No. 9

それは忘れた頃にやってくる!

日本沈没(1973)
1973 Nihon Chinbotsu



「日本沈没」。DVD 発売・販売元:東宝
 06年夏に、大作映画「日本沈没」(東宝)が公開される。言うまでもなく「日本沈没」は小松左京のベストセラー小説で、1973年に映画化され大ヒット、社会現象となったが、そのリメイク版だ。

  戦後日本は地震活動の平穏期に恵まれて経済発展を遂げたため、防災や危機管理面で脆弱な社会になったといわれる。小松氏は「日本沈没」でそうした日本へ警鐘を鳴らし、防災から危機管理、さらには“日本と日本民族のアイデンティティ”にまで主題を広げた。しかし日本沈没という着想は、そのスケールの壮大さゆえにSFエンタテインメント色を濃くし、小松氏の危機意識は、高度経済成長の頂点を極め浮上しきった日本に“座礁”した観もあった。

 ちなみに73年は、“オイルショック”で日本経済が戦後初の実質マイナス成長を記録、高度経済成長の晩年となった年。ついでに蛇足ながら、最新地球科学では日本沈没の懸念はさらさらなく、むしろ浮上“領土拡大中”だそう。
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 オリジナル版「日本沈没」と33年ぶりのリメイク版「日本沈没」では、製作者および観客の自然災害への認識がまったく異なるだろう。オリジナル版は、非日常・天変地異を介した危機管理だった。
  いっぽう06年リメイク版は、“想定内”の日常的な脅威としての巨大災害と成熟国家・日本の浮沈が主題だろう(そうあってほしい……)。

 95年の阪神・淡路大震災で私たちは、もうひとつの「日本沈没」を味わった(小松氏自身も被災者となった)。その前後もさらにいまも、私たちは次の「日本沈没」への日常的な予感におののき続けている……93年の釧路沖、能登半島沖、北海道南西沖、東海道はるか沖、94年北海道東方沖、三陸はるか沖。00年には鳥取県西部、01年芸予、03年宮城県沖、宮城県北部、十勝沖、04年新潟県中越、そして05年福岡県西方沖……

 この12年間で14の被害地震が列島を縦断した。そしてなお、想定巨大地震がラインナップして出番を待つ。東海、東南海・南海、首都直下、宮城県沖、そのほか……いずれも「日本沈没」主役級の顔ぶれで、いずれも満を持しての待機だ。

  33年ぶり、忘れた頃にやってくる映画「日本沈没」06年版は、リアルライフでの日本沈没へのイメージを喚起させてくれるだろうか。