変地異を迫真のリアリズムで見せてくれる。その迫力はアニメやゲームを凌駕、映画の独壇場だ。

 これに加えてより精緻な科学的な裏づけ(定説はもとより異端学説も含めて)で武装し、なおかつ大自然の“壮大な無関心”と対峙する小さな人間の防災・危機管理の手法がしっかり表現されていれば、これはかなり高度なクオリティを持つ「防災教材」ともなる。

  さらに人間ドラマの展開が上質であれば、アカデミー賞候補作品にもなり得る。地球温暖化、気候変動が深刻化するなかでこの種の映画は、いずれ“災害パニック”というB級イメージから脱皮し、地球環境を主題に地に足のついた“ディザスター映画”に進化しそうな気配である。

 災害のモチーフについても、プロデューサーの災害研究がさらに進みつつある。その一例として今回紹介する映画は、珍しくも「土砂災害」が主題。もっとも自然災害としての土砂災害ではなく、強欲にかられた開発、地盤調査の手抜きという単純な人災の構図だ。ただ、土砂崩れ・土石流シーンの特殊効果はそれなりの迫力・恐さを伝える(もっと見たかったが、予算の都合で規模縮小か)。

  土砂災害は現実の災害であり、それこそ集落をひと呑みにすることもあるのだから、その性質・性状を砂防防災面からもっと掘り下げれば、よりリアリティは高まっただろうに、惜しい。

 冒頭で災害映画への将来性に期待を寄せたが、災害映画界も層が厚ければ厚いほど頂上(佳作)を高められるだろう。しかし、低層(B級映画)が構造的に脆いのでは、頂上の高みは及びもつかない。
  この映画のDVDジャケットの絵柄は土砂に埋もれた自由の女神……マンハッタンには山どころか丘も坂もないから、自由の女神が土砂に埋まる仕掛けについて興味津々だったが……舞台はニューヨークのはるか郊外のリゾート地で、自由の女神どころか超高層ビルもセントラルパーク(ここは“土”がある!)も、マンハッタン・シーンはワンカットも出てこない。

  こういう“強度偽装”こそが将来の災害映画の可能性に“アースブレイク”(地割れ)を生じさせ、土砂崩れを招きかねないことを恐れる……(消費者保護的“ネタバレ”!)。